NHK大河ドラマ「太平記」大全

★おしらせ★
2010年3月8日より、大河「太平記」登場人物を全網羅した「南北朝列伝」を正式公開してます。今後もデータは追加します。
こちらからどうぞ。


原作:吉川英治(「私本太平記」より)
脚本:池端俊策・仲倉重郎
音楽:三枝成彰
演奏:Cカンパニー テーマ音楽演奏:NHK交響楽団 テーマ音楽指揮:大友直人
監修:永原慶二・尾崎秀樹
風俗考証:鈴木敬三 建築考証:平井聖 文書考証:白井孝昌 
殺陣:林邦史朗 芸能指導:猿若清方 芸能考証:野村耕介 衣装考証:小泉清子
乗馬指導:日馬伸 題字:大鹿洋江
協力:栃木県足利市・群馬県太田市
語り:山根基世アナウンサー
(以上は毎回冒頭に表示されてました)

★総論★

 このコーナー、なんとなく成り行きと勢いで作ることになっちゃったもので…その名の通り1991年のNHK大河ドラマ「太平記」を徹底して味わい尽くすという趣旨のコーナーであります。
 いろいろなところの歴史に首を突っ込んでいるわたくし「徹夜城」ですが、実はその中の軸の一つに日本の南北朝時代があります。この時代については小学校時代に足利尊氏の伝記漫画(伊東章夫氏著)を読んで以来という年季の入りようで、とにかくどっぷりと浸かっていると言ってもいいぐらい。考えてみるとなんで自分の歴史サイトに南北朝のコーナーが無いんだろうという思いはありました(あ、「しりとり」の第一回は尊氏ですけどね)。ただなにぶんにも巨大な世界ですから専門コーナーを作るにも手の着けようがないというところだったのです。
 そこを大河ドラマ「太平記」を軸にやってみようというアイデアがわいてきて、一気に実現させてしまったわけです。歴史映像オタクの趣味も満たせますし一石二鳥(笑)。広く時代劇ファン・俳優ファンの方々にも楽しめるコーナーにしてみたいな、と思ってます。

 すでに放送されたのは10年も前になる大河ドラマ「太平記」。このドラマはそれ自体に「歴史的価値」があると僕は思っています。長い大河ドラマの歴史において素材に取り上げられるのは源平、戦国、幕末と動乱の時代がどうしても多いわけですが、動乱が長く続いた南北朝時代は長い間とりあげられることがありませんでした。決して無視されていたわけではなく、「候補」には何度と無く挙がったものの、結局敬遠され実現に至らなかったわけです。 その敬遠の理由ですが、当時のプロデューサー・高橋康夫氏が雑誌「歴史読本」で語っています。

 一つには複雑な離合集散を繰り広げる人間群像を整理して視聴者に提示することの困難性。これはもう戦国ものの比ではないのは確かで、南北朝時代というのは誰が敵やら味方やら分かりにくい裏切りまくりの人間ドラマが各所で展開されます。中心人物の尊氏一人をとっても幕府を裏切り、天皇を裏切り、弟や息子と戦う(南朝に降伏したこともある)。 そんな状態が武士・公家・僧侶・悪党・皇室も含めた様々な勢力により、東北から九州まで全国を舞台に展開されるわけで、作り手が怖じ気づくのも無理はないのです。ちなみにこの記事では「ちゃんと描いたら二年はかかる」という言葉も出てきます。さらに言えば「初もの」ということで時代考証等で手間がかかるという問題もあったでしょうね。

 もう一つが皇室関係と歴史評価の問題。実のところこれがそれまで敬遠された大きな原因だったように思えます。「南北朝」は皇室が二つに分裂した異常な時代であり、「南北朝正閏論」は明治時代以来デリケートな問題でした。戦前においては南朝が正統と明確にされ、後醍醐天皇とそれに忠節を尽くした楠木正成など南朝の武将が神格化される一方で、北朝系の足利尊氏らは「逆賊」のレッテルを貼られて徹底的に悪役扱いされたのです。戦後になってその辺りの評価は基本的に自由になりましたが、依然として戦前同様の評価をする人々がいるのも事実。「南北朝」は下手に描くとある方面から圧力や攻撃を受ける可能性が捨てきれなかったわけで、NHKとしては敬遠したくなるのも無理はなかった…とは言えます。

 実はこの記事でプロデューサー氏も「ある小説家はまだ十年早いとおっしゃる」と明かしています。それが誰なのかも興味のあるところですが、この記事を読んでいるとNHK上層部も決断までに色々と悩んだのは確かなようです。そんな状況の中で「十年待てばできるというものでもない」と機会をモノにして企画実現に持ち込んだこの人の「太平記」への思い入れと意欲と実行力には称賛の声を惜しみません。「今」というのは一つには現実の国際情勢が激動期を迎えていたと言うこともあったでしょう。大河ドラマ「太平記」の冒頭は「ベルリンの壁崩壊」の映像から始まるのです。

 さてようやく実現にこぎ着けた大河ドラマ「太平記」でしたが、いざ製作と決まったら大河ドラマ史上まれにみるスケールの態勢が組まれました。この意味でも大河ドラマ史上でも指折りの大作と言えるのではないでしょうか。
 まず出演者の豪華さ。何をもって豪華の基準とするかは難しいところですが(大河は基本的に毎年豪華なので)、私のひいき目を差し引いても大河史上トップレベルの豪華さだと思います。主演の真田広之から始まってメインキャストが次々発表されていったときのワクワク感ったらありませんでした。藤夜叉役が最後まで発表されなかったんですが、それに「宮沢りえ」と来た日にゃー個人的にはもうゲップが出そうなほどの豪華キャストになってしまったという印象でした。若手アイドルから中堅、ベテランまでよくまぁ揃えたもんだというキャストの詳細についてはこのコーナーでたっぷりとご賞味下さい。マニア向けに表示の順番まで忠実に再現しておりますので(笑)。ついでに無名時代のあの人この人が発見できるという楽しみもあります。

 時代劇の華である美術セットや戦闘シーンも豪華絢爛。足利市に建設された大河史上最大の市街オープンセットで撮影された京都・鎌倉の日常風景や市街戦は「太平記」ならではの見どころ。有名な千早・赤坂城の攻防戦もバッチリ描かれ、戦国ものなどの戦闘シーンとはひと味違う楽しみがあります。まぁ戦闘の見どころは前半に集中していて後半は使い回しが多くなるんですが…戦闘がとにかくやたらに多い「太平記」ならではの事態と言えましょう(笑)。

 原作は吉川英治晩年の大作「私本太平記」ですが、あくまで下敷き、参考にしたという程度でストーリーはほとんどオリジナルと言って良い展開です。池端俊策さんがメインとなったシナリオは尊氏を中心に登場人物を整理し、それらの間の愛憎をじっくり描くという手法で複雑怪奇な南北朝時代に一本軸を通しており、それなりに成功したかな、と思ってます。そういう愛憎ドラマに時間をかけたために切り捨てられていった南北朝の魅力もいろいろあるんですが、ドラマとしてはやむを得ないところかも。なにせ南北朝は誰もやったことがないわけで、「試行錯誤」という印象を受けるところもありますね。とにかく足利尊氏個人の目から見た南北朝動乱、という性格が強いドラマだとは言えます。

 さて当コーナーはドラマの全49回の各回ごとにキャスト、ストーリーを詳細に紹介し、当時観た人も、はたまた観ていない人あるいは総集編しか観ていない人も等しく「観た気分」にさせてしまおうという狙いで作成されています。そして南北朝マニア・歴史映像マニアの私が解説という名のおしゃべりをつけることで、徹底的に「太平記」をしゃぶりつくしていただきましょうと言う次第でして。
 書いているこっちが一番楽しんでるんですが(笑)、ま、読んだ方もお楽しみいただければ幸いです。
 


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