地下球場 小説・プロ野球(2)

佐野 洋

角川文庫 1982. 2.25 初版発行 \380


 10番打者に続く小説・プロ野球の第2弾。
 実際のプロ野球に絡んだ3つの事件について書かれた作品ですが、その裏には前作同様「桜機関」の影が見え隠れしています。

 まずは巨人の川上監督の持つ黒い鞄の中身に関わるお話。ある探偵がプロ野球コンサルタントなる商売を始め、そこに週刊誌の記者(を装った人物)から、川上監督の鞄の中身を調べて欲しいという依頼を受けます。あらゆる手段を講じて、遂にその鞄を手に入れるのですが、その中には巨人選手の特徴や弱点を記した最高機密とも言えるノートの他に1通の手紙がありました。
 その手紙こそが、桜機関(と思われる)から川上監督に宛てられた「今年は優勝しない方がいい」という内容の手紙。そのときの戦力で優勝したとしても、将来的に決して喜ばしいことではない、優勝を逃すことで体質改善を図り、爆発力を持ったチーム力を備えるきっかけにせよ・・・というような内容でした。
 川上監督としては、まさに我が意を得たりという意味で鞄に入れて常に持ち歩いていたわけですが、桜機関としては、本当にこの忠告を受け入れるかどうかわからない、それなら巨人の最高機密を手に入れ、他球団に渡すことで巨人優勝を阻止しよう(あくまでも将来的なプロ野球人気拡大のために)と意図していたという話。

 第2話は外人選手獲得に関するお話。当時はまだ外人選手獲得に関する日米間のルールも決まってなかったという状況で、それでも外人選手のブームが起こっていたという時代。
 (桜機関の人間と思われる)ある人物が、現役大リーガーに対して色仕掛けで離婚問題を起こさせ、その慰謝料を肩代わりすることで日本に連れてこようとします。
 結果的にこの作戦は失敗するのですが、これがきっかけで、日米間の協定が突然作られることになったという歴史的事実に繋がります。

 第3話は、マスコミに流れるデマと選手のスランプとの関係についてのお話。ある高校で起きた事件をきっかけにして、実際のプロ野球ではどうなんだろうという話に発展するわけですが、長島ほどの選手でも、実はデマやゴシップが流れたときの成績が落ちているというデータが出てきます。そして、このゴシップ記事を意識的に操作しているのが「桜機関」だったという展開。

 作品的には30年以上前のものですが、現代にも通じるテーマが書かれていると思いました。決してここに書かれている桜機関は空想の団体ではなく、また実際には1つの組織ではないにせよ、いまのプロ野球のいくつかの事件に、このような裏の存在、意識が流れているのではないか?そう思わせる何かを持った作品でした。

 「10番打者」もこの「地下球場」も、週刊ベースボールマガジンに連載されていた作品のようです。これだけリアリティがあると、本気にした人もいたんじゃないですかね。野球を知っている人なら、なおさらハマる作品だと思います。

 ・・・野村監督のタイガース監督就任にも桜機関の影が・・・?(^^;;


目次に戻る