スタジアム 虹の事件簿

青井夏海

創元推理文庫 2001.4.13 初版 \620(税別)


 5編の短編集という趣のストーリーですが、共通の舞台は、パラダイス・リーグ(パ・リーグ!)の万年最下位球団・東海レインボーズの本拠地レインボーズ球場。タイトルの「事件簿」という言葉通りのミステリーなのですが、実際の事件は球場では起こりません。

 事件に関係する人々が球場にやってきては、レインボーズのオーナー虹森多佳子が、その事件を解決に導いていくというのが、それぞれのお話に共通するスタイルです。事件を解決する人物が、実際の事件現場へ行かずに、そのときの状況を聞くだけで解決していくという、いわゆる安楽椅子探偵ものですね。

 短編集と書きましたが、野球に関する部分を繋げると、シーズンを通した万年最下位球団レインボーズの躍進のストーリーになっています。序盤はいつものように最下位争いをしていたレインボーズは、中盤から徐々に順位を上げ、遂に最終章では優勝決定戦を戦っています。その間に、親会社の社長の座に納まった陰山の球団身売りに関する暗躍なんかもあったりします。
 そのレインボーズの物語に5つの事件が絡んでくるわけです。
 事件のヒントになるプレーが都合よく起こるところは、ご都合主義ですが、そこがこの物語のポイントです。主人公である虹森多佳子が、目の前で起こったプレーから、それぞれの事件の本質を言い当てるところは、多少強引ですが、なかなか面白いんですよ。
 第3話くらいになると、めったにないプレーが出てきたところでネタがわかってきてしまうのはご愛嬌なのですが、ちょっとしたどんでん返しもあるので、楽しめると思います。

 主人公の虹森多佳子のキャラクターも結構面白いです。前年に他界した前オーナーの奥さんにして現オーナー。しかも野球のことは「全く」知らないという筋金入りの野球音痴という設定です。
 野球を知らないからこそ、ふとしたプレーから事件の本質に結び付けてしまうというところは、逆に説得力を感じました。
 結果として事件を解決に向かわせるのですが、本人にはその気がないような雰囲気なところもちょっと異色でしょうね。
 そんな野球音痴の多佳子も、シーズンの最初は、怪我で1年を棒に振る選手の朱村や秘書の色摩の解説つきでスタンドで観戦していたのですが、最終戦ではどうやら1人で観戦していたようで、かなりの野球通になっているような描写になっています。

 また、わかりやすいのはレインボーズ関係者の名前。選手を例にあげると朱村を筆頭に、赤倉、黒沢、金城、白、緑川、紫水・・・面白いのは外人選手のブラウンと、すべて色に絡んだ名前になっているので、相手チームの選手も出てくるのですが、混乱することなく野球シーンは読み進めることができます。

 野球小説としても、推理小説としても、気楽に読めるストーリーだったと感じました。

(2003.1.5記)


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