アトミックロボキッドスペシャル 
ジャンル:シューティング
媒体:HuCARD(4M)
発売元:UPL
発売:1990年1月19日
価格:6700円
商品番号:UP01001


◆独特のメーカーによる独特の世界

外見 UPLというのは実に独特のメーカーであったようだ。もともとはアーケードやファミコンで傑作を作ったプログラマーが集まって作ったソフトハウスであったらしく、そのせいか作家性の強い、というか非常に個性的なゲームを多く発表した。PCエンジンではたった3作のみゲーム(「アトミックロボキッド」「ゴモラスピード」「麻雀覇王伝カイザークエスト」)を出しているが、いずれもかなりの個性派である。

 本作「アトミックロボキッドspecial」はUPLがアーケードで出したシューティング「アトミックロボキッド」をPCエンジンに移植したもの。メガドライブでも同名のタイトルが発売されており、同社の代表作と言っていいゲームだ。「ロボキッド」の名のとおり、小柄な子供っぽいロボット君が主役のシューティングだが、パッケージを見てもお分かりのようにゾウさんのようなお鼻がついていて、ちょっとストレートに「可愛い」とは言いにくい主役キャラである。そしてゲームの世界観自体もなかなか個性的…というよりもかなり悲壮感が漂う異色なものだ。

 時は未来、人類は最終核戦争を起こしてほとんど全滅してしまっていた(いきなりこれだ)。ほんの一握り残った人類は核シェルターに避難したが、放射能によりDNAを破壊され子孫を残せなくなっていた。ある博士がDNA再生プログラムを発動し、再生したDNAを運ばせるべく「ロボキッド」を開発するが、プログラム始動直前に博士は急死してしまう。「ロボキッド」はおのれに課せられた重大な使命も知らぬまま、戦いの旅に出る…

 というのが本作のバックストーリー。えらくダークで悲壮感満載の設定であるが、実のところこのバックストーリーと本編中に展開されるメカニック&グロテスクな、いかにもシューティング的世界観とは何ら関係が無いようにも思える。


◆物悲しさが全編に漂う異色のSTG

 ただ、このゲーム、なんとも言えぬ物悲しさが全編に漂っているのも事実だ。なんでそうなのかいろいろ考えてみたんだけど、一つにはワラワラと出てくる敵キャラが余りにも愛想が無い(笑)ことがあるかもしれない。敵なんだから愛想が無いのは当たり前だが、その攻撃の仕方にバリエーションが無く活力が感じられないのだな。ただただ無慈悲に行く手を阻止する、という感じで。
 それとバックストーリーを反映してか、ステージのデザインも全体に冷たいトーンで統一されている。必見なのは黄金色に彩られたメタリックなステージの背景描写で、その徹底的な描きこみにはただただ呆然と眺めてしまうほど。その代わり自然背景のステージなんかは気が抜けている気もするけど。こうしたメタリック調の美しい描きこみも、このゲーム独特の「物悲しさ」を大いに増長しているのも事実だ。
 作る側が異色なシューティングを狙ったのだから、まさに狙い通りであるわけだけど、正直なところ「楽しく遊べる」と言うものでは無い(笑)。ステージクリアしても味も素っ気も無く、高揚感がないんだよね。

 世界観の説明に長く取ってしまったが、本作は基本的には横スクロール。たまに上下方向に移動させられる迷路状のステージがある。そのため前後に自由に行きつ戻りつできる完全な任意スクロールとなっており、アクションゲームに近いプレイ感覚でもある。ロボキッドは方向キーそのままに向きを変えてしまい、後ろを向けば後ろに向かって撃つようになっているので、後退する操作には注意が必要だ。I・IIボタンを同時押しすれば方向を固定したまま射撃ができるので、これをよく使いこなす必要がある。
 主人公ロボキッドの特殊攻撃は4種類あり、途中でアイテムをとることで攻撃方法を入手し、これを場合に応じて任意に変更しつつ進んでいくことになる。アイテム入手といえばステージ中のところどころに恐竜クンが登場することがあり、これに話しかけると(よく敵だと思って攻撃してしまうんだよな)残機と引き換えに特殊攻撃を追加してくれたりする。4つの特殊攻撃はそれぞれ特徴があるが、いずれもかなりハデなもので盛大に敵をなぎたおせる。ただそれだけに、I・IIボタンを押しっぱなしにしたままで単調になりがちなステージもある。

 このゲームはダメージ制で、敵弾や敵機に当たるとロボキッドが「キュン!」とか声を上げてライフゲージが減っていくといき、ゼロになると「パカーン!」と盛大に破裂して(その直前に一瞬「止め」の間があるのがウマイ)一機死亡となる。この演出がまたイタいんだよなぁ(汗)。

◆巨大ボスとの壮絶な対決!

ボス戦 このゲームでは三種類のステージパターンがある。基本はオーソドックスな横スクロールステージだが、時折、一機の敵ロボットと西部劇の決闘みたいな1対1のガチンコ対決を行うステージも挿入される。ここではステージは1画面内に固定され、左右に1機ずつが位置につき、中央に次々と障害物が落ちてくるなか互いに撃ち合いをして相手を倒すのだ。この緊張感はかなりのもの。

 そして数面に一つ挿入されるのが、このゲームの最大の売りとも思える、巨大ボスとの対決ステージ。シューティングゲームと言えば巨大ボスが定番だが、このゲームのボスは本当に巨大。ボス戦ステージはTVの4画面近くを使う広大なもので、プレイヤーはそのステージをフルに飛び回ってあっちからこっちからとボスの弱点を攻撃していかねばならない。
 いずれのボスもなかなかに考えられた弱点を持っており、それが分かるまでにまず一苦労。分かってからもその通りうまく攻撃するのがまた一苦労。また先述のようにロボキッドは方向キーそのままに向きを変えてそっちを撃ってしまうので、どこか一箇所を攻撃する際はしっかりとロボキッドを固定しておくことを忘れないようにしなければならない。

 それにしてもこのゲームの巨大ボスたちの描きこみや動きの演出などは実に見事なもので、戦いつつ見ていても非常に楽しい。本作はPCエンジン中でも初期の方に属するソフトだが、この初期時期に良く見られるPCエンジンの能力を実にうまく引き出した良作STGの一つだと言っていいと、特にこのボス戦を見ていて思わされる。

 ステージ数は20数面にも及ぶのだが、筆者は現時点で21面をクリアした辺り。もう一息と思いつつ、なかなか進まない…。あの悲壮感に満ちた設定がどう終わるんだが知りたいんだけど。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.0
3.5
3.4
3.5
3.7
3.5
21.60
第259位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

山崎拓



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