原作はアイレムが開発したアーケード用横シューティングゲーム。当時のことは詳しく知らないが、これがPCエンジンで「完全移植」されるということがゲーマー達の大変な関心を呼んだそうだから、その存在の大きさがうかがい知れる。発売リストを見てみると分かるが、1987年年末に発売されたPCエンジンはその最初期にこれといった目玉商品を出していない。以後のゲーム機はハード立ち上げ時に普及の鍵となる有名キラーソフトを必ず同時発売でぶつけてきたものだが、PCエンジンは発売後半年にしてようやくキラーソフトが出るというのんびりしたペースだったのだ。
しばしば言われることだが、この「R−TYPE」の発売がその後の長いPCエンジンの歴史を決定付けた。それまで「デカいキャラが動き、色の綺麗なファミコン」といった程度の実力しか見せられなかったPCエンジンがようやくその本領の画像処理能力を見せ付けたのが本作だったと言われる。当時としては「ゲームセンターそのまま」の移植というのは驚異的なことで(ファミコンの各種移植作を見ると実感する。それでも実際のアーケード版にうるさい人は「そのまま」とは言い難いらしいが)、ゲーマーのPCエンジンの普及率をドカンとブチ上げる大きな成果をあげた。ホントに「R−TYPE」なかりせばその後のPCエンジンはなかったかもしれない…のだ。ゲーム自体の出来もさることながら、本作はPCエンジン史上に計り知れない足跡を残したと言える。
本作は当たり前だがHu-CARDソフト。2Mの容量しか入らないので「R−TYPE」は2本に分割して発売されることになった。この「I」には前半の1〜4面が収録されている。クリアするとエンディングの後にパスワードが表示され、装備などを「II」へ持ち越しできる仕掛けになっている。今からすると「なんで一本にまとめなかったんだ」とぼやいてしまう構造であるが、技術的な問題もあったろうし(その後は4MのHu-CARDが標準になっていく)、原作に近づけるために容量をめいいっぱい使ってしまったという側面もあるようだ。このゲームの人気はいつまでも高く、のちに本家のアイレムからSCDで「R−TYPE」一作目の完全版が発売されてもいる。
◆めくるめく巨大ボス演出の嵐!
巨大な悪が支配する世界、バイド帝国。そこには恐怖の異形生物が生息していた。これらを打ち砕くため、人類は戦闘機「R-9」を壮絶なる戦いに送り出した…
これが説明書に書かれている舞台設定。まぁSFシューティングゲームではよくある設定でメタリックな人工物とエイリアン調のグロテスク生物とが融合した世界が全編にわたって展開されている。
背景の美しさも特筆すべきレベルだが、なんといっても本作でインパクトがあるのはグリグリと動く巨大ボスの数々だろう。パッケージにも使われている1面ボスの「ドブケラドプス」や2面で登場する画面いっぱいに動き回る巨大ヘビ(?)の「インスルー」。特にインスルーのほとんどちらつきを感じさせないスムーズな動きと透明感のあるメタリックな輝きの表皮の表現はまさに「圧巻」の一語。3面の面全体を占めてしまうとんでもない巨大戦艦、4面ラストの合体・分離する「コンバイラー」など、今見ても新鮮な驚きを覚えるボス演出が連打される。当時としてはこのレベルのものが家庭用ゲーム機で出来るというのはホントに大感動だったのだと思える。それもこんな薄っぺらいカードで…と今でも思えちゃうところ。
もちろん原作を開発したアイレムのスタッフの素晴らしさを讃えるのは当然だが、これをPCエンジンという新しいハード上でその機能をフルに活かして原作同様の移植を成功させたハドソンのスタッフの職人芸も絶賛されるべきだろう。PCエンジン開発の舞台裏についてはいろいろと発言が出ているが、生みの親であるハドソンとしては当時人気絶頂だったシューティングゲームをアーケードのまま移植できるハードとしてPCエンジンを開発していたようだ。その実力をユーザーに最も見せ付けられるソフト、それがこの「R−TYPE」だった。それだけにハードの命運をかけて全力投入した 一本であったと思える。
なお、当時の雑誌記事によると、この「R−TYPE」の開発にあたったハドソンのスタッフたちはバグまでも含めた忠実な移植に執念を燃やし、あるバグをなかなか再現できない悩んだという本末転倒なジレンマに陥っていたとの笑い話があったそうで。
◆でも難度はかなり高いです
このゲームの斬新さはいわゆる「タメ撃ち」が出来るところにあったようだ。IIボタンを押し続けると「波動砲」が撃てるようになり多くの敵を貫通したり大きなダメージを与えることが出来る。
これに加えて「フォース」と呼ばれるオプションが独特。自機本体にくっつけていれば防御にも使えるし、自機の頭と尻尾につけかえることで攻撃の幅も広がる。さらに自機から分離して別行動で攻撃をさせることが出来るし、パワーアップアイテムを取り続けることでこのフォース自体が次第に成長するなど、応用の幅はかなり広い。とにかくこの「フォース」を使いこなすことがこのゲームのキモなのだ。
この「I」に収められた前半4面までは後半に比べればまだ難しくないのだろう。しかしそれでも3面以降はかなり手こずらされた。とにかく砲台がガンガン撃ってくるし上下左右どこから攻撃が来るかわからない(特に4面)。フォースの分離もタイミングを間違えると即自滅につながる。後半に進むにつれ、必勝パターンを見つけ出さないととても先へは進めない状況になってくるのでかなり苦労させられる。必勝パターンさえ見つければ、少なくともこの「I」はクリア率が高くなることだろう。
最初に持てる自機は三機までで、コンティニューは4回まで。コンティニューはその面のやられた辺りから始められるので(面自体が短めで、その面の前半後半で区分けされている)、しつこく攻略するのには親切な設計だ。
クリアすると、自機「R−9」が基地の中を運ばれていくビジュアルシーンが入り、パスワードが表示される。これで後半戦を収めた「II」に続けられるわけだが、発売当時「I」を購入した人はイライラしたりろうなぁ…「II」発売はその2ヶ月以上あとのことだったのだ。
(追記)本作は2006年12月13日に任天堂「Wii」向けの「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。また2011年4月20にPS向け「ゲームアーカイブス」で「I]「II」を一本にまとめた形で配信された。
キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
4.384 | 4.339 | 4.280 | 3.922 | 4.498 | 4.024 | 25.450 第14位 |
★★★★★ |
レビュアー | 総合評価 |
東府屋ファミ坊 | 9 |
水野店長 | 9 |
森下万里子 | 9 |
TACOX | 7 |