エルディス
ジャンル:シューティング
媒体:CD-ROM
発売元:メサイヤ(NCS)
発売:1991年4月5日
価格:6500円
商品番号:NSCD 0005
◆前代未聞!?しゃべりまくるSTG!
「エルディス」はPCエンジン界において決してメジャーなタイトルではないが、一度でもプレイしたことがある人にはかなり強烈に記憶されてしまったゲームだ。
とくに傑作だったというわけではない。またひどく駄作だったというわけでもない。まぁ某中古ゲーム誌の名物コーナー「バカゲー専科」で取り上げられてしまったことはあるが…しかし「バカゲー」扱いされるゲームにありがちな作り手のやる気のなさとか意図せざる勘違いといった要素は少なく(皆無とは言わないが)、そこそこまっとうに作られたシューティングゲームではある。
本作「エルディス」が「ちょっとした伝説」となってしまっている最大の原因は、このゲーム、シューティングのくせにゲーム中の随所で有名声優を使った「おしゃべり演出」がなされている点にある。それもかなりマニアックな、アニメファン大喜びのパロディ演出が盛り込まれていたのだ。
ゲームを起動し、難易度を選択すると「武器の説明をきく/きかない」の選択になる。初プレイ時には面倒くさがらずにぜひ「きく」を選ぼう。すると、「説明しよう!」とどこかで聞いたようなナレーションが(笑)…しかも正真正銘、故・富山敬さんご本人がこの声をあてているのである!
富山さんはゲーム全体のナレーションを担当しているほか、一部中ボスキャラも演じている。何と言っても強烈なのは1面で最初にお目にかかる某宇宙戦艦の形をしたボスが「エネルギー充填!約20%!」(120%ではないところがミソ)と古代君そのまんまの声で叫び、波動砲みたいなもんを撃ってくるところだ。
富山さんだけではない。本作の各ステージのボスキャラを担当しているのは千葉繁さん。これがまたあの強烈な怪演ぶりをいかんなく発揮し、実に個性豊かなボスたちを演じ分けている。これもそれぞれ元ネタがあるんだろうけど「あ~面倒くさい」と言いながら攻撃をかけてくるやつ、「エンジンを付け忘れた~!」と勝手に落ちていくやつなど、実にバラエティ豊かでパロディ満載。
ほかに主人公となる「ターくん」役は田中真弓さん。その「ターくん」の友達で怪物たちにさらわれてしまう「ユーちゃん」役に富永み~なさん(ゲーム中、ボスの弱点や攻略法、あるいは単なる応援をしてくれたりする)。最終ボス「ギーガ・ナビッチ」役に三田ゆう子さん、という布陣で、この時期でのCD-ROMゲームとしては明らかに豪華キャストだ。作り手もそれは強く意識したようで、マニュアル最終ページにわざわざ出演作リストまでつけて声優さんたちを紹介している。もちろんCD-ROMゲームに人気声優を動員したのはこれが最初ではないが、本作が出た1991年段階だと「声優ブーム」が台頭してきて、アニメ以外の声優の活用の場としてCD-ROMゲームが注目されたころではなかったか。それ以後PCエンジン界は出演声優を前面に押し出した作品が乱発されるようになるのだが、本作などはその「はしり」ではなかったか、とも思える。
なお、富山さんがゲームに出演しているのはかなり珍しく(所属プロダクションの問題があったかな)、調べたところアニメ原作ではないオリジナルゲームへの出演は本作と、PC-FXの第1弾ソフト「チームイノセント」(’94)ぐらいしかないみたい。とくに後者は富山さんには珍しく悪役(まぁ終わってみるとそうでもないのだが)を演じており、貴重な一作。脱線ではあるが参考までに。
◆幼児性の裏腹に…
富山敬さんのカッコよくも優しいナレーションで語られるオープニングデモ。幼なじみの「ターくん」と「ユーちゃん」は大好きな「落書き」の新たな穴場を発見、塀にチョークで落書きにいそしんでいた。すると突然、二人の書いていた落書きが実体化して飛び出し、ユーちゃんともども異次元の穴の中へと吸い込まれてゆく。「ユーちゃん、いま助けに行くよ!」と叫ぶターくんは、やはり落書きが実体化した戦闘機(?)「すぅぱぁたぁ坊」に乗り込み、異次元空間へと飛び込んで行った…とまぁこんな感じでゲームの幕が開ける。
…え~と、対象年齢はいったいいくつなんでしょう?とツッコミたくなる幼児性たっぷりのオープニングだ。当時のCD-ROM2ユーザーの平均年齢は絶対高かったはずなのだが…それでいて富山敬をはじめとする懐かしアニメのパロディ満載なので、やっぱり高年齢層を意識してるはずなのだ。
ゲーム画面も全体的に可愛らしくコミカルな、幼児的とも思えるデザインで統一されている。まぁ「落書きの実体化」という設定上のこともあるとは思うが…
ただし、見た目とは裏腹にシューティング部分はステージ1からかなりの高難度。次から次へとザコ敵がワラワラと出てくるし、油断してると激突する障害物も多い。そして結構手強い中ボスが何度も出てくる上、各ステージのラスボスはみんな2段階、3段階の変形パターンで待ちかまえている。1面から難、2面で困難、3面で激ムズ、4面ではザコ相手で投げ出しかねない…というぐらいの難しさ。ボスに関してはどこからかユーちゃんの声がして
いちおう難易度設定はあり、タイトル画面で「EASY」「NORMAL」「HARD」の3段階から選ぶことは出来る。しかしやってみた限り「EASY」と「NORMAL」の違いって何?って感じだった。「EASY」は全7面の途中の4面で終わってしまうことだけが違いなんじゃないかとも。
武器は「アームスA」「アームスB」「アームスC」の3パターン用意されていて、それぞれパワーアップした場合の攻撃方法が異なる。ステージが進むと後方からの攻撃も多くなってくるので後ろに攻撃が出来る「B」「C」を選択するのがいいんじゃないかと思う。
ステージの随所でパワーアップユニットが飛んできて、これを撃つとさまざまなオプションやアイテムが出る。パワーアップアイテムには「ばりあ」「ぼむ」「すぴぃど」「ぱわぁ」の4つがあり(撃つと種類が変わっていく)、とくに1度のダメージを無効に出来る「ばりあ」はほとんど無限にストックできるので溜めておきたい。「ぱわぁ」を集めると7段階で攻撃が強化されてゆくので、これもステージ攻略上必須だ。
オプションは攻撃を補助する「まるちえんじぃ」、なぜかハイヒールやカナヅチを下方にばらまく「びぃとるたぁ坊」、かなりクセのある貫通レーザー攻撃が行える「はいぱぁたぁ坊」の三種類。これも取る前に撃つと種類が変化する仕掛けで、忙しいステージ攻略中はなかなか任意のものを選べない。組み合わせ次第ではかなり強力になり、より先へ進めるのだが。
最初は残機3でスタートし、点数に応じて次第に残機は増えていく。しかし一度やられるとすぐその場で復帰するものの武器パワーはダウンしており、復活はかなり難しい。残機が全滅しても無限コンティニューが可能なのだが、そのステージの最初から、しかも攻撃力初期段階からやり直しとなるため、「一度やられたら即ゲームオーバー」と思ったほうがいい。最初から着実にパワーアップを進めて一度もやられずに進まないと3ステージ以降はまず突破不可能ではないかと。
こうしたあまりの難しさもこのゲームの「伝説化」の原因だろう。「裏技で最強無敵状態にしなければクリア不可能」という指摘も多い。ただ難度を別にして(別にしていいのか?)ゲームそのものの出来は悪くはなく、CDならではの肉声や迫力の爆発音を使ったステージ中の演出の数々は目を見張らされるものがある。ここで腕を磨いたのか、その後メサイヤは「超時空要塞マクロス2036」(’93)、そして「超兄貴」(’93)といったCD-ROM横スクロールの良作・怪作(笑)を生み出していくことになる。
…ところでゲームタイトルになっている「L-DIS(エルディス)」って結局なんだったんだ?ラストまで行けばわかるのか?
(追記)本作は2009年2月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
4.095
| 4.093
| 3.383
| 3.465
| 3.506
| 3.753
| 21.886
第234位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 8
|
ウォルフ中村
| 6
|
TOMOYO
| 7
|
ミロはじめ
| 8
|
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
東府屋ファミ坊
| 6
|
水野店長
| 7
|
森下万里子
| 7
|
TACOX
| 6
|
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