カードエンジェルス

ジャンル:テーブル
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:フジコム
発売日:1994年12月9日
価格:8800円
商品番号:FCCD4002


◆登場ギャルは48人!?「脱衣」トランプゲーム


外見 1994年の年末と言えば、「プレイステーション」「セガサターン」「PC-FX」ら「32ビット次世代機」がそろって世に出た時期だ。PCエンジンは先行するCD-ROMゲーム機としての優位も怪しくなり、他機種に唯一「勝てる」ジャンルが実質ギャルゲーしかない、というやや悲しい状況になりつつあった。この「カードパラダイス」(’94)もそうした風潮の中で発売された一本であることは否めない。

 アーケードでは定番の一つであった「脱衣」ゲームが家庭用ゲーム機であるPCエンジンで事実上「公認」されたのは、このほぼ一年前に発売された「スーパーリアル麻雀PIVカスタム」(’93)が最初だ(それ以前に「麻雀学園」があるが問題とされ追加発売停止をくらい、修正版が出た)。CD-ROMならではの美少女ビジュアルと声の演出による「脱衣ゲーム」は男の子たちの下心を大いに煽って(笑)、これを皮切りに1994年以降ナグザットと日本物産から相次いで脱衣もののゲームが発売されている。もちろんいずれも乳首はNGで、かなりマイルドなH度だったが。

 この「カードパラダイス」を発売したのは「フジコム」。この1994年末という時期にPCエンジンに初参入したという変わり種のメーカーで、その第一作もスーパーファミコンからの移植でアーケードカード専用のプロレスゲーム「バトルフィールドin闘強導夢」(’94)という、思い切り硬派かつ果敢なジャンルでの乱入だった。その一カ月後には「カードパラダイス」なので同時並行で開発していたものと思われるが…
 ネットで拾った情報なので正確は期せないのだが、どうもこの「フジコム」、PCエンジン参入ソフトハウスであった「ブレイン・グレイ」(「エフェラアンドジリオラ」「ラストハルマゲドン」など)のスタッフが流れて作ったものであったらしい。参入直後にそこそこのソフトを作っているのもそういう事情があったからかもしれない。なお、PCエンジンではその後ホラーアドベンチャー「真怨霊戦記」(’95)を発売、PCエンジン末期をまったく異なるジャンルで彩ってくれた異色のソフトハウスとしてユーザーの印象に残ることになった。

 さて、この「カードパラダイス」であるが、脱衣ものといえば麻雀という定番に逆らって、「トランプ」を採用している。またアーケードからの移植ではなく全くのオリジナルで、美少女漫画家MONMONをキャラクターデザイナーに起用、主人公3人娘に加えて敵美少女45人の合計48人(3人娘のほうは脱がないけど)もが登場するかなりの大所帯ゲームとなっている。さすがに48人もの美少女キャラをデザインするとなるとMONMONさんも大変だったのではあるまいか。
 登場する女の子たちは女子高生から女子大生、レースクイーンやスチュワーデス、婦警、ボディコン…と思いつく限り多種多様、ありとあらゆるコスチュームが網羅されていて、登場時にスリーサイズや趣味、コメントが表示され、プレイ中にはそれぞれのキャラに応じた独特のセリフも発してくれる。主人公三人娘には久川綾横山智佐松井菜桜子と人気声優たちをそろえ、オープニングや各エリア前後のビジュアルシーン、さらには対戦プレイ中でも盛大にしゃべらせている。男の姿はゲーム中一切見られず、まさに絵に描いたような「ギャルゲー」である(笑)。


◆過酷きわまる45人抜きストーリーモード

 このゲームのメインとなっているのは主人公3人娘のチームで全45人相手に勝ち抜いていく「ストーリーモード」だ。説明書にある「オープニングストーリー」によると、主人公の朝野さやか(声:久川綾)は先祖代々所有しながら何者かに盗み出された「賢者のトランプ」を探すべく旅に出る。そこへ彼女のライバルであった桐嶋美樹(声:横山智佐)と東大寺京子(声:松井菜桜子)が仲間に加わり、「カードエンジェルス」なる三人娘を名乗って日本中のテレビ局を電波ジャック、毎週日本各地を舞台に挑戦者を募ってトランプ大戦を行う番組を放送することになった…という、なんだか考えれば考えるほどよく分からなくなる設定である(笑)。そんな電波ジャックの非合法番組のくせに堂々と連絡先を住所付きで表示してるし(フジコムの実際の住所が出てる)、そこへ各地から挑戦者が応募してくるのも変だし、それで問題の「賢者のトランプ」が取り返せると考える主人公たちの発想も理解できない。

 説明書に載る話とは別に、ストーリーモードの最初には短いながらもなかなか凝ったビジュアルシーンがある。「カードエンジェルス」の3人が「賢者のトランプ」を手に入れようとどこぞのカジノに深夜潜入して大量のトランプカードを盗みだし、車で逃走中にその中にそれがないことを知って車の屋根から大量のカードを一気に放り出す…と、文章で書くといまいち伝わらないが、目で見れば知ってる人には一目瞭然、あの「ルパン三世カリオストロの城」のオープニングのパロディになっているのである(笑)。
 あくまでこのオープニングを見ての推測なのだが、制作スタッフは当初「キャッツ・アイ」をヒントにした泥棒ばなしの設定にする気だったのではあるまいか(盗まれた宝を取り返すという設定はそのまんまである)。だが「泥棒」行為を主人公たちが行うことがゲーム倫理上でひっかかったために「電波ジャックテレビ番組」という形を無理やりとったんじゃないだろうか…と思えるのだ。この手のゲームに整合性を求めてもしょうがないだろうが、それにしてもチグハグになっている原因はそんなところにあるんじゃないかと。

プレイ画面 ともかく各ステージは全国各地の都市で開催されるトランプ対決の「テレビ番組」という形になっている。各ステージのオープニングで日本地図とその都市の位置が示され、その都市を象徴する建物などを背景に3人娘のうち誰かがしゃべるビジュアルが出てから、いよいよトランプ対決となる。各ステージでは3人の敵女性キャラが登場、「カードエンジェルス」の3人娘と一対一で対決する。敵3人を連破してようやくそのステージをクリア、次ステージへと移ることになり、全15ステージを突破してゲームクリアという仕掛けだ。
 各ステージの最初に敵3人それぞれと何のゲームで対決するかがスロット形式でランダムに決定される。用意されているゲームは「ババ抜き」「ブラックジャック」「スピード」「ポーカー」の4種類。ランダムのはずなのだが、僕個人の感触では「ババ抜き」に当たる確率が妙に高かったように思う。

 初期設定ではトランプゲームは20ラウンド対決し、その時点で点数の多かった方が勝ち。あるいは一方が10000点を超えるとその時点でそちらの勝ち、となっている(この設定は難易度も含めてオプションで変更可能)。こちらが高得点をあげていくと敵女性キャラの服が次第に点滅して下着が透けて見えてゆき、勝利した瞬間にすっかり下着姿になる。そしてそのあとにちょっとセクシーな「ご褒美グラフィック」の一枚絵が表示される。脱衣ものというと一枚一枚脱がしてだんだん過激になるところが楽しみ(笑)だと思うのだが、このゲームでは「だんだん透けて見えてくる」という方式を採用している。場合によってはあっという間に10000点超えしてしまい、即座にご褒美グラフィックということもあって、いささか物足りなさも感じる。脱衣と言ってもあくまで下着姿までなんだから露出度は…という方もおられようが、実は裏技で下着を脱いだギリギリの姿も見られるというサービスもしっかりあったりする(笑)。
 その一方でキビしいと感じるのは、各ステージのクリアには「全勝」が必須であるというところ。一人目、二人目と勝ち進んでも三人目で負けるとまた一人目からやり直しなのである。トランプの種類によってはかなり時間がかかるものもあり、三人目で負けたりすると時間的にも精神的にもダメージがデカい。

パスワード画面 おまけにデータセーブがパスワード方式である。敗北するとパンティに包まれたお尻どアップの画面にトランプ三枚で表されたパスワードが表示され(何気にこの画面がこのゲームで一番Hな気がする)、次回起動時にそのパスワードを入力してゲームの続きが出来るのだが、やはり各ステージの一人目からのやり直しだ。全15ステージ、総勢45人という長い道のり、しかも当然ながら後半に進むと敵の強さもアップしてくるので、こうした設定はかなりストレスになる。難度調整も可能になっているとはいえ、もう少し工夫が欲しかったところ。


◆トランプ対決は結構熱い!?

 ストーリーモード以外にも、好きな相手を選んで(ストーリーモードでクリア済みのみ)対決できるフリー対戦モードもあり、マルチタップにつないでプレイヤー同士の対戦も可能となっている。トランプゲームで対戦なんて、お互いの手の内が見えちゃうのに可能なのか?とも思うだろうが、このゲームに関してはあまり問題はない。純粋に運のみで勝ち負けを競う内容で相手の腹の探り合いの必要もないからだ。

 「ポーカー」は本来なら相手の手を推理するのがポイントなのだが、このゲームでは単に任意にカードを交換してお互いに見せあい、どちらの手が強いか比べるだけである。ワンペアで200、ツーペアで500、スリーカードで1000、フラッシュで2500、ストレートで3500、フルハウスで5000、フォーカードで10000点となっており、20ラウンドやらないうちに10000点突破で勝負が決まる場合が多い。この手のゲームではたいていそうだが、ランダムに敵味方に強運がまわってくるようにプログラムされているようで、大きな手がお互いに出やすくなる時がある。

 「ブラックジャック」は俗に言う「21」で、カードを引くか引かないかを決めて持ち札の数字の合計を競い、21を超えてしまったらドボンというアレである。このゲームではプレイヤーが常に先にカードを引いていくので若干こちらが不利。こっちがドボンになると相手は確実にカードを引かずに勝ってしまうからだ。基本的に「安全運転」の勝負をしていくのがコツのようである。「21」になるとボーナス得点が入る。

 「スピード」のルールはご存じだろうが、両者の間に置かれたカードの一つ上か一つ下の数字のカードを素早く置いてゆき、手持ちのカードが先になくなった方が勝ち。運の要素も多分にあるが、いかに相手がカードを出すのを邪魔して自分のカードをどんどん置いていくかという戦略要素がかなり高い。なおかつ「スピード」の名の通り、カードを目にして素早く正確にカードを切って行く反射神経が物を言うゲームだ。
 初期設定の難易度でプレイするとゲーム中盤から敵のスピードがハンパでなく、まさに目にもとまらぬ速さでカードを切られてこちらが何もできないまま終わってしまうというケースも少なくない。ただそこは運もあるので、カードのめぐりあわせが良ければなんとか勝てる。このゲームの中で最も熱い戦いが繰り広げられるはずで、対人対戦もかなり盛り上がる。

 「ババ抜き」…は、本来二人で対戦プレイしてもちっとも面白くないはずなのだ。誰がババを持っているかは明白だし、このゲームではお互いカードを引くと必ずペアができる仕掛けになっているので、最後の2枚になったときババを引くかどうかが勝負で、それまでの展開は無駄な時間つぶしとも思える(20ラウンドにおよそ20分はかかる)。おまけにゲーム前半ではこちらがババを引きそうになると敵キャラが露骨に嬉しそうな表情をする(それ以外にカーソルを合わせると泣き顔になる)という演出があるため、まず負けることがなく、ただただ時間がかかる退屈なプレイとなってしまう。
 だが。後半になって来ると次第に敵キャラが表情の変化を見せてくれなくなる率が高くなる。このため終盤にお互いババを引き合う応酬になりがちなのだが、実はこのゲームのババ抜きでは通常の勝利で100点、一度ババが移動すると200点、その後ババが移動するたびに400、800、1600…と倍々に得点が増えていくというシステムが採られている。つまり一挙高得点が可能になっており、それが退屈だったババ抜きをにわかに熱いゲームに変えてしまう。僕の経験ではなんとババが7回も移動してしまい、勝った方に12800点もの点が転がり込む(つまりその時点で勝負あり)という恐ろしい激戦になったことがある。このため敵に大幅にリードされている場合は、相手の表情を見てあえてババを引き、それを相手にまた引かせることで一発大逆転を狙うといった戦略も立てられるのだ。それでもほとんどの場合はかったるいカードの引き合いになってしまうので、もう少し得点方式などで工夫が欲しかった。

ご褒美グラフィック なお、本作のトランプゲームシステムはPC-FXで発売されたソフト「ときめきカードパラダイス・恋のロイヤルストレートフラッシュ」(ソネット、1996年1月発売)にそのまま流用されている。「ときめき〜」は他機種でも麻雀に変えて出ていた脱衣もので、トランプだったのはFX版のみなのだが、用意されているゲームも「ポーカー」「ブラックジャック」「スピード」「ババ抜き」と全く同じである。以前ネット上で見かけた「カードエンジェルス」開発者自身のHPによると、この人自身は関わらなかったようだが「ときめき〜」を出した「ソネット」という会社は「フジコム」のスタッフが流れたもので、FX版は「カードエンジェルス」のシステムをそのまま流用したと明記されていた。
 「ときめきカード〜」は18歳以上推奨ソフトとなっており、一枚一枚脱ぐ方式の乳首もチラッと見える脱衣アニメが売りだった。しかし画質がすさまじい悪さで、キャラデザインもアニメの出来もイマイチで、はっきり言って「カードエンジェルス」の方が数段マシだったと思う。「カードエンジェルス」は設定はともかくトランプゲームのテンポ、豊富に用意されたトランプのバリエーション、細かい見た目の演出などはなかなか優れており、単純に「ギャルゲー」「脱衣エロゲー」と片付けるには惜しいものを結構持っていると思うのだ。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.861
3.230
3.107
3.261
3.430
3.276
20.165
第433位

★電撃PCエンジン(発売前のテスト版による100点満点評価)
レビュアー
総合評価
岩崎啓真
45
ウォルフ中村
45
ウキキ松崎
60
城イドム
85

ウォルフ中村評価(各項目5段階評価)
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス








★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
サワディ・ノダ

ローリング内沢

イザベラ永野

TACOX



迷い込んだ方はこちらから