詳しくは「R-TYPE・I」(’87)の解説に譲るが、とにかく「R-TYPE」はPCエンジン初のキラーソフトでハードの普及に一役も二役もかった歴史的名作である。この名作発売から3年以上もたって、なぜかこの時期に本家アイレムから「R-TYPE」を一枚のCDに収録したソフトが発売されている。なぜこの時期にこんな古いソフトを、と思ってしまうところだが、この1991年末というのはPCエンジン史に一つの画期をなす出来事が起きている。そう、従来のCD-ROMシステムをバージョンアップした「SUPER CD-ROM2(ロムロム)」システムが発売開始された時期なのだ。この「R-TYPE conpleteCD」もそのSCD景気付けに一役買おうと開発・発売されたものかと思われる。SCD初期だったことを証明するかのようにケース裏にはプレイするための環境として「スーパーシステムカード」「SUPER CD-ROM2」「DUO」といった機種が紹介されている。まぁそれにしてもPCエンジンってやたらにハードを作りまくっており、さぞかし当時のユーザーは混乱したことだろうなと改めて思う。そのムチャクチャとも思える多様さがマニア的には魅力ではあるのだが(笑)。
話が飛んだ。とにかくこのソフトは「新作」と呼ぶにはかなり躊躇する、PCエンジンファンへのプレゼント的商品という性格を感じる。ゲーム部分はHuCARD版と比べると分かるが、まるっきり同じである(まぁなんとなくだが、一部ボスのちらつきが目立つとか妙に速度が速いとかいう違いを感じなくもないけど…)。当時の容量の都合で2枚のカードに分かれて発売されていたのを一枚のCDに収録したことで、引き継ぎパスワード不要の通しプレイが可能になり、なおかつ難易度調整有り・無限コンティニュー制になっているのは有り難い限りだが、実のところゲーム自体にはまるで違いはない。それでは申し訳ないと思ったのか、CDであることを利用してBGMをCD用にアレンジして流し、アニメ+音声入りの割と長めのビジュアルシーンがオープニングや面間に追加されている。しかしそれで7500円というのは高いんじゃなかろうか(中古で買った私には特になんとも言えませんが(笑))。
で、このSCD版最大の売りであるはずのビジュアルシーンだが、これがこのソフト最大の大問題なのだ(笑)。とにかく、絵が下手。メカニック部分はなんとか見られるレベルだが、人間にいたっては「SCDでそれはないでしょう」と言いたくなるほど低レベルなCGが拝める。CDソフトでこれほど絵が下手なのは僕が知る限り他に例を知らない(汗)。
さらに困ったちゃんなのがこのビジュアルシーンで語られる「R-TYPE」のバックストーリー。冒頭でボイジャーなど惑星探査機に地球外生命へのメッセージが搭載されていたことを語り、人々が異星人の存在確認に期待を抱いていた…ってな字幕が表示される。しかしそれは凶悪な宇宙生命群「バイド帝国」の襲来により打ち砕かれた…ってな展開である。たまたま惑星開発用に製造されていた強力な戦闘機(どうもそのつもりは無かったらしいのだが)「R−9」がバイド帝国に対抗する武器として駆り出され、これの開発に当たっていた研究員の「リョウ・ミナモト」と「リィザ・ステファニー」の男女二人がが軍人でもないくせにこの「R−9」の搭乗員にされてしまう(なんと「R−9」は男女二人乗りだったのである!二人乗りの必然性は全く不明)。
偶数面をクリアするごとにストーリーの続きを語るビジュアルシーンが挿入されるが、この二人、兵士として駆り出されたことに疑問も感じていたはずが、一度戦場から外されそうになると、やっぱり自分たちが、ってなことで上官の命令を無視して「R−9」で勝手に出撃するなど、なんというか行動に一貫性が無い。エンディングまでは見ていないので(見られる日が来るのだろうか…)全体の感想を述べることは出来ないが、途中まで見ただけでも、やっつけ仕事で適当にとってつけたとしか思えないバックストーリーであることが明白に分かる。「CDなんだし、何かつけなくちゃ!」と思ったアイレムが無理やりこんなもの作っちゃったのだろうが、ほとんど名作たる原作に対する冒涜に等しい(怒)。主人公のリョウってのもなぜか格闘ゲームの主人公みたいな顔も体もごっつい奴でとても研究員とは思えないし(笑)。なお、リョウの声は神谷明さんですな。
キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
3.892 | 4.178 | 3.607 | 3.821 | 3.642 | 3.714 | 22.857 第134位 |
★★★ |
レビュアー | 採点 |
岩崎啓真 | 6 |
ウォルフ中村 | 7 |
東千里 | 8 |
びいず羽岡 | 5 |
レビュアー | 総合評価 |
東府屋ファミ坊 | 6 |
水野店長 | 6 |
森下万里子 | 7 |
ジョルジョ中治 | 5 |