「飲みてェ〜!!」*冬バージョン*

次のストーリーを、無対象(本物を使わずに・・・ですよ)で無言でお芝居のように演技してみてください。某ドリンクの砂漠のCMとはなんの関係もありません、念のため。

「飲みてェ〜!!」*冬バージョン*

起:あなたは「寒いィ〜。(+_+)゛」と、ガタガタ震えながら歩いている。
承:ドリンクの自動販売機に目がとまる。「暖かい缶コーヒーを飲もう。(^o^)」いくつかの商品見本の中で一つのドリンクに目が止まる。ポケットから小銭入れを出して120円を自動販売機のコイン投入口に入れる。ボタンを押す。ガラガ〜ン・ドン!上から下へ缶が落ちる音。
転:取り出し口から缶を取るが、熱いんですっ!!片方の手にじっと持つことが出来なくて、右手や左手に持ち替えながら、心は「早く飲みてェ〜(*_*)」。
結:さあ、飲みたいのに飲めないとき、あなたならどうするでしょう?手袋を出してきて持てた人もいるでしょう。また、ポケットに入れて歩く人もいるでしょう。何か、結論を考えてください。

さて、何をどうすればいいのか、皆目見当がつかなかった人もいるでしょう。私からのおすすめは、寒い日に、熱い缶コーヒーを実際に買いに行くことです。実在の物を使って、細かく自分の目線、気持ち、手の動きを分析して、それを無対象でもう一度やってみることです。


観察ポイント

1.自動販売機......客席側にあることにする。これが芝居とパントマイムとの大きな違い。芝居の場合は大道具として、自動販売機を舞台に置くので客席の正面に置くと役者が見えなくなるが、パントマイムでは無対象、つまり透き通っているため、自動販売機の向こうにいる役者が見えている。つまり、役者は客席に正対して演技することになる。

配置イメージ図

2.商品見本を順番に見ていく......自動販売機の前に立ち、すぐに決める人は少ないだろう。「どれにしようかな」と目線で追う。決まると目の動きが止まる。迷っている時と決まった時では気持ちはどう違うか、自分の心を観察する。

3.お金を取り出す・投入する......さいふはどこに入れているか?開けるのはスナップか、ファスナーか?中の小銭はよく見えるか?お金をどの指でつまむか?100円玉1個と10円玉2個を手に握ってからコイン投入口に入れるか、それともさいふから1個ずつ入れるか?

4.ボタンを押す......決めてはいるものの、ボタンを押す時ってちょっと決心がいると思いません?決断したさわやかな心でボタンを押す。押す・離すをくっきりと表す。

5.ガラガ〜ン・ドン!......ちょっとオーバーだが、缶が自動販売機の中を通る音に目を合わせてみる。そして、ドン!と取り出し口に落ちた音で、目を止める。

6.取る......取り出し口にはフタがあるので、それを上げる。ひざを少し曲げて手を入れる。缶を持つ。「アチチチ・・!」あなたは熱い缶をしっかり握れるだろうか?リングを上げられるだろうか?

7.飲みたい気持ち......これからが一番大切なところ。「アツイ」「飲みたい」「飲めない」このからみあった気持ちを交互に早いリズムで表していく。気持ちをクレッシェンド(だんだん大きく)していく。これが「飲みてェ〜!!」という気持ち。最後に自分の考えた結論で終わる。


感情言語の台本

これから書く台本は、先程の「飲みてェ〜!!」を演じる時に演者が何を考えているかという、ウラを見せるものである。先程のように「〜をする」という風に覚えると、ストーリーの順序を覚えて手や身体が動くだけで、感情表現に結びつかない。こういう風に覚えると感情が出しやすいという目安である。

「飲みてェ〜!!」*冬バージョン*

ウゥ〜さむゥ・・・。ガタゞ~~ガタゞ~~。あったかいものがほしいなあ。あっ、ホット・ドリンク、いいなあ〜!えーと、どれがいいかなあ。ホット・オレンジかあ。ちょっと甘いかな?お茶・・・家に帰ったらお茶ぐらい飲めるしなあ。う〜ん、いつも同じだけど、コーヒーが無難かな。よし、決めた。お金は・・・と。100円、あった。あと20円。10円玉、ひとつ、ふたつ。投入口は・・・あ、ここ。チャリン・チャリン・チャリン。コーヒーでいいよな!!よし、(ボタン)ガラガ〜ン・ドン!(目で追う)さあ、コーヒーが飲めたら暖まるぞ〜。ヨイショ。アチィー!持ってられないヨ。アチ・チ・チ。プルリングを上げないと飲めないじゃないか。アチー!うわぁ、どうしよう?しかたないか。ポケットに入れて手だけでも暖まろう。まだ、ちょっとさむいなあ。


友達に見せる

何度も練習して心からの自然な動作になるようになったら、友達に見てもらいましょう。ストーリーを言葉で説明せずに、パントマイムだけでストーリーやその時々の気持ちをわかってもらえたら、大成功!わかってもらえなかったら、どこがわからなかったか聞きましょう。言い訳けや負け惜しみは言わない。素直に聞く態度が見えないと、次から見てくれなくなります。批評はいつでもありがたく受け止めるように。批評をメモして、練習に役立てましょう。

観客との共感

絶対人に伝えなければいけないことは、「あなた」の気持ちです。どれほど寒いか、どれほど暖かさが欲しいか、それなのにじっと持っていられないもどかしさを演者が感じていると、自然と顔の表情、身体の形、手の動きなどに反映されます。それによって、見ている人の体験と結びつき、見ている人の共感につながります。作られた表情や動作ではスト−リーがわかるという段階で止まり、共感には至りません。「感じる」「イメージを持つ」「素直に見せる」ということが一番大切な事です。

さらに発展させて

この例題で気をよくしたら、次に「飲みたい物」「なぜそれが飲みたいか」「あなたの性別、年齢、職業」などを変えてみてください。例えば、

◆酔っぱらいがお酒を飲みたいのに、手がおぼつかずなかなか口にコップが当たらないので、「“飲みえェ〜!”」

◆子供があとで飲もうと冷蔵庫のすみっこに隠しておいた缶ジュースがなくなっている。冷蔵庫のあちこちを探しても見つからない。「誰が飲んだの!」

◆ワインを飲もうと思ってコルク栓を抜こうとしているのに、なかなか抜けない。そのうちコルクがボロボロに割れてしまって、グラスに注ぐと細切れのコルクが浮いている。茶こしでワインを注ぐ・・・。「トホホ」

などなど。あなたのアイディアで面白いストーリーを考えてください。

【グループ練習】
5〜6人の仲間がいれば、「飲みてェ〜!」を「飲み物あてクイズ」というゲームにもできます。
一人一人が自分の好きな飲み物をイメージし
1.それはどういう時に飲みたくなるか
2.どこで手に入れるか(家の中だったらどこにおいてあるか)
3.作って飲むものだったら、道具も無対象で使ってください。
4.飲むまでにどういう過程が必要か(お湯を沸かして作ったり、氷を入れたりする過程を普段どおりに描きます。)
5.飲んだ時の気持ち
などを短くストーリーにまとめ、パントマイムで仲間に見せます。見てる人たちは飲み物を当てます。
ジェスチャーゲームではないので、「ウィー:酔っぱらったまね」「スキー:スキーですべるまね」・・・ウィスキー、「あたり〜!」なんて、やってはいけませんよ!


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