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投稿日: 2014/04/12(Sat) 00:57
投稿者Ken
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タイトルRaces and People (3)

第8章では、いよいよ「人種」つまり人類を遺伝的な特性で分類できるか、という考察が行われます。この問題は、現在なら遺伝子(DNA)を直接調べて、遺伝的に近い民族、遠い民族を明らかにできるのですが、本書が書かれた1950年代に、そんな技術はありませんでした。それゆえ、頭の形とか、肌の色とか、顔の造形といった、遺伝の結果現れる特徴で、人種が区別されていたわけですが、いずれも影響遺伝子が複雑すぎて、メンデルの法則を容易に適用できません。例えば、白人と黒人の混血では、中間的な肌の色の個体を生じますが、単純なメンデルの遺伝法則なら、白か黒か、どちらか一方になるはずなのです。つまり、皮膚のメラニン色素の量に影響する遺伝子は複数あり、個人の色素量はその総合で決まる、ということです。さらには、ある個人のメラニン量のどれだけが遺伝で、どれだけが日射量や食物などの結果なのか、切り分けが不可能です。そこで、アジモフは、これらの問題を持たない遺伝形質として、血液型に注目しています。

まず、そもそも血液型とは何か、A型、B型、O型、AB型の血液が、どのように成分を異にしているのかを説明し、さらに、メンデルの法則が血液型についてはきれいに適用されることを示します。また、ABO式とは別にRh+とRh-というRh式の血液型が存在することも説明されます。

第9章でアジモフは、もし「人種」というものを想定するなら、肌の色その他のような曖昧な特徴ではなく、血液型を規準にすべきだろうと述べます。なぜ血液型かというと、(1)個人の外見から分からないから、偏見を排除して科学的アプローチが可能、(2)遺伝の仕組みがはっきりしている、(3)遺伝だけで決まり、後天的影響を受けない、(4)自然選択で特定の血液型が増減しない、という利点があるからです。4番目は、日射量による選択が働く肌の色などと、大きく異なる点でしょう。

血液型を人種区分に用いるといっても、「A型人間」や「B型人間」を別の人種と考えるわけではありません。(そんなことをすれば、血液型の異なる親子兄弟が、別の人種になってしまいます。)そうではなくて、A、B、AB、Oの4つの型の構成比率が、世界の各地で大きく異なるので、これを「人種」と考えたらどうだろう、というのがアジモフの提案です。

特に、B型とAB型の人が持つB遺伝子の出現比率が、最もはっきりと、世界の諸民族を分類します。出現比率が最も高いのは中央アジアで25%以上に達します。その他のアジアが約20%、東欧とアフリカが15%、西欧が10%、南北アメリカとオーストラリアの原住民が0%となります。アメリカはA型も少なく、南米にいたっては、先住民は100%O型であったろうと、いわれています。さらには、ABO式以外のMN式、Rh式も考慮した結果、本書は世界の人間を、(1)オーストラリア先住民、(2)アメリカ先住民、(3)アジア人、(4)アフリカ人、(5)ヨーロッパ人、(6)ヨーロッパ先住民と区分しています。「ヨーロッパ先住民」というのは、バスク人のことで、Rhマイナスの血液型がきわめて多い点が、他のヨーロッパ人と異なります。

結局、アジモフは、もしも「人種」なるものを科学的に定義したいのなら、血液型の構成比率ぐらいしか、基準にするものがないだろう、といっているのです。

そして第10章では、ある人間集団が別の人間集団よりも優れているという、いわゆる人種主義が、誤りであることを、科学的に説明しています。人間の知能は遺伝よりも後天的な影響に大きく左右されること、世界の最も優れた文明は歴史の中で変遷したこと、特定の集団の知能が仮に優れていると仮定しても、それは平均値にすぎず、優秀な個人はどの集団にも現れること、これらの諸点を挙げた上で、アジモフは、結局、「人種」などは無用の概念だと結論づけています。

また、人類にはもはや自然選択による進化は起こらないし、いわゆる「優生学」によって優れた遺伝子を選ぼうとしても、人間の質を決める要素は複雑すぎて、多くの乳を出す牛を選ぶような単純な話ではありません。本当に人類の質を高めたいのなら、これとは逆の方向、つまり世界中の人間の遺伝子を活発に混ぜ合わせて、人類の中の多様性を高めるべき、というのがアジモフの主張です。結局のところは、この種のいわば社会的な主張をするために、アジモフは本書を著したといえるでしょう。これは現在なら、普通すぎる主張かもしれませんが、1950年代の背景を考えれば、相当にラディカルな主張だったのではないでしょうか。

続く


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