オーバーライド
ジャンル:シューティング
媒体:HuCARD(2M)
発売元:データイースト
発売:1991年1月8日
価格:6500円
商品番号:DE90006
◆SFテイスト全開のオリジナル縦STG
本作「オーバーライド」は、数多あるPCエンジンシューティングソフト群の中ではかなり目立たない存在。その最大の理由はこれがアーケードからの移植ではなく、あくまでPCエンジンオリジナルで製作されたことにある。しかも発売元が、地味な良作を出してはいるもののタイトル数は決して多くは無い「データイースト(DECO)」だ。これでは目立たない存在になってしまっても仕方がないかもしれない。
ここで下のほうにある各種評価点データを見てもらいたい。読者投票による「PCエンジンFAN」誌の「ゲーム通信簿」でも合計19点台と「いまひとつ」な成績だ(ひとつの基準として「ゲーム通信簿」は合計20点を超えないと低評価扱いである)。特に「オリジナリティ」が低くて足を引っ張ってる観がある。しかしその下の「(勝)PCエンジン」および「ファミコン通信」のレビュアー達の採点を見ると、10点満点でおおむね7か8、中には9をつける人もいるというなかなかの好成績なのだ。このデータを見る限りどちらかというと「通好み」なゲームという位置づけができそうだ。
実際僕もこんなサイトやらなきゃ手も出さなかったと思うんだけど(笑)、ン百円で売られていた中古品で初プレイしてみて「おおっ」と妙に感心し、一時期ずいぶんやりこんでしまった。手間はそこそこかかったが、何とかクリアまで到達した数少ないシューティングゲームということで少なくとも僕個人の中ではかなり印象に残った(笑)。僕もそうゲームは上手いほうではないので、そのぐらいのレベルの人にはちょうどいい出来…なのではあるまいか。やりこむとなかなか手の込んだ出来のゲームなので、僕なら熱中度も高い点をつけたいところ。
説明書に載っているプレストーリーを短く紹介すると…
21世紀後半、異星人のもたらし技術により科学文明を発達させた人類は、生息可能な惑星ウラノスに移民を行った。ウラノスの社会秩序(システム)はバイオコンピュータ「フレイア」によって保たれ、人類史上最高の文化創造を目指して発展を続けていた。しかしある日突然ウラノスと地球の交信が途絶。その原因は「フレイア」のバグによる暴走にあると判断した地球は、フレイアの破壊を目指す作戦「オーバーライド」を発動、戦闘用ホバータンク「ギガイアス」をウラノスに向けて出動させた…
…ってな設定。世界観や設定自体はよくあるシューティングゲーム設定だと思う(まぁシューティングゲームの世界設定をちゃんと読んでる人は少なそうだが)。ただひとつだけ自機が戦闘機ではなく「ホバータンク」である点は他に例が無いのではなかろうか。
ゲーム自体もいたって普通の縦シューティングで、とくにこれといったオリジナリティが無いのは事実。それでも序盤からよく描きこまれた美麗な背景と、凝った敵機のメカニックデザインに魅了され、ゲームの世界にどっぷりと浸かりたくなってしまう。最終目標である「フレイア」は地下3000mの地点にあることになっているので、次第に地下へもぐっていくステージ構成も凝っているし、序盤から終盤まできっちりと統一されたメカニックな世界観は、SF設定が当たり前のシューティングゲームの中でもひときわ目立つレベルのものだと思う。PCエンジン・オリジナル縦STGの名作「ガンヘッド」(’89)あたりを意識しているかな、と思うところもあるが、こちらはこちらでそれに負けないほどの出来になっていると僕は思う。このぐらいの出来なら逆に当時のゲーセンに出してみたらそこそこ反響もあったんじゃないかって気もする。
◆5種類の攻撃オプションを駆使!
「オーバーライド」は全6面。慣れてくるとわかるがパワーアップした自機の攻撃力がかなりのものなのでクリア自体はそう難しくない。実際「初プレイでクリアした」という発言を複数のところで見たことがある。
簡単さの一因は攻撃方法が単純明快というところにある。PCエンジンのパッドはある時期から連射モード標準装備になっているのだが、「オーバーライド」はそれとは無関係にIIボタン押しっぱなしで勝手に連射してくれるのだ。Iボタンの方は速度変更にあてられており(これは後方への攻撃にも応用できるが)、攻撃はIIボタンだけですべて処理できる。画面全体に大ダメージを与えられるボム攻撃である「プールショット」もIIボタンを押さないでエネルギーをためたところで押して発動、という仕組みだ。
操作系の簡単さに加えて一発当たると終わりではないダメージ性を採用しており、1機につき三回敵弾に当たるとアウトとなっている。しかもこのダメージを回復するアイテムも割と頻繁に出るし、得点に応じて残りの自機も増えるから攻め方が分かってくると確かに難度は低め。もっともクリアしても難度を上げた2周目以降があるのだが。
自機単体の通常攻撃はパワーアップアイテムをとることで前方3方向へのショットまで強化できる。だがやはりポイントは5種類ある多彩なオプションをつけることだ。オプションアイテムは特定の敵を倒すと出現し、一定時間で5種類の色に次々と変化していく。つまり自分の欲しいオプションをとるには色が変わるタイミングをよく見ないといけないわけ。同じ色のオプションをとり続けることでその攻撃力が4段階に強化されるのでこれも攻略のポイントとなっている。
オプションは「オレンジ」だと斜め前方へのサポート攻撃。「イエロー」だと自機の進む方向と逆に攻撃する浮遊砲台(これがなれないとかなり扱いづらい)。「グリーン」なら自機の周囲を回転して守りながらの前方攻撃、「ブルー」だと自機の左右について前方への強力なビーム攻撃(4段階目はかなり強力)、「パープル」はやはり自機の左右について横方向への攻撃を行う。
こう書くと最初の「オレンジ」が一番弱そうに見えるのだが、実は4段階までパワーアップすればこいつが一番強力。なぜかといえば「オレンジ」の4段階目になると円状の弾の帯が敵を自動追尾して確実に撃破するホーミング弾になるからだ。このホーミング、かなりのスピードで、しかも連射状態になってくれるので、こちらはほとんどボタン押しっぱなしのまま画面中に群がる敵を自動的に追いかけて根こぞぎ撃破してくれ、爽快感抜群な上に楽なことこの上ない。このホーミング状態はかなり見ものなのでぜひ一度体験していただきたいものだ。
◆PCエンジンはシューティング!
このゲーム、画面全体にせわしなくかなりの数の敵が登場するし、複雑な動きをする巨大ボス、そしてよく描きこまれ高速スクロール(多重スクロールするところもある)する一部の背景など、ほとんど処理落ちせず実によく「動く」。これを見ているとやはりPCエンジンってシューティング向きのマシンなんだな、と改めて思う。このソフトはとくにその性能をよく引き出している一本じゃなかろうか。
各ステージそれぞれに面白いが、個人的には甘めだけど高速スクロールが爽快な3面と、やたらに敵があふれてホーミング攻撃が熱い4面が好み。BGMもなかなかカッコいいと思うし、爆発の効果音等、HuCARDにしては音でがんばってるほうじゃなかろうか。
最後になるが、実はこの「オーバーライド」、発売元こそデータイーストだが、開発元は「Sting(スティング)」という会社。1986年設立で当時はまったく無名の下請けメインのソフトハウスだったが、その後サターンやプレイステーションでRPG「BAROQUE(バロック)」をヒットさせるなど息の長い活動を続けている。
「オーバーライド」は本来このスティングが構想・開発を進めていたものだったようで、PCエンジンでデーターイーストから発売されたその年のうちに、「ラストバタリオン」のタイトルでX68000でも発売されている。こちらは未プレイなのだがスティングのサイトに出ている紹介によれば世界観やステージはほとんど同じで、少々物足りない面数で終わったPCエンジン版より内容が増えた「完全版」になっていたみたい。この「ラストバタリオン」がスティング初の自社ブランドゲームソフトだったというおまけもつく。
この会社のその後の歴史を知ると、この割とオーソドックスなシューティングゲームが妙に印象に残るものであったのも納得できるような気もする。
(追記)本作は2007年9月4日から任天堂「Wii」向けの「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.338
| 3.092
| 3.307
| 3.584
| 3.492
| 2.861 | 19.676
第481位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 9
|
ウォルフ中村
| 8
|
TOMOYO
| 7
|
ミロはじめ
| 8
|
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
東府屋ファミ坊
| 7
|
水野店長
| 8
|
森下万里子
| 8
|
TACOX
| 7
|
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