五万人の死角 東京ドーム毒殺事件

小林久三

カッパ・ノベルス 1999.1.30 初刷1刷発行 \838(税別)


 どこかで読んだことがあるなぁと思っていたら、実はデイリースポーツに連載されていたもの(1997.11.1〜1998.4.30)なんですね。もちろん、デイリーを毎日買って読んでいたわけではないので、断片的にしか読んでなかったので、詳しい内容がわからず、いろいろと気になるところや疑問点があったのですが、とりあえず通して読めて良かった。(笑)
 連載中は「紅い喪服の女」という題名でした。通して読んでも意味不明な題名だね。改題、正解でしょう。
 断片的に読んでいたときにわかった内容は、東京エレファンツのエースが試合中にマウンド上で毒殺されたということくらい。詳細については、さすがによく理解できませんでした。
 今回、通して読めたことで、ようやく話の展開や、登場人物の人間関係が理解できました。スポーツ新聞って、毎日買って読むほどじゃないんで、連載小説はこうして単行本化されてみないと、面白さってわかりませんね。(断片的でも、ちょっと面白そうだなとは思いましたが・・・)

 この物語の最大の焦点は、いかにして五万観衆の目の前でマウンド上の投手を毒殺したかのトリック解明でしょう。話の展開としては、まずは動機、というわけで、トリック解明編(^^;)の前にいろいろな人間関係が明らかにされていきます。
 その中で、実際にマウンド上の投手を毒殺できるチャンスがあったのは、グラウンドにいる選手たちということになっていきます。読んでいる方も、おそらくそうなんだろうな、と誘導されてしまいますが、それでは犯人はあまりにも短絡的です。勢い、興味は、どうやって毒殺したんだろうという方向に動いていきますが、最後の最後に、毒殺のチャンスの可能性を持つ存在がクローズアップされます。
 決して忘れてはいけない存在なのですが、作中の人物も、そして読者も、つい忘れがちになっている存在が登場するわけです。
 確かにこの人物であれば、この毒殺のトリックは思いつくでしょうし、動機さえ準備してあげれば、謎ときとしては成立しますね。ちょっと唐突な感もなきにしもあらずですし、気にすれば、それ以外にもご都合主義的な設定があるのですが、それなりに楽しめた1冊でした。


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