殺戮投法

トム・シーヴァー/ハーブ・レズニコウ/戸田裕之・訳

新潮文庫 1999.3.1 第1刷発行 \705(税別)


 本屋でこの本を見つけたときに、もちろん野球絡みの本であることは、すぐわかったのですが、とにかく「トム・シーヴァー」の名前に目が奪われました。「ひょっとして、あのトム・シーヴァー?」って感じですね。
 ある程度の野球ファンなら、大リーグ300勝投手であるトム・シーヴァーはご存知でしょう。そのトム・シーヴァーが推理小説を?と、かなり意外な意表を突かれました。ミステリー作家ハーブ・レズニコウとの共著ということで、実際には原案みたいなものを出しただけなんじゃないかな、と想像していますが・・・。

 内容は推理小説で、ワールドシリーズが始まる前の球場で起った殺人事件のお話です。ワールドシリーズに進出した一方のチームのオーナーが、硬球を頭に投げつけられて殺されるという事件なのですが、このオーナーがとにかく傲慢かつチームの作戦にも口を出すような人物で誰もが恨んでいるような状況です。
 その人物像もそうなのですが、まず最初のページに、こんな記述があります・・・。

 「サミュエル・モーラント・プレイジャー(このオーナーの名前)はついに、ペナントを金で買うことに成功した。」

 う〜む、どっかのオーナーをどうしても思い出してしまいますねぇ。(^^;
 余計な口だしをして、監督、選手に思い通りの試合をさせないで、名監督や名選手を「金の力」で集めてきても、数年の間、勝つことができなかったというところも、どこかのチームと同じですしね。
 あとがきには、モデルはヤンキースのスタインブレナーじゃないかと書かれていますし、実際にもそうなんでしょうが、どうしてもあの人を連想してしまいます。小説を読むときに、どうも映像を思い浮かべてしまうんですが、頭の中でのキャスティングでのこのオーナーは、どうしてもあの人になってしまいました。(爆)

 容疑者は何人も出てきます。とにかく、誰もが快く思っていない人物で、相手チームの首脳陣や選手ですら、このオーナーにクビを切られた人たちがいるわけです。しかも凶器は野球のボール・・・このボールを投げつけて人を殺せる人間となると、かなりの剛速球の持ち主という推理が成り立つわけです。

 ただ、殺人事件があったことなど、なかったかのように、試合はどんどん消化されていきます。オーナーが死んだことで、口出しをされる心配がなくなった監督は思う存分采配を揮ってチームを勝利に導いていきます。
 元々が名監督だという設定の人物ですから、自分の野球さえできれば、多少チーム力が劣ろえようと勝つ野球はできるようです。どうも金で選手をかき集めたと言っても、相手チームの方が下馬評では強いチームだったようですね。ちょっと解せないけど、結局は、あのチーム同様、バランスが悪い集め方だったんでしょうか。プレーオフでは、最終戦まで縺れ込んで、投手陣がヘバッているという状態ではあったようです。(これもオーナーの口だしのせい?)

 試合の展開が詳しく描写されているのですが、この辺りが元プレーヤーが著した小説らしいところですね。ひょっとしたら、作戦の数々もシーヴァー本人が実際にやりたい、監督になったらやってみようと思っていることなのかもしれませんね。


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