キアイダン00(ダブルオー) 
ジャンル:シューティング
媒体:SUPERCD-ROM
発売元:日本テレネット(RIOT)
発売:1992年10月23日
価格:6980円
商品番号:TJCD2031


商品外見◆主題歌!予告編?までついたアニメチックSTG

 「キアイダン」と聞くと、なんだかどっかのレスリング選手の父親のプロレスラーの決め台詞を思い出してしまうが、もちろんこのゲームはそれが流行するよりもずっと昔の話(笑)。どうしてこんなネーミングになったのか、名付け親に聞いてみたいところだが、カッコよさはともかく一度聞くとなかなか忘れにくい名前なのは確か。「00(ダブルオー)」というのもなんでついてるのかよくわかんないんだよな。

 CD−ROMを起動すると、アニメ番組のそれを思わせる「予告編」のビジュアルシーンが流れる。どこか永井豪っぽさを感じる、1992年の段階でも「懐かしい」と感じさせてしまうタッチの絵で、巨大ロボットの戦いやら登場キャラたちのやりとりやらが断片的に映され、「スリル」「サスペンス」「笑い」といった往年の東映映画の予告編みたいなデカ文字が躍る。「よいこのみなさんに贈る熱血長編シューティング!」というナレーションまである(笑)。
 予告編が終わってゲームを開始してみるとお約束の出動指令ビジュアルが出て、いざ出撃と身構えていると…突然「聞こえるか〜キアイダン〜♪」としんみりとした歌声が流れだす。なんと「キアイダン00の唄」なんてものが用意されているのだ!シューティングゲームのくせに主題歌つきなのである!いかにもアニメ原作がありそうな体裁を装ったつくりになっているが、もちろん本作はまったくのオリジナル作品であり、この予告編と主題歌にはあっけにとられるというか、ニヤニヤしちゃうというか、はたまた引いてしまうというか…。ゲーム本体ではなく世界観やデコレーション部分に妙に凝ったゲームなのだ。

主題歌デモ 西暦20XX。マッドサイエンティストのドクター・ギガガは「機甲獣軍団」を生み出し、「十二機甲将軍」たちにそれを率いさせて世界征服へと乗り出した。しかし天才科学者・佐倉博士は「機甲獣」に対抗できるスーパーロボット「キアイダン00」を開発。博士の息子の佐倉猛はパイロットとして「キアイダン00」に乗りこみ、十二機甲将軍たちに戦いを挑むのだった…
 という設定がオープニングデモで語られている。もう明らかだろう。どう見てもこりゃ「マジンガ―Z」そのものである。なんせ必殺技にあからさまに「ロケットパンチ」そっくりなのもあるんだから。もちろんこれを単純に「パクリ」と言ってはいけない。作り手は明らかに「マジンガ―Z」をはじめとする70年代スーパーロボットアニ(「ガンダム」以前ってことですな)にオマージュを捧げ、そういうノリのシューティングを狙って作ってみたのだ。ビジュアルシーンや音声が使えるSCDならではの企画といっていいだろう。
 各ステージが「第○話」とタイトル付き、そのオープニングでは敵ボスのシルエットにドクター・ギガガの指令セリフが流れる。各ステージのボスを倒してクリアすると「キアイダン」によるアイキャッチが入るなど、ロボットアニメや特撮ヒーロー番組を意識した演出は数多い。
 
 似たようなコンセプトのゲームとして有名なのは1999年にプレイステーションで出た「70年代風ロボットアニメ ゲッP-X」があるが、それより実に7年も先駆けていた「早すぎた企画」だったといえる。なお両者の間に、PC-FXというマイナー機で発売されたためにほとんど知られていないが「超神兵器ゼロイガー」という、やはり70年代ロボットアニメ風のシューティングゲームが存在する。僕が「ゼロイガー」をこれより先にさんざんプレイしていたので、「キアイダン00」を初めてプレイした時、「ああ、似たようなものが先にあったんだ!」と驚いたものだ。いずれも元ネタが「マジンガ―Z」だからだろうが、敵メカが「獣」と表現される点、オペレーターとしてサポートしてくれる美少女、ライバルキャラの敵が途中でたびたび乱入し何度も戦わされるところなど、両者は非常によく似ている(ただし「ゼロイガー」は縦STG)。「ゼロイガー」のスタッフももしかすると「キアイダン」を意識していたのかもしれない。
 なお、本作は発売元は「日本テレネット」の「RIOT」ブランドだが、開発元は「アルファシステム」(パッケージ裏に明記がある)。PCエンジンの多くの傑作を手がけたソフトハウスで、ひところやりこんだ「ゴジラ爆闘烈伝」(’94)の開発元でもあることに、僕はプレイしていてなんとなく納得してしまったのだった。作りこみ方の雰囲気が似てる気がするんだよね。


◆キャラがデカい横STG

 主題歌が終わるといよいよシューティング画面。「自機」である「キアイダン00」は戦闘機ではなくロボットであるため、普通のシューティングに比べると少々デカくて不格好という気もする。しかしこれより小さいデザインにしたらまず巨大ロボットには見えなかったろう。
 主人公メカがデカめであるため、ザコ敵たちも総じて大きめに作られている。またザコという割に一撃では破壊できない「硬い」敵が多く、うっかりすると画面内が敵だらけになり(数はそう多くないのだが)、もともと敵も味方も大きめのサイズになってるだけに画面内がえらく狭く感じられてしまうことにもなる。それでいてザコ敵たちの攻撃パターンやステージのギミック類はそれほど多彩というわけでもなく、全体的に大味かつ地味な印象を受けてしまうシューティングだ。そこにどうしてもアニメ番組チックに激しく作りこんだデコレーション部分との大ギャップを感じてしまうのだが…
 起動時に選べるオプション画面で難易度調整ができ、0〜3までの4段階が用意されている。何もしないでプレイすると一番易しい難度0。難度を上げていくと敵がまき散らす細かい弾丸の数が増える仕掛けで、最高の難度3にしたりするとほとんど画面中弾だらけ状態になってしまい、後年の「弾幕系」を思わせる光景になる。ウィキペディアなどに出ている話ではこのゲームのプログラマに有名な凄腕シューティングプレイヤーがいたためかなり高い難度に設計されているとのこと。難度0でも結構難しいのはそういうことか。

 自機「キアイダン00」には攻撃方法が5種類用意されていて、Iボタンで切り替えができる。多数の弾を撃ち出す「ナックル・バルカン」、三方向に幅広く撃てる「バーニング・ウェイブ」、鉄球を振りまわす「キアイ・トマホーク」、前方にバリア・後方にバックファイアを出す「エナジー・エレメンタル」、三方向レーザーショットの「グラビティー・スマッシュ」の5種類が用意されているが、たいていの敵は「ナックル・バルカン」一本で十分。一部上下方向や後ろから出現する敵に対しては鉄球やバックファイアで対応しないといけないものもある。
 ユニークなのはこれら5つの攻撃法それぞれにずばり「キアイダン」と名付けられた必殺技があること。攻撃ボタンであるIIボタンはふだんは押しっぱなしにして使うのだが、押さずに放置しておくとエネルギーゲージがたまってきて、満タンになったときにIIボタンを押すと強力なキアイダン攻撃が発動される。基本攻撃である「ナックル・バルカン」だとロケットパンチが飛んで敵を複数同時に片付けられるし、「グラビティー・スマッシュ」なら巨大な稲妻が落ちて敵を一掃するといった攻撃がかけられるのだ。いわゆる「ため撃ち」で、ゲージが満タンになるまで撃てないがゲージは割と速く満タンになるのでタイミングを覚えると使えるものは結構使える(あんまし使えないものもあるんだけど)

 このゲームはライフゲージ制を採用していて、敵機や敵弾にぶつかると猛が肉声で「うわぁ〜〜!!」と声を上げ(このせいでプレイヤーもかなり精神的ダメージあり)、一つずつ「シールド」のゲージが下がってゆく。ゲージがゼロになってもまだ終わりではなく、オペ―レーターをつとめる「ありさ」から「防御シールドが消滅」という警告が告げられ、さらにダメージを受けると本当にゲームオーバーになってしまう。ライフゲージの最高値はステージごとに決まっていて序盤では3〜4程度しかなく、結構厳しい。シールドゲージを回復するアイテムは各ステージで一カ所(一部で二か所)しか出現せず、しかもそのステージの初期段階以上に増強されることはないので、これまたかなりキビしい。
 コンティニューは5度までできるが各ステージの最初からやりなおし。コンティニュー選択画面でコンティニューを選ぶと、ガックリしていた主人公の猛がカッと目を見開き、「負けて、たまるか〜〜〜!」と絶叫してゲーム再開となる(笑)。完全にゲームオーバーになると機甲獣たちの勝ち誇った姿をバックに「ちっくしょ〜〜〜お!」という猛の絶叫を聞かされることになる。


◆随所にあるアニメチック演出

 このゲームは全7ステージ(7話)構成で、各ステージの中盤と終盤にボス(十二機甲将軍ら)が配置されている。各ステージの長さは横スクロールシューティングとしては短い部類に入ると思う。自分がステージ内のどのあたりに位置しているかは画面右下に常時表示されていて、あとどのくらいでボス戦になるのか予測がつくようになっている。
 さすがにボスの攻撃方法はかなり多彩で結構強い。ただ相手の攻撃パターンを見切ってかわしかたを覚えてしまえばそれほど苦労はしないし、ボスごとに強弱の差も激しく、後半に入っても攻略法さえわかってしまえば必殺技キアイダン連発で楽勝できる者もいる。
ボス戦 その「必殺技キアイダン」についてだが、面白いことにこのゲームのボス戦では「キアイダン」でないと相手にとどめを刺すことができない。敵ボスのライフゲージをジリジリ下げていって最後のワンポイントという時になるとオペ―レーターの「ありさ」から「今よ!キアイダンでとどめを刺して!」と声がかかり、それからタイミングをはかってキアイダンを撃ちこめばボスは断末魔の叫びを残しつつ粉砕される。要するに「最後は必殺技で決めないといけない」というロボットアニメならではの「儀式」なのだけど、そういうこだわり方がこのゲームの「らしさ」だ。
 
 アニメ番組チックな演出はゲーム中にもある。その最たるものがオペレーターをつとめるヒロイン「ありさ」から入る通信だ。各ステージの開始時に攻撃目標を指示し、そのあと肉声で「がんばって!」と呼びかけてくれる。ゲーム中はボスの出現やシールド消滅を警告してくれ、各ステージのラスボスを倒してクリアすると「お疲れ様」とねぎらいの言葉もかけてくれる。
 敵ボス達の大半は肉声はないもののボス戦の前にぐだぐだと「口上」を述べる演出もある。面白いと言えば面白いのだけど、さっさと戦闘に入りたい気分の時にも飛ばせず、流れを止められるためかえってイライラさせられることも否めない。また主人公のライバルキャラであるジョウ・ボグダーンのみは肉声つきで、途中ステージに乱入してくることがあるのだが、これもそのおしゃべりの間待たされてしまうのでかえっていらつく。大仰に出てくる割には大した強さでないのも事実で…

 7つあるステージは、最初は都市、それから海、空、地下要塞、そして最後には宇宙にまで飛び出していくことになるのだが、背景こそ確かにそうなっているものの実質どのステージもほとんど変わりがなく、敵出現ポイントの違いだけという気もしてくる。地下要塞ステージなんかは「R−TYPE」っぽくて工夫も感じられたけれど、全体としてみると大味な設計のSTGにしか見えない。難度こそ高めだけれど「攻略」意欲をそそらないような…

 ロボットアニメっぽいシューティングという、企画自体は面白いし今にしてみればかなり先駆的な作品と思うのだけど、肝心のゲーム部分が大味な上に、デコレーションで主題歌や予告編までつけたアニメ的演出の部分もいま一つパンチ不足で、あまり印象に残らないゲームとなってしまった観がある。後年の「ゼロイガー」を知ってる立場からすると、面間ビジュアルを増やしてストーリー部分をもっと練りこんだ方がよかったのではないかと思う。



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.909
3.727
3.363
3.636
3.545
3.818
22.000
第217位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

東千里

びいず羽岡


★「ファミコン通信」クロスレビュー
レビュアー
総合評価
浜村通信

渡辺美紀

ジョルジョ中治

TACO・X




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