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投稿時間:2017/03/04(Sat) 23:05
投稿者名:倉持弾
Eメール:dan@citrus.ocn.ne.jp
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タイトル:
『青色カタログ』『空の防御』についてご意見をお聞かせください。
・このコーナー、いろいろと貴重な情報があり、楽しみに拝見しています。今回、管理人が「訳者」の保篠龍緒自身の「創作」であろうとしている 『青色カタログ』『空の防御』(1920年に新青年に連載)について、研究家のみなさんのご意見をお聞きしたいと思ってパソコンに向かいました。
 このふたつの作品について管理人は、保篠の創作だろうとしながらも、住田さんの著作を基に、「保篠龍緒が作者のモーリス・ルブランに頼んで書いて貰った可能性が全くない訳ではない」としています。 例えば次のような可能性は皆無でしょうか?
 保篠が、「日本人の登場するルバン物を日本人のために執筆して欲しい。もし多忙で難しいようなら、自分は小説も書くので協力はできる」とルブランに依頼した。ルブランは、「多忙で難しいが、もしあなたが書けると言うなら、私との共作、あるいは私が協力したというかたちで、日本国内で発表するのは構わない」と返事をした。
 保篠は自分で『青色カタログ』『空の防御』を執筆し、ルブランに原稿料も印税も払ったので、筋は通したということで、戦後もルブランの作品であると主張していた。
 私が保篠がルブランと相談していた可能性を考えるのは、なぜこの時期に保篠が、わざわざ創作作品を「ルパンシリーズ」と騙って発表したのか、今ひとつ理解できないからです。全くの捏造をしていたというなら、志らとりさんが紹介していた『爆弾』でも同じように勝手にルパンを登場させて大活躍させればよかったはずだと思います。戦後、『刺青人生』などの小説に勝手にルパンを登場させたのは、ルブランも亡くなって新作も出ないし、旧作の再刊だけだと収入も限られてくるので、強引にルパン物の新作をつくりあげる必要があったという経済的事情があったと思います。
 ただ1920年の時期に、わざわざそんな創作を行う必要があったのか、疑問に思う次第です。もし事前に両者に日本人の登場するルパン物についてやりとりがあったとすれば、ルパン物に関わる日仏交流として非常にロマンをかきたてられますし、小説やドラマの材料にもなりそうな気もします。ルパンに詳しい方がたくさんおられますので、
 「いや。両者の間で書かれた手紙は全て保存されているが、そんな相談事を書いた手紙は見つかってないから、絶対にありえない」
 「保篠は捏造の常習だったので、別に驚くことではない」
など御教示いただければ幸いです。
 私はロマンの可能性が少しでも残っていればと祈るような思いです。

投稿時間:2017/03/05(Sun) 18:43
投稿者名:志らとり
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『青色カタログ』『空の防御』についてご意見をお聞かせください。
>『青色カタログ』『空の防御』(1920年に新青年に連載)について。
>  このふたつの作品について管理人は、保篠の創作だろうとしながらも、住田さんの著作を基に、「保篠龍緒が作者のモーリス・ルブランに頼んで書いて貰った可能性が全くない訳ではない」としています。
>  保篠は自分で『青色カタログ』『空の防御』を執筆し、ルブランに原稿料も印税も払ったので、筋は通したということで、戦後もルブランの作品であると主張していた。
>  私が保篠がルブランと相談していた可能性を考えるのは、なぜこの時期に保篠が、わざわざ創作作品を「ルパンシリーズ」と騙って発表したのか、今ひとつ理解できないからです。全くの捏造をしていたというなら、志らとりさんが紹介していた『爆弾』でも同じように勝手にルパンを登場させて大活躍させればよかったはずだと思います。

『爆弾』について。これは現在『オルヌカン城の謎』の訳題で邦訳が出版されている作品のどうやら元版による抄訳です。しかも現行譯と比べると最初の二章しか譯出されていません。戦前でも保篠龍緒氏は『女探偵ドロテ』『プチグリの歯』『赤い輪』『ゼリコ公爵』などとLupinの登場せない作を登場せない状態で譯出しております。従って、「捏造の常習」というのはあたらないし、非礼であろうと思います。
〉戦後、『刺青人生』などの小説に勝手にルパンを登場させたのは、ルブランも亡くなって新作も出ないし、旧作の再刊だけだと収入も限られてくるので、強引にルパン物の新作をつくりあげる必要があったという経済的事情があったと思います。

 経済的事情は多分あったと想像されますが、それは保篠龍緒氏が「公職追放」となったという事情を顧慮する必要があるかと思われます。「公職追放」となると確か3人以上の会合に出席する事すらできず、又、占領軍が行って居た検閲にも公職追放者の文章はヨリ一層の厳しい眼でチェックされたろうと思われます。江戸川乱歩の友人でもあった水谷準も公職追放になり中々解除されなかったようで、乱歩は実質的に援助をしていたのではおもわれる節があります。(仏蘭西文が讀めないので讀んで貰って居ると云う事ですから、多分そのお礼としてそれなりのものを出したのではと云う事です)乱歩自身も公職追放だったのですが、町内会の役員程度では東京都に解除を申請したらあっさりと解除されたようです。(「探偵小説四十年」参照)
又、『赤い蜘蛛』の発表された雑誌も顧慮する必要があるかと思います。『探偵倶楽部』です、これはどうも探偵雑誌としては少々格が落ちるものだったらしいです。先日、ネットでその掲載内容を調べたら玉石混淆の感が強く、保篠氏よりも雑誌社がルブランならルパンにして呉れないと讀者がついてこれない等と云ってルパンものに改作させた可能性もあります。一度こういう事をしてしまうと、当時は未だ改竄という事に対して戦前流の考え方が支配的だったので、『寶石』誌も「ぢゃうちにも」となったのではないかと想像されます。実はその後、出版協同社から「全集」を出すときに、その改竄を直せば良かったのですが、多分多忙なのか、改変を失念したのか版元の要望だったのかで改竄した儘の訳が出て仕舞ったのだろうと思われます。
>  ただ1920年の時期に、わざわざそんな創作を行う必要があったのか、疑問に思う次第です。もし事前に両者に日本人の登場するルパン物についてやりとりがあったとすれば、ルパン物に関わる日仏交流として非常にロマンをかきたてられますし、小説やドラマの材料にもなりそうな気もします。
 これに関しては、『ルパンの巴里祭』とでもするようの仮題の作をルブランに依頼しており、ルブランも「非常に難しいが兎も角やって見る」と云う意味の返事をしているとの事です。結局、これが出来なく日本側から、代案と出されたのが、この二作品という可能性は捨てきれません。そうなると、多分、ルブランに名前料位は払ったのでしょう。
多分、保篠氏は当時の日本では小説でも代作は珍しくなかったらしいので、その意識で代作をした可能性はあります。

なお、この二つの短編は、戦後の児童向けの叢書にも、児童向けに文章をやわらげたものが入って居ます。

投稿時間:2017/03/05(Sun) 21:17
投稿者名:倉持弾
Eメール:dan@citrus.ocn.ne.jp
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Re: 『青色カタログ』『空の防御』についてご意見をお聞かせください。
いろいろと貴重なことを教えていただきありがとうございます。
 わたしは最近、『青色カタログ』『空の防御』を戦後の全集で読みましたが、まったくルブランに無断で創作を掲載していたのはちょっと考えにくいので、なんらかのかたちでルブランに提案して了承を得ていたのではないかと想像しました。
 全集ではこの二作品について、作者の言葉として「雑誌に掲載されたもののようである」と曖昧なことを書いているのも、意味浸透ですね。 わたしは、保篠自身は、なんらかのかたちで「ルブランの認可を得ていた」と考えていたと信じたいと思いますし、今後、思いがけないことでそうした裏付けが発見されるといいのだがと思います。
 全集には、保篠が日本の新聞社のフランス支局の記者に頼んで、直接、ルブランに書いて貰ったという略歴も写真で掲載されていました。ルブランに直接、あるいは文通のかたちで出会っていた日本人は、保篠のほかにもいるのでしょうか。

投稿時間:2017/03/06(Mon) 16:49
投稿者名:志らとり
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『青色カタログ』『空の防御』に関連して
>  全集ではこの二作品について、作者の言葉として「雑誌に掲載されたもののようである」と曖昧なことを書いているのも、意味浸透ですね。
>  全集には、保篠が日本の新聞社のフランス支局の記者に頼んで、直接、ルブランに書いて貰ったという略歴も写真で掲載されていました。

ルパンの全集は、戦前戦後に繰り返して出版されております。戦前のそれは平凡社(菊半截)、改造社(四六判、拙架)、平凡社(菊半截、前回の増補版らしい)です。
戦後のものは当方が承知している丈で、日本出版協同版(B6、全25冊)、鱒書房(新書版、全25冊)、三笠書房(新書版、全25冊)、田園書房版(新書版、多分全25冊)、三笠書房(出し直し、新書版、全25冊)、日本文芸社(新書版、当初全25冊といっていたが結局全20冊)とあります。
どうやら紙型が譲渡されたらしく、新書版のものは、訳者序文や各章の章題の部分は別として、鱒書房版と日本文芸社版と数箇所抜き取りで比べた処、本文部分は同じいと思われました。ただ、口絵の寫眞などは異なるようです。出版協同版と新書版とでは当然組み直しがある上に正字と新字との違いがあります。
全集と仰っていますが、どの版でしょうか?当方には日本出版協同版の後刷と鱒書房版と日本文芸社版としかないので、他の版にしかない寫眞版という事もあるので、版元と刊行年とお示し下さると幸いです。

ルブランに直截、逢った日本人と云うのは俄には名前が挙がりませんが、当時の在佛日本大使館員は逢って居る可能性がありますね。保篠龍緒氏が朝日新聞社に居た時に、ルブランにルパン物の新作を依頼するのですが、確か、当時の在佛日本大使館にその仲介を頼んだと記憶して居ますので。

投稿時間:2017/03/06(Mon) 21:51
投稿者名:倉持弾
Eメール:dan@citrus.ocn.ne.jp
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Re: 『青色カタログ』『空の防御』に関連して
 情報をありがとうございます。
 僕が古本屋で入手したのは三笠書房から1959年8月の奥付がある初版本です。冒頭の訳者のはしがきにも「1959年8月」とあります。
 タイトルは『ルパン全集23 セーヌ河の秘密 ルパンの告白2』で『ルパンの告白2』にあたるのが『青色カタログ』『空の防御』で、ほかには収録されていません。
 はしがきではこの二作品について「第一次世界大戦におけるルパンの活躍に『金三角』『813』『虎の牙』があるが、この二作品ではルパンはドイツのスパイの防犯隊長として、フランスを危機から救う愛国者として描かれている。雑誌に掲載された作品のようである。この二作品で取り上げられた暗号書や暗号方法は、当時、実際にドイツが使用したものである(要旨)」とあります。表紙カバーの中綴じの部分に、先回、お話ししたルブラン手書きの略歴が掲載され、略歴の書かれた紙も写真で紹介されています。先回読売新聞と誤ったことを書いてしまいましたが、実際には「朝日新聞パリ支局長・重徳洒水氏(変換できませんでしたが、西は実際は四の字です。)を介して書いて貰ったとあります。いつのことだったかは書いてありません。
 なにかご参考になれば幸いです。

投稿時間:2017/03/07(Tue) 00:37
投稿者名:志らとり
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タイトル:
三笠版全集の旧版
>  情報をありがとうございます。
>  僕が古本屋で入手したのは三笠書房から1959年8月の奥付がある初版本です。冒頭の訳者のはしがきにも「1959年8月」とあります。
>  タイトルは『ルパン全集23 セーヌ河の秘密 ルパンの告白2』で『ルパンの告白2』にあたるのが『青色カタログ』『空の防御』で、ほかには収録されていません。

新書判のルパン全集では、「セーヌ河の秘密」と「ルパンの告白2」とがセットになっています。前者は「バール・イ・ヴァ荘」です。
序文は、三笠書房版の旧版でも鱒書房版と異なっていると云う事が判りました。有難う御座いました。
前回、在佛日本大使館と書きましたが、朝日新聞社巴里支局長・重徳泗水氏に依頼しての伝聞の誤りかも知れません。何れにせよ、重徳氏或いはその命を受けた人がルブランの下に原稿依頼にとんだ可能性はあります。