そもそもPCエンジンの最初のキラーソフトが「R−TYPE」(’88)だったぐらいで、アイレムとPCエンジンの関わりは結構深い。「R−TYPE」はハドソンによる移植だったが、アイレム自身も早い段階からPCエンジンに参入して「ビジランテ」(’89)を皮切りに「Mr.HELIの大冒険」(’89)、「最後の忍道」(’90)など自社のアーケード作品を続々とPCエンジンに移植し、いずれも高い評価を受けている。本作「イメージファイト」もそうした流れの中で発売されたアーケードからの移植作中の傑作として名高い。
マニュアルにある設定によると、時は20××年、世界は相変わらず東西に分かれて争っていた(まだ冷戦時代だったんですよね、リリース当時は) 。ところがそんな折、月基地のコンピューターが暴走し、月そのものが崩壊。軌道上の衛星も破壊されるに及んで、これがエイリアンによる侵略であることが明らかとなる。人類の存亡をかけて世界は結束し、西側が開発していた特殊戦闘機で月のコンピューターを破壊することが決定される。この戦闘機に乗れるパイロットは超高度なテクニックを必要であり、それを訓練するため仮想空間(バーチャルリアリティー)内での戦闘訓練が行われることになって…とまぁそういう設定だ。
設定自体はSTGにはありがちなエイリアン侵略ものなんだけど、「仮想空間での訓練」というところがオリジナリティ。タイトルの「イメージファイト」の由来がこれだ。このゲームでは1〜5面が「練習ステージ」となっており、面クリアすると現実の訓練施設の中に戻って仮想空間内での撃墜率が表示される仕掛けとなっている。5面までの総合撃墜率が90%以上であれば見事合格で、実戦に投入されることとなる。実戦ステージは宇宙空間で3面構成となっている。
もし撃墜率が90%に届かなかった場合は…?実戦投入には失格となって、やはり仮想空間の「補習ステージ」に放り込まれるのだ。これがそれまでの練習ステージに輪をかけて地獄のようにきつく、ある意味実戦以上に恐怖のステージとなっている(笑)。
総じて難易度がムチャクチャと思えるほど高いことが売りのゲームである。「練習ステージ」と言ったって、実は相当に難しい。初プレイで一面突破するのすらまず無理だろうというレベル。いや恐らく一面中盤でアウトになってしまうのでは、と思えるほどだ。
一応難易度設定はついていて、初心者向けリクルートクラスから始まって4段階の難度コースが用意されている。しかし僕などには一番楽なはずのリクルートクラスですら極悪な難度に思える(涙)。「こんなの無理だぁ〜!」と何度投げ出しそうになったか分からないが、なんとか練習ステージを抜けて実戦ステージに突入することが出来たので、どうにもならないというレベルではなかったわけだ。それぞれの面も最初のうちは頭を抱えてしまうような設計だが、攻略法を確立してクリアしてみれば、かなり計算された難度なのだと思えてくる。
◆死んで、死んで、死にまくって…
「イメージファイト」は縦STG。アーケードでリリースされ、ファミコンにも移植されている。ファミコン版は未プレイだが、結構ファミコンでも再現できたんじゃないかな、と思えるほど意外に画面構成はシンプルだ。もちろんPCエンジン版はよりアーケード版に近い移植がなされていることになっている。もっとも縦STGの常で縦長画面を横長に変えたためのアレンジもあるし(そのため一部ボス戦がかなりきつくなっている)、完全再現とはいかなかっただろうが。
このゲーム、数あるPCエンジンのシューティングゲームの中ではかなりゆっくりとしたスクロールだし、派手なボム兵器なども存在しておらず、全体的に地味で「爽快感」というものもあまりない。しかしおっそろしいほどの中毒性がある。こうした中毒性はインベーダー以来初期のゆっくりしたSTGの方が高かったかもしれないな。
中毒になる原因はやはりその「見かけによらぬ難しさ」。一見シンプルで簡単そうに見えて、実は敵の出現や敵弾の飛び方はかなりシビアだ。おまけにバリアなどの自機防御アイテムはほとんど無いに等しく、一発当たったら即おしまいという厳しい世界だ。「R-TYPE」にも言えることだが、アイレムのSTGはとことん死んで、死んで、死にまくって「生き残る術」を体に覚え込ませるほかは無い。一見どうにもならなそうな難関ステージでもちゃんと生き残れる攻略法は存在しているので、何度も何度もやり直すうちにしだいに一歩一歩先へと進めるようになってくる。この快感が本作の魅力だろう。コツコツ苦労が好みの日本人には向いてるのかもしれないな…僕は苦手ですけどね、そういうの(笑)。
上下左右から出てきて容赦なく弾を飛ばしてくる敵、ノーマルな状態では絶対に通り抜けられない意地悪な障害物の数々、そしてそれらをなんとか突破しても待ち受けているのは極悪なまでの攻撃をしてくる各面のボス達だ。このボス達の攻撃の凶悪さというのは一面から一貫していて攻略法をみつけるまでにはこれまたかなり手間を食う。それでも大半は安全な攻略法を発見すればなんとかなるものではあるのだが、練習ステージのラスト、5面のボスには正直参った。なんとか攻略法がわかっても実現するのはなかなか困難なしろものなのだ。
しかもこの面はそこにいきつくまでがまた大変で、この面一つで大幅に撃墜率を下げてしまい、結局総合で90%を切ってしまって地獄の「補習ステージ送り」になることもしばしば(やってみた限りでは補習ステージ抜けるのなんてまず無理じゃないかと思えるのだが…)。よくまぁ当時はこんな難しいものをゲームセンターに置いていたものである。PCエンジン版は幸いにして無限コンティニューが可能なので、心置きなく死にまくることができます(笑)
◆使いこなせば…ポッドシュート!
本作のSTGとしての大きな特徴として挙げられるのが自機にオプションとしてつく「ポッド」の存在だ。自機の周囲にくっついて攻撃をサポートしてくれるという点では他のSTGと同じなのだが、本作の「ポッド」はなかなかにクセがある。
まず赤ポッドと青ポッドの区別がある。これはアイテムが出るカプセルを撃つとポッドが表示されるのだが一定の時間で赤、青、赤、青と変化し、どこでとったかで決まるものだ。赤ポッドは自機の動きと逆方向に動いて全方位を撃てるもので、青ポッドは前方向固定となっている。赤ポッドの方が何かと便利に見えるのだが扱いにくいところもあるので場面場面で考えて選ぶ必要がある。ポッドは三つまでつけられるがそれからさらにポッドをつけた場合、三つともその時の色のポッドになるので要注意。僕自身はほとんど赤ポッドばかり選んでましたけどね。
このポッドは防御にも使用できる。またこのSTG最大の名物ともいえる「ポッドシュート」なる特別攻撃に使用することもできる。これはIボタンとIIボタンを同時に押してポッドを前方向へ発射するもので、うまく扱うと自動的に敵に向かって攻撃し、一挙に敵を殲滅してくれることもある。ただしIボタンIIボタンを同時に押すうえ一時的にポッドが周囲からいなくなってしまうので危険との隣りあわせでもある。
ポッドだけでなく特殊攻撃アイテムも多様に存在する。これも特定の位置のアイテムカプセルを壊すと出現するもので、自機の前部に装備して使用することになる。レーザーとかミサイルとかかなり強力なものも混じっているし、一回のみではあるが敵弾を防ぐ盾にも使える。ステージの中にはこうした特殊攻撃アイテムを持ってないとまず突破不能の箇所もあり、よく戦略を練って装備アイテムを選ぶ必要もある。装備を別のに変えたいときは装着している装備をわざと敵弾や障害物にぶつけて破壊するという方法も取れる。
他にこのシューティングの特徴と言えば自機のスピード変更がいつでも任意に出来るという点だろう。Iボタンを押すごとにギアチェンジするように四段階のスピードに変化するようになっている。3段階以上はかなり早くなってしまい障害物の多いところなどでは危険だからスピードを下げる、といったこともできる。このスピード変更時、バックファイアを噴射して敵に攻撃をかけることもできたりして、こんなところにも戦略の幅が隠されていることに感心させられる。
現時点で僕が到達したのは実戦ステージの最初、6面まで、しかもその一番最初の方でつまっている有様(^^;)。「R−TYPE]もそうだったが、とにかくストイックなまでに難しいシューティングである。根気のある方、あるいは根気を鍛えようという方向けですな。
(追記)本作は2007年8月7日から任天堂「Wii」向けの「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
3.8 | 3.6 | 3.5 | 3.9 | 4.0 | 3.6 | 22.297 第197位 |
★★★★ |
レビュアー | 採点 |
岩崎啓真 | 9 |
ウォルフ中村 | 8 |
小野泉 | 8 |
山崎拓 | 7 |
レビュアー | 総合評価 |
東府屋ファミ坊 | 7 |
水野店長 | 7 |
森下万里子 | 8 |
TACO・X | 8 |