Web Forum
[記事リスト] [新規投稿] [新着記事] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

投稿日: 2014/12/28(Sun) 21:00
投稿者Ken
Eメール
URL
タイトルサムエル記二

『サムエル記二』

 サウルの滅亡で、ペリシテは、イスラエルの反抗は根絶したと考えた。まだダビデがいるとはいえ、長くサウルと戦ってきた彼にイスラエルの支持が集まるはずはないし、そもそも彼はペリシテの臣下なのだ。しかしダビデには野心があり、まずユダの支配から着手した。

サムエル記二2章4節:ユダの人々が来て、ダビデに油を注ぎ、ユダの家の王とした

 イスラエルにはダビデの即位を阻む力はなく、ペリシテは自分たちの傀儡政権と見ていたから、問題にしなかった。しかしダビデは要衝のヘブロンを本拠に定め、サウルの部下やイスラエルの独立を望む人々を集めてゆく。一方、サウルの部将アブネルは、サウルの遺児イシュ・ボシェトを擁して、ヤベシュ・ギレアド救援以来サウル家を絶対に支持する外ヨルダンへ逃れ、遺児を王位に就けた。ユダの王ダビデは統一王国を作るため、アブネルとの交渉を試みるが、ダビデ軍の司令官ヨアブはイスラエル討伐を強硬に主張し、開戦にもってゆく。しかし、統一王国成立後の宥和を考えるダビデは、イシュ・ボシェトと不和になったアブネルと密かに連絡をとり、言葉を伝えた。

サムエル記二3章13節:サウルの娘ミカルを連れて来なければ、君とは会えない

 ミカルはダビデがサウルの家臣だったとき結婚した女性だが、その後は別人に嫁いでいた。ダビデの意図は明らかで、サウルの娘婿になればイスラエルの王位継承資格を得られるし、ミカルが世継ぎを産めば、イスラエル、ユダ両国を平和裏にまとめられる。ミカルはアブネルの手でダビデに届けられるが、ヨアブは構わずアブネルを殺してしまう。ダビデは公の場で謝罪して政治的危機を切り抜ける。同じ頃、イシュ・ボシェトを見限った彼の部将たちが、主君を暗殺して首をダビデに持参するが、ダビデは彼らを処刑して、暗殺者の仲間と見なされる危機もかわす。しかし、サウル家が倒れた今、イスラエルはダビデの王権を受け入れる以外に、安全を保てないのは明らかだった。

サムエル記二5章3節:イスラエルの長老たちは全員、ヘブロンの王のもとへ来た。ダビデ王は彼らと盟を結び、彼らはダビデに油を注ぎ、イスラエルの王とした

 こうして前一〇〇六年に統一王国が成立した。だが北のイスラエルと南のユダが真に融和することは決してなかったのだ。

 それでもダビデは両国融合の手はうった。まずユダの町ヘブロンから南北の中間位置にあるエルサレムに遷都した。当時のエルサレムはカナンの残存勢力であるエブス人の町だったが、南北両軍の最初の合同作戦がエルサレムの攻略だった。エルサレム市内には高さ七百五十メートルのシオンの丘があり、守りを固めるには絶好の場所で、ダビデはここに王宮を、のちにソロモンは神殿を建てた。軍事・政治・宗教すべての中心となったシオンは、やがてはエルサレムそのもの、さらにはイスラエルそのものを意味するまでになる。近代のシオニズム運動の名称も、これに由来するのである。ダビデは、エルサレムへ攻め寄せたペリシテ軍を苦もなく打ち負かし、ペリシテ人の勢力を沿岸部に封じ込めてしまい、さらにはペリシテ人に奪われていた神の契約の箱を、新都エルサレムへ設置した。信仰対象はイスラエルのもの、設置されるのはユダの場所となれば、双方が満足するだろう。

 内を固めたダビデは外への拡張を始めた。かつて父母を保護してくれたモアブを手始めに諸国を征服し、前九八〇年までに紅海からユーフラテス川まで広がる最大の版図を得た。後世からはイスラエルの栄光の時代と仰がれるのだが、それでも面積は七万九千平方キロ(※北海道より小さい※)、かつてのエジプトやヒッタイト、後のアッシリア、バビロニア、ペルシャと比べると、問題にならないミニ覇権だった。むしろアジアに大帝国が存在しない空白期だったのが、ダビデの幸運だったというべきだろう。

 内政面の宿題はやはり、イスラエルの反乱に担がれそうなサウル家をいかに除くかだったが、あるとき国土が長い旱魃に襲われたことが、その機会となった。

サムエル記二21章1節:ダビデの世に、三年続いて飢饉が襲った。ダビデは主に託宣を求めた。主は言われた、ギブオン人を殺害し、血を流したサウルとその家に責任がある

 ギブオンといえばヨシュアを欺いて盟約を結んだ人々だが、サウルがその盟約に背いてギブオン人を殺した記述はバイブルのどこにもない。それでもダビデは神託に従うと称して、サウルの二人の息子と五人の孫を処刑した。やがて雨が降り(いつかは降るに決まってる)、処刑は正しかったと人々を納得させた上で、ダビデは犠牲者を手厚く葬り、サウルとヨナタンも合葬して、イスラエル人の離反を防いだ。

 ダビデを語る上でどうしても外せない有名な話がある。ある日彼は一人の女性を見初めたが、彼女は人妻だった。

サムエル記二11章3節:エリアムの娘でヒッタイト人ウリヤの妻、バト・シェバではないか?

 ヒッタイト大帝国は滅んで久しいが、いくつかの小国として残っていた。ダビデはこれらを吸収したので、ヒッタイト人の部下がいても不思議はない。ダビデはそのウリヤを戦場へ送り、ヨアブ将軍に命じて、ウリヤが死ぬように仕向けさせた。計画は成功し、ダビデはバト・シェバを自分の後宮へ入れたのだ。しかしバイブルがダビデをどれだけ讃えても、これだけは許さなかった。ダビデを叱責する預言者ナタンと叱責を受け入れたダビデの物語を載せている。

 せっかくサウル家を滅ぼして王権安定を図ったのに、危機は王家の内部から生じた。一夫多妻が常態の古代君主制では、後継者の座を争う複数の息子を生じるのは避けがたい。父王の生前に後継者の座を確実にしようと、先制攻撃に出る息子もいる。ダビデ王家にもそれが現れた。成人していた息子は、長男のアムノンと三男のアブサロムだが、二人は母親が異なり、王家の後宮の環境では、これでは兄弟意識は育たない。アムノンがアブサロムの同母の妹タマルを手籠めにしたのが発端で、アブサロムはアムノンを殺害し、国外へ逃れた。

サムエル記二13章37節:アブサロムは、ゲシュル王の子タルマイの所へ逃げた

 タルマイはアブサロムの母方の祖父である。ダビデの将軍ヨアブは、敵対勢力がアブサロムを担いで侵入軍を進め、国内からも同調者が出ることを恐れて、アブサロムの帰還を働きかけ、一旦は成功した。しかしアブサロムは確実な王位継承に向けて、積極的に支持を集めた。

サムエル記二15章6節:アブサロムは、イスラエルの人々の心を盗み取った

 やがてアブサロムはダビデの旧都ヘブロンで旗を上げた。ヘブロンを選んだのは、イスラエルとの宥和ばかりを優先するダビデへの、ユダ国粋派の反発に乗るためだろう。実際にアブサロムの元へ奔ったダビデの近臣もいた。エルサレムは危険と判断したダビデは王都を脱出し、オリーブ山へ逃れるが、今度は彼を糾弾するサウルの旧臣が現れた。

サムエル記二16章7節:シムイはこう言った
サムエル記二16章8節:王位を奪うため流させたサウル家のすべての血はお前に帰る。王国が息子のアブサロムのものになったのは主の意思だ。お前が血まみれの男であるがゆえに、お前が受けた災いを見よ

 もちろんシムイは、ダビデがサウル家を滅ぼした罪を唱えている。しかしダビデはシムイを罰しなかった。それをやれば、ベニヤミン族がアブサロムにつくのは、分かりきっていたからだ。

 アブサロムに与していたユダのアヒトフェルは、ダビデの名声が大きな支持を集める前に攻勢をかけることを主張するが、ここでアブサロムは致命的な誤りを犯すことになる。

サムエル記二17章5節:アブサロムは言った、アルキ人フシャイも呼べ、彼の意見も聞いてみよう

 だが、フシャイはダビデが送り込んだ工作員だった。フシャイは、今攻めればダビデの歴戦の将兵に負けるかもしれず、もっと味方を大きくしてからの攻撃がよいと言ったのだ。アブサロムはその言に従い、結果的にダビデに時間を与えた。外ヨルダンへ逃れたダビデは、そこで兵力を集め逆襲してきたが、こうなるとアブサロムの急造軍は敵ではない。アブサロムは敗れて捕らえられ、ヨアブに処刑された。エルサレムへ凱旋したダビデには、シムイを含めて多くが帰順し、何よりもイスラエルとの宥和を優先するダビデは彼らを許した。それどころか、ヨアブを更迭し、アブサロムの将軍だったアマサを後任に据えることで、ユダの人心も落ち着かせた。

 これほどダビデが心を配ったのに、ユダ王朝へのイスラエルの敵愾心は治まらない。次の反逆者はすぐに現れた。

サムエル記二20章1節:シェバは角笛を吹き鳴らして言った、我々にはダビデと分け合うものはない、エッサイの子と共に受け継ぐものはない、みな自分の天幕に帰れ、おおイスラエル

 この機会を捉えたのはヨアブである。アマサを殺して将軍の地位を回復した彼は、進軍してシェバを敗走させた。シェバは逃亡先の住民に殺された。

 サムエル記第二書は、最後にダビデが行った人口調査について述べている。

サムエル記二24章1節:主の怒りが再びイスラエルに対して燃え上がった。主は彼らを罰するためダビデを動かし、イスラエルとユダの人口を数えよ、と言われた

 なぜ人口を数えるのが神の怒りの結果なのかは説明がない。民数記でカナン到着前の二度の調査が記述されているし、実行したのはモーセで、どこにも悪いこととは書かれていない。ただ、古代国家が人口調査をする目的は徴兵と課税なので、民衆には不人気だったろうし、その後に天災でも起これば、神が怒っており、人口調査もその結果だと主張する者が現れる。この時には直後に疫病が流行し、たしかに神の怒りだといわれた。ただし疫病がついにエルサレムを襲おうとした時、天使が遣わされて止めたという。

サムエル記二24章16節:主の御使いはエブス人アラウナの麦打ち場の傍らにいた

 天使が降り立ったアラウナの麦打ち場には、やがてソロモンの神殿が作られることになる。神殿に権威を着けるため、ダビデの人口調査の話は、粉飾されてるのかもしれない。


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 返信フォーム (この記事に返信する場合は下記フォームから投稿して下さい)
おなまえ
Eメール 非表示
タイトル
メッセージ    手動改行 強制改行 図表モード
URL
パスワード (英数字で8文字以内)
プレビュー

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No パスワード

- Web Forum -