巨人がプロ野球をダメにした

海老沢泰久

講談社+α文庫 2001.2.20 第1刷発行 \780(税別)


 「週間ベースボール」「東京中日スポーツ」に書かれた著者のエッセイを一部加筆、改筆を加えて編集された本です。
 タイトルはかなり刺激的です(著者も自らあとがきで「ちょっと大袈裟で刺激的」と書かれています)が、ジャイアンツのことだけではなく日本のプロ野球の問題点を指摘しています。
 もちろん、雑誌、新聞にその折々で書かれたものなのですが、それをテーマ毎にまとめてみると、1995〜2000年の間にバラバラに書かれた文章でもまとめて書かれたように思えるのは、やはりその問題点が少なくともこの5年間何も変わっていないことを示しているんでしょう。
 そして、それはいまも解消されているわけではありません。いや、むしろ、プロ野球の世界は変わっていなくとも、プロ野球ととりまく環境が大きく変わって来て(例えば大リーグへの選手の流出や代理人問題等々)、プロ野球の抱える問題点が素人目にもわかりやすくなってきているのかもしれません。

 書かれている内容については、著者の個人的な意見なので、当然のことながら、賛同できる部分、これはちょっと違うんじゃないかと思う部分、まぁそういう考えもあるんだなぁと感じた部分と、様々でした。
 こういう本は、読んだ人がその内容について改めて自分で考えてみるって感じでいいんじゃないかと思うので、ひとつの参考資料という感じで読めれば良いと思います。一つ一つのエッセイは短いので、気楽に読めますしね。

 さて、この本の中で最も意外でかつ共鳴したところを挙げておきます。
 プロ野球の問題点を指摘するいくつかの本に共通して書かれていることがあります。それは、最近は大リーグとの比較で「日本の野球は細かすぎる」とか「大リーグは力と力の勝負をしている」と言った評価で、日本の野球を必要以上に卑下しているものです。
 ただし、この本については、それがなく、「大リーグは管理野球だからおもしろい」という本質を突いた見方が書かれています。個人的に単純な大リーグとの比較論に辟易としていたので、この意見があるだけでも素直に日本の野球批判を受け入れることができました。
 確かに表面だけ見れば、全く違ったものに見える「ベースボール」と「野球」もそのゲームの本当の面白さは同じなのです。大リーグやプロ野球、高校野球でも草野球でもいいのですが、どれを見たってテレビゲームの野球よりはるかに面白い。その中でも、大リーグやプロ野球はその技術や組織力、作戦の妙のレベルの高さや選手個々のバックボーンが広く伝わることによって、さらに面白くなっていると思います。
 そして、それは誰もが決して全てをわかることができないほど奥が深い。そういう奥深さ、本当の面白さは、決して表面だけを見ているだけではわからないし、得られるものでもないと思います。

 野球というゲームの面白さという素材は時代が変わっても決して変わるものではないと確信しています。しかし、この本でも指摘されているように、確かに現在のプロ野球には問題点は多く、ファンにとっても魅力を失ってきているという現実があるのも事実でしょう。制度の問題、マスコミを含めた周囲の環境、機構や選手の考え方など要因を挙げればキリがありません。だからこそ、何をどういう風に改革していけばいいのか、本当の問題は何なのかを見つめなおすためにも、一読する価値はあると思います。


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