PCエンジンオリジナルの縦シューティング。戦闘ヘリを操る縦シューティングと聞くと「究極タイガー」などを思い浮かべるが(実際雰囲気は似てる)、本作は近未来SF仕立ての世界観を設定していて、その面でのオリジナル度はけっこう高い。
発売元は日本テレネット+レーザーソフト。PCエンジンのCD-ROMではかなり初期段階から作品を発表しているメーカーだが、一様に評価は高くない(笑)。本作もご多分に漏れずゲームとしては高い評価を得られるとはとても思えない。
ただこのゲーム、1990年という段階でCD-ROMをいかに駆使するかという果敢な挑戦が見られるという点から評価をしてあげたいと思う。この時期のCD-ROMソフトの多くは必ずしも完成度は高くないものの、新しいメディアを手に入れてあれこれと実験を楽しんでいる製作側のいい意味での熱意が味わえるんですな。「アヴェンジャー」はアーケードからの移植モノではないオリジナルシューティングとして開発されたこともあって、CD-ROMの特性を生かしたゲームを作ろうとあれこれ頑張っている。
まず当然ながらBGMはオールCDオーディオ。まあさして名曲とも思えないけど、当時としてはかなりインパクトがあったんじゃないかな。そしてオープニング、エンディングに収録されたビジュアルシーン。世界観を説明したオープニングビジュアルはアニメばりばり(あくまで当時の基準ですよ)で見ごたえはかなりある。また、各面をクリアをすると表示される全画面CG=ご褒美グラフィックはとても美しく、これだけで一見の価値を保証できる。
なお、このソフトには妙なおまけもついている。タイトル画面でセレクトボタンを押すと「近畿日本ツーリスト」の海外旅行のCMが流れるのだ(説明書にヒント有り。日本テレネットの「コズミックファンタジー」のキャラが登場する)。どういう経緯でこんなのが入ったのか事情は知らないが、当時CD-ROMという新しいメディアに広告媒体としての期待があったということなのだろうか。しかしシューティングゲーム買った人に海外旅行の宣伝効果ってどれほどあるのだろう…(笑)。
◆上官を恨みたくなる激ムズの戦場
時に西暦2061年。第三次世界大戦ののち、世界はユーラシア同盟と環太平洋連邦の二超大国で分割され互いに激しい対立を続けていた。連邦はこの戦争に決着をつける最終兵器として巨大機動要塞VOLOS(ヴォーロス)を建造するが、その完成目前、ライヒマン准将が反乱を起こしVOLOSを奪取して同盟の手に渡してしまう。同盟はVOLOSを使って無差別に世界各地を攻撃、一気に攻勢に出始めた。連邦はVOLOSに搭載予定だった究極の最新戦闘ヘリAVENGER(アヴェンジャー=制裁者)を出動させ、これに対抗しようとする。「アヴェンジャー」のパイロットとなった君は戦場へと向かう…
長々としたオープニングビジュアルで語られるのがこんな舞台設定。なかなか出来の良いビジュアルなのでこれを見たプレイヤーはさぞ熱い血潮が騒ぐことであろう。しかし肝心のゲーム部分がこのビジュアルとかなり落差があるんだよなぁ。
このゲーム、各面の最初に武器の選択をさせられる。初めは「バルカン」と「ロケット」しかない。バルカンは威力は少ないものの連射度が高い、ロケットは破壊力はあるものの連射しにくいといった違いがある。戦場に放り出されたプレイヤーは「最新戦闘ヘリ」の余りの能力のヘボさに泣けてくるはず(笑)。ワラワラと出てくる敵に対して悲しいほどしか弾が出ず、いきおい「弾よけゲーム」になっていくのだ。パワーアップアイテムを入手すればそこそこ性能は上がって行くが、それも三段階までしかない。2面以降ではこれに加えていろいろと「支援兵器」がついて攻撃を補助してくれるが、これも2段階しかパワーアップしてくれない。こんな装備で「水上要塞を破壊せよ!」だの「敵基地を破壊せよ!」だの「ライヒマン准将を暗殺せよ!」(そんなのまであるのだ!)だの各面最初に命令してくる上官は何を考えているのだ、と思えてしまう。最新戦闘ヘリらしさが出ていたのは途中から登場する「特殊兵器」の類であろうか。音も無く一瞬で画面内の敵を消してしまう「E.C.M」だの、すぐに解けてしまう「バリア」だの、ゲームにしてもかなりまずい気がする「戦術核」だの。これらの特殊兵器も1面につき2、3回しか使用できないのでよくよくの場合でないと使用できない。
総じてこのゲーム、パワーアップが少なすぎるのが難点だ。そのぶん難易度が低いかというとそうでもないのが辛いところ。
そしてこのアヴェンジャーなる戦闘ヘリ、動作に妙な癖があって操縦にはかなりの熟練を要する。右へ左へと動かすとヘリの機首がそのまま左右に振れるのだ。そのため方向を変えるとそのまま撃ち出す弾の向きも変わるため、初めのうちは敵に弾を命中させるのも難しいぐらい。慣れてくると機首を固定して敵から離れた位置から撃つなど戦略性も出ては来るんだけど…。
システムはいわゆるダメージ制。弾に当たるごとにダメージを受け、ライフゲージが減ってゆき5回当たるとゲームオーバーだ。時折出現するパワーアップアイテムは一定時間で「回復」→「主力兵器」→「支援兵器」と変化し、これをタイミングよくとればダメージを回復できる。しかしこれがまた回収に苦労することも少なくない。
各面ラストにはボスがいる。ボスに関しては攻略法さえ分かってしまえば楽勝のものがほとんど。とにかくボス戦まで生き残ることができるか…がポイントである。
◆ひょっとしてクリア不可能!?
このゲームは2面以降は「ミッション選択」をやらされ、ストーリーが分岐していく。もっとも面の順番が変わる程度の変化なのだが。面は全部で8面あり、ラストは問題の機動要塞VOLOSに突入していく。
最終面の前に、これまでも指示を出していた上官が突然個人的に極秘任務を授けてくる。VOLOSの奪還ではなく破壊を命じてくるのだ。そもそもVOLOSは連邦の作った最終兵器であり、これを同盟から奪還したところで今度は連邦が世界を支配するだけ。それなら人類全体のために破壊をしてしまうほうが良い、ってなわけである。ことの発端が発端だけにこういうラストになるんじゃないかなという予想はありましたね。
そして最終面に突入…ゲゲゲッ、あっという間に撃沈。これまでの面で出てきた難しい敵キャラ総出演ではありませんか!最強の状態で何度かアタックしてみたが、全然先へ進めない。特殊兵器の数々も試してみたが、ワラワラ出てくる敵の前には焼け石に水である。
何度かやってみた末、僕は結局あきらめた。かなり執念深いつもりの僕だが、「こりゃーダメだ!」と投げ出すほかは無かった。もちろん僕はさしてゲームは得意ではないのだが、ここまでの面については努力すればなんとかなってきた。しかしこの最終面だけは「どうにもならん」と思うしかなかったのだ。クリアした人は全世界でどれほどいるのだろうか…?と思っちゃうほどの難度だ。それでもクリアした人はいるんだろう、たぶん。
結局、僕は裏技コマンドを使って無敵状態でこのゲームをクリアした(笑)。だってここまで来てエンディングを見ないわけには行きませんでしたから。しかしその無敵状態で最終面全体を見渡したが、改めて「こりゃまともにやっちゃ無理だ」と思うしかなかった。
VOLOS破壊後、エンディングビジュアルが始まる。これがまたオープニング同様のハイレベルなものだ。破壊されたVOLOS、そして戦闘を終えたアヴェンジャーが着陸しパイロットが降りてくる。そしてヘルメットを取ると…なんとこれが美女!!おれは今までずっと女の役を演じていたのか…!このエンディングには意表を突かれたのは確かだけど、このエンディングをまもとにやって見られる人はごく限られた人ではなかろうか…。
キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
3.837 | 3.883 | 3.558 | 3.744 | 3.906 | 3.763 | 22.695 第147位 |
★★★ |
レビュアー | 採点 |
岩崎啓真 | 6 |
ウォルフ中村 | 7 |
TOMOYO | 7 |
ミロはじめ | 7 |