魔球

東野圭吾

講談社文庫 1991.6.15 第1刷発行 \552(税別)


 この物語は、春の甲子園大会の一回戦、開陽高校対亜細亜学園の9回裏の場面から始まります。攻めるは優勝候補の大阪代表・亜細亜学園、マウンドは大会ナンバーワン投手の須田武志。スコアは1−0で開陽高校がリードしているものののニ死満塁で一打逆転の場面。
 ここで、須田投手は亜細亜学園の四番打者を空振り三振に仕留めるのですが、この投球を捕手の北岡明が後方に逸らして逆転サヨナラ・・・あれ?打者走者は一塁に走ったのかな?空振りしてバランスを崩して尻もちをついたところまでは描写があるんですけどね。北岡くん、諦めずに一塁送球してれば、振り逃げ、成立してないのでは!?

 とにもかくにも、この一球で開陽高校はサヨナラ負けしてしまいました。そして、この最後の一球が、この物語の鍵になる一球=「魔球」でした。

 この開陽高校のバッテリーの2人、キャッチャーの北岡明とエースの須田武志が殺されるというのが主軸の事件。この2つの殺人事件に、東西電機で起こった爆破未遂事件が絡んでくるというのが、物語の流れです。
 甲子園での開陽高校の試合の一週間前に起こった爆破未遂事件ですが、中盤辺りまで、すっかり忘れてしまっていました。爆弾の構造が図示されていたりして、かなり重要な導入部なんだろうなぁと思っていたのですが、殺人の様がかなり強烈な描写だったので、一体、意味があるんだろうかと思ったんですよね。推理小説で、そんなことはないだろうとは思いつつも、単なる導入部にしか思えなかったのも事実です。まぁ、当然のことながら、重要な位置付けを持った事件だったんですが・・・。

 この物語は、昭和39年を舞台をしていますが、その当時だからこその時代背景もポイントだと思います。ちょうど、ドラフト制度が導入される1年前。須田武志は早くからプロ球団と接触をして、仮契約を迫っていました。実際は、まだプロと接触することが協定違反の時期に正式に書面での契約ができないのですが、それでも契約金を含めた確約が欲しいとプロのスカウトに迫る須田。この1件こそが、彼の出生の秘密(?)や家庭環境、そして何故「魔球」を投げざるを得なくなったのかを如実に表しています。そして、2人が殺された理由も・・・。

 最後はちょっと後味が悪いんですが、全ての伏線が解明されているので、個人的には面白かったですね。武志の死に方、ちょっと無理があったけどね。(^^;


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