モノレールはのんびりと…
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よく考えてみれば旅コーナー、前に更新したのは昨年3月。かれこれ10ヶ月放置され、存在自体忘れ去られたという見方さえある。今年になって1月10日、多摩都市モノレールの立川北−多摩センター間が開業する、という話を聞いた私は営業運転開始から一夜明けた1月11日、早速乗ってみることにした。高校野球は3月までないし、たまにはこっちのネタも書こうかと思ったわけだ。
新宿から橋本行きの京王線特急に乗り、京王多摩センター下車。そこから少々歩いてそれ自体がモノレールのような多摩都市モノレール、多摩センター駅に行った(写真上)。モノレール開業を盛り上げようと言うのか、地元の商工会がイベントなどやっていた(写真左下)。1日遅れで客足は、まばらだったが。
多摩都市モノレールは多摩地区を南北に結び、将来的には環状に結ぶ足として建設が計画され、1986年に東京都や鉄道始め様々な会社が資金を出し合い、創設された。そして1998年に立川北から上北台までの区間で営業運転を始めた。今回の多摩センターまでの延長で16キロに及ぶ路線となり、多摩地域を本格的に南北に結んだわけだが、問題は山積している。まずは工事費。2000億円かかったなんて話しもある。おまけに周辺の開発も進まず、北側の利用者は当初見込みの半分ほど、98年度だけで25億円の赤字を出したと言われている。都や会社は今度の延長で利用客は5倍に増え、5年ほどで黒字に転じる、と明るい見通しを立てているが、どんなもんだか。北側ですでに見当違いをやらかしているだけに信用しがたい。東京湾アクアラインの様なことになりかねない、という危惧はTBSやNHKのニュースでも指摘していた(片や日テレは明るいことしか言ってなかった。見方の違いかね)。
下に挙げた2冊の参考文献の中で、著者の川島令三氏は当時建設中だったこの路線について、いろんな事を言っている。
まず第一に、スピードが遅すぎる、という。多摩センターから上北台まで16.2qで所要36分。表定速度は26.7q/hにすぎず、川島氏に言わせれば、「バスより少し速いくらいでは役に立たない」事になってしまうのだそうだ。第二に駅が全般に既存の鉄道駅から離れており(西武拝島線と交差する玉川上水駅は唯一の例外、と書いてあるが)、乗り換えが不便であると指摘している。言われてみると右の写真を見ても分かるように、多摩センター駅も入口同士は距離がある。ホームからホームへは10分くらい見た方が良いかも知れない。これで客は乗るのか、という疑問が提起されていた。さらに軌道の保守が困難、非常時の脱出が出来ない、車両のデザインも側面は良いが前面は真っ黒で感じが良くない、などなどさんざんに書いている。デザインはあんなものでいいと私は思うのだが。
12時26分発の列車で出発。ご祝儀といおうか、そこそこ客は乗っていた。座席がほぼ埋まる、といった程度だが。1駅間の距離は結構短い。概ね1q以下。最長の甲州街道−柴崎体育館間ですら1.5q(営業キロ)しかない。沿線は大学が多く、各大学が自分らの名前を入れろ、と要望したため、「大塚・帝京大学」「中央大学・明星大学」と、大学を強調した駅名が続く(川島氏はこれについても『中央・明星大学としたり、前の字を入れたりすればいいのに』と注文を付けているが)。しばらくして最初の乗換駅、多摩動物公園。駅前広場は共通だが、こちらは高架で京王は地上駅。楽な乗り換えではない。次の乗換駅、高幡不動はさらに悲惨だ。確かにあんなに距離があっては乗換駅とは言えない。
さらに進んで立川南に到着。確かに立川駅から少し歩かされる。車内放送ではここを乗換駅として紹介していた。400m先に立川北駅があり、立川駅との距離はさほど変わらない。おそらく上北台方向から来た場合はこちらが乗換駅として放送されるのだろう。
多摩センター発車から36分。列車は終点上北台に到着した。開業翌日のレポートをやっているらしく、「MXテレビ」とか書かれた腕章をつけたテレビスタッフが撮影をやっていた(写真左上)。駅を出た私はまた余計な運賃を払うのもアホらしいと、玉川上水駅まで歩いていった。途中で何度か立ち止まり、写真を撮っていたにもかかわらず30分とかからなかった。1区間や2区間程度で使うのは明らかに損だ。玉川上水から西武で高田馬場まで行って帰路に就いたが、つくづく「電車は速い!」と実感した。比べてみて初めてモノレールの遅さが分かった。
ただ私は川島氏のような全面否定をする気にもならない。何もスピードだけが旅じゃない。袴座式でまわりの壁はなく、しかもセミクロスで辺りを見渡しやすいから、多摩の整備された森林や立川周辺の市街地、開発中、あるいは昔ながらの団地、住宅地といった風景をのんびりと眺めることができる。大学が周辺に多いことを考えると、「ゆりかもめ」のような利用客がでてそれなりに(東京都などが期待する形ではないにしても)観光スポットとしての価値が見いだされていくかも知れない。今後も大いに注目していきたい。
参考資料
川島令三 著 | どうなる新線鉄道計画 東日本編 | 1993年 産調出版 |
川島令三 著 | 全国鉄道事情大研究 東京西部・神奈川編1 | 1998年 草思社 |
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