小説ジャイアンツ・ナイター

実相寺昭雄

風塵社 1996.12.10 発行 \1854(定価)


 著者の実相寺昭雄氏といえば、個人的にはやっぱり「ウルトラマン」なのですが、この本はタイトルからもわかるように、「ジャイアンツ・ナイター」を素材にしたウルトラマンとは全く関係ない(当たり前!)お話です。
 とはいえ、野球中継の核となる「ジャイアンツ戦」の中継権をめぐる某放送局の内幕モノという感のある本作は、元々放送局出身の実相寺氏が書いているだけあって、一気に読ませる面白さがありました。

 野球の中継権に関する話題は以前から興味があったのですが、この本に書かれている話は本当に生々しい内容です。もちろん、「小説」ですから、脚色はしてあるでしょう。放送局では読売以外の団体名は全て架空のものですし、登場人物もモデルはいるでしょうが、当然、小説内の登場人物でしかありません。(登場してくる各放送局に関しては、実際にどこをモデルにしているかは、すぐわかってしまいますが・・・)

 前半は舞台となるKX局の不手際によるホエールズとのテレビ・ラジオ放送権の一括独占契約の破綻から、社内の権力争いみたいな話が展開されます。
 いまでもそうなのですが、やはり関東の放送局は「ジャイアンツ中心」。ジャイアンツの試合中継ができるかどうかが会社の命運を握っていると言っても過言ではないという状況で、ジャイアンツ主催の試合(後楽園での試合)は読売が握っています。首都圏の放送局にとっては、狙い目がスワローズとホエールズということで、KXはホエールズとの関係がナイター中継の要となっていたわけですが、その立場に慢心していたKX幹部の驕りがホエールズとの関係悪化という形になってしまいます。
 それにしても、「ジャイアンツ・ナイター」という看板のためにホエールズとの優先的な契約に腐心するというのは、やはり日本の放送権のイビツな部分が感じられますね。

 後半はさらにダイナミックな展開。個人的には、この後半の話は現在の流れに続いているようなので、非常に興味深く読み進むことができました。
 新たな展開として、ジャイアンツが各放送局に無理難題を押しつけ、実質的にEF関東ラジオ(モデルはいまのラジオ日本)にラジオの独占中継権を与えようとします。その他の局にとっては、到底受けることができない条件で、ここでも社内でいろいろな意見が交わされるわけですが、最終的にその他の3社の連合によるEF包囲網が結成されます。そしてEF局が独占した後楽園でのジャイアンツ戦のラジオ中継は、EF局の出力が小さいことが災いして、ほとんどの地域で聞けないという事態に陥ってしまいます。
 結局、ジャイアンツ側は折れる形で事態が収拾していくわけですが、その後の3社連合内での駆け引きや、KX社内での動きなど泥臭い話が展開されます。

 KXというのは、TBSのことでしょう。そう考えると、いま現在、TBSラジオがジャイアンツ戦を中心に中継している流れは、この小説に書かれている事情が現在も繋がっているんでしょう。ラジオ日本が「ジャイアンツ・ナイター」の看板を引き継いでいるのも、きっと同様なのだろうと想像できます。
 この小説に書かれている時代の出来事が、現在の中継の基本形になっているようです。

 ところで、この物語では最終的にKX=TBSはホエールズと絶縁状態になってしまいます。そんな関係が時を越えて、今年からはTBSがベイスターズの親会社となるわけです。小説に書かれたホエールズとの関係がどこまで史実に基づいているかはわかりませんが、もし真実に近い流れだったとしたら、去年末のベイスターズの株主問題も含めて、この間の流れも小説になるんじゃないでしょうか。素材として、非常に興味があります。

(2002.2.24記)


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