ウィンズ・オブ・サンダー   
ジャンル:シューティング
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:ハドソン
発売:1993年4月23日
価格:6800円
商品番号:HCD3039


◆とにかくド派手なファンタジーシューティング!

外見 僕はこのゲームについては商品を実際にかなり買う前に体験版で触れていた。小学館「PCエンジンハイパーカタログ」の第3号にこれの体験版が収録されていて、1面(水テーマの面)だけ遊ぶことが出来たのだ。
 初めてプレイした時の印象だが、とにかく「ハデ」の一語に尽きる。のっけから巨大な敵キャラがハデに登場するし、ザコ敵たちも良く描きこまれていてそれぞれ細かい「芝居」をし、背景もかなり描きこまれていて多重スクロールに高速スクロール。自機(?)の攻撃もドンドン派手になる仕掛けで、特殊攻撃なんか画面いっぱいに炸裂する。そして何と言ってもCD音声でガンガン流れるハードロックというかヘビメタ調のBGM!まぁとにかく、少なくとも見た目に関しては作りこみの激しいゲームだなぁと思わされたものだ。

 世界観はまるっきり違うのだが、本作には「前作」が存在する。やはりハドソンから発売された「ゲート・オブ・サンダー」(’92)がそれだ。名前こそ似ているがこちらはハードSF的世界観を持つシューティング。だがその描きこみの細かさとノリのいいBGM、スピーディーな演出といったところは確かに共通している。
 正確な事実かどうかは確認していないのだが、この「ゲート」と「ウィンズ」の両「サンダー」STGを開発したのは、パソコン、アーケード、スーパーファミコン、メガドライブ等々で出ていた「サンダーフォース」シリーズに関わったテクノソフトの開発スタッフであったらしい。「サンダー」つながりであるだけでなく確かに両者にはBGMのノリや演出面など共通点が多々ある。ハドソンから開発を請け負ったのかスタッフが引き抜かれたのかは定かではないが。

 CD-ROMならではのオープニングビジュアルで語られる(青野武氏の渋ーい声で!)バックストーリーは以下のようなもの。舞台となるのは「ミストラル」というファンタジー世界。平和だったこの世界に大神官長ゾーンブルと六大魔将軍が率いる「ガルド帝国」の軍勢が侵攻、大昔に伝説の英雄デューによって封印された暗黒神ザガードを復活させようと図る。これに対しデューの末裔である騎士ランディーが単身でガルド帝国軍に立ち向かっていく…
 ああ、そのまんまRPGのプレストーリーになりそうな超ありがちな設定だが、当時のシューティングゲームの設定としてはかなり珍しい部類に入るだろう。


◆凝りに凝りまくるステージの連続!

 このゲームは全7面構成で、まず六大魔将軍がボスとして控えている6つのステージ(大陸)を順不同に全てクリアしたのち、最終ボスの待ち受ける7面に入ることが出来る、という構成になっている。6つのステージは「砂漠の大陸」「水の大陸」「火の大陸」「湿林の大陸」「氷雪の大陸」「浮遊大陸」となっていて、それぞれその名の通りのイメージで統一されている。この各ステージの激しく描きこまれた背景の美しさは今見ても衝撃的で、数あるPCエンジンSCDソフトの中でもほとんど最高と言っていいほど。とくに色使いの見事さはPCエンジンの発色能力を最大限に、いや実力以上に引き出しちゃってるんじゃないかと思えるほど(「風の伝説ザナドゥII」といい勝負ぐらいか)。細部まで描きこまれた美しい背景はプレイ中でもついつい見入ってしまうほどで、とにかく必見!と言うほかない。多重スクロールなんか見ているだけでワクワクしてくるし、一部に挿入される目もくらむばかりの高速スクロール(それも横方向だけでなく縦方向もある)も圧巻だ。

水の大陸ステージ もちろん凝っているのは背景だけではない。ワラワラと出てくるザコ敵たちがそれぞれに見せる細かい演技も見もの。設定上、敵は「帝国軍」ということもあって大半がモンスターや人間、そして生体メカ(?)で、撃破するのが惜しくなるほど(笑)それぞれに実に細かい芝居をしており、主人公の進撃を阻止しようと必死になってる様子がドラマチックに伝わってくる。
 敵の登場の仕方もいろいろで、イモムシ状のモンスターが画面奥から手前に向かって飛び込んでくる「3D表現」とか、拡大縮小する水中の泡、消えたり現れたりする魔法使いなど、もうあの手この手の演出テクニックが披露される。

 そして目を奪うのは各ステージの節々に登場する巨大ボスキャラ。このゲームでは特に「小ボス」「中ボス」といった配置にはなっておらず、ザコに紛れてしょっちゅうボスっぽいキャラが出てくるのだが、これがまたいずれもデザインが秀逸でよく動く。一部にはかなりのデカキャラが登場して文字通り画面狭しと暴れるのだが、まったくモタつきやチラつきを見せない。竜とか蛇のような長くて多節のデカキャラというのはPCエンジンでも処理がチラつくケースが多いのだが(FXのソフトですらこれがあった)、このゲームではそんなことが全く感じられず、プログラマーの豪腕がしのばれるばかりだ。

 各ステージの最後にはたいてい神殿が用意されていて、ここでの各種ギミックの動きもアイデア満載で飽きさせない。そしてその奥にはその大陸を守る魔将軍が大ボスとして待ち受けている。これがいずれもデカキャラで、登場時にはしっかり小さいサイズから巨大化したり画面奥から飛び出してきたりといちいち演出が凝っている。いずれもそう簡単には負けてくれない硬さで、苦労の末破壊した時の爽快感はもう最高である。
 こうした一連の凝りに凝りまくったステージのBGMがまた豪快で、ノリにノリまくっている。とにかくハデに、爽快に、豪快に、と圧倒されるばかりで、今でも十分に鑑賞に堪える逸品だ。


◆凝ってるのは見た目だけじゃない!

 豪快、爽快!に目と耳を奪われてしまう本作だが、システム面においてもさすがにしっかりとした、オリジナリティーあふれるつくりになっている。
 まず「自機」であるところの主人公ランディーは新ステージ開始時に四つの鎧の中から一つを選んで装着することになっている。四つの鎧はそれぞれ「炎」「地」「水」「風」と区別があり、それぞれにその名のとおりの特性がある。各ステージでどれが有利であるか考えて選択する必要があるのだ。特に「水」なんかは唯一後方への攻撃が可能だったりするのでステージによってはこれでなきゃ無理、というものもある。
 ランディーの基本攻撃(IIボタン)も二種類あり、一つはシューティングそのものの遠距離へ攻撃を飛ばす「ショット」。もう一つは敵に接近して「フンッ!」という掛け声と共に剣で斬り付けるというもの(当然こちらのほうが強力)。このうち「ショット」は敵を倒すと時々出てくる「魔法珠」をとるとその数に応じて三段階にパワーアップしてゆき、最強状態ではかなりの威力を持っている。ただしこの魔法攻撃は敵の攻撃を少しでもくらうと大幅に減ってしまいパワーもガクンと落ちてしまうので、基本的に敵・敵弾はよけなきゃダメ。

 さらに回数制限のある特殊攻撃がいわゆる「ボム」である「精霊召喚」。これを発動すると画面全体にそれぞれの鎧特有の大攻撃が炸裂し(これがまたハデなのだ!)、たいていの危機を回避することができる。しかし回数はデフォルトで一回、ショップで購入して最大三回までなのでできればボス戦まではとっておきたいところ。一部のボスはボム三発+αぐらいで倒せる。

ショップ画面 さてこのゲーム、シューティングのくせにRPGっぽいのは世界観だけではなく、いま書いたこの「ショップ」のシステムにもある。ステージ内でザコでもボスでも敵を倒すと必ずキラキラと輝く「クリスタル」が出てくるので、これを回収しておくと面クリア後、あるいはランディが「うおわーっ!!」と男らしい断末魔の悲鳴を上げて散ってしまい再挑戦、という際に出てくる「ショップ」でいろいろとアイテムを購入することが出来るのだ。だから面倒くさがらずに可能な限りクリスタルは拾っておいたほうがいい。
 シューティングゲームで「ショップ」のシステムがあるというのはいくつかのゲームで先例があり特に珍しいわけではないのだが、このゲームでは「生命珠」「魔法珠」「魔法障壁」とかいかにもRPGにありそうなアイテムに模様替えしていて楽しい。RPGでおなじみの生き返り薬「エリクサー」もちゃんとあるし(当然バカ高値で滅多に買えないが)、時を戻して生き返るということで「コンティニューが増える」なんてアイテムもある。

 しかし毎度ながら印象に残るのはこのショップの店員さんである謎の微笑を浮かべた美女か(笑)。毎度「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と透明感のある綺麗な声で挨拶してくれるのだが、声の出演は誰だったのか。エンディングを見れば判明するのかもしれないが、なんせ筆者は六大陸をいまだクリア出来ていないていたらくなので…(汗)。

(追記)本作は2008年6月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。2010年8月にはPS向け「ゲームアーカイブス」でも配信された。



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.84
4.33
3.85
3.83
4.00
3.91
23.76
第73位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★★

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真
80
パトリオット佐藤
90
ウォルフ中村
80
メタラー佐々木
90

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

田原誠山

渡辺美紀

ジョルジュ中治



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