ビッグゲーム

岡嶋二人

講談社文庫 1988.10.15 第1刷 \563(税別)


 ほぼ2年半前に教えてもらって以来、ずっと探していたんですよ。古本屋や近所の書店、なかなか見つからなかったので、とにかくいつも気になってました。
 おかげで、「殺人!ザ・東京ドーム」みたいな小説を見つけることができたのですが、この「ビッグゲーム」は本当にどこにもありませんでした。
 ところが、今年の正月休みに遂に神戸のジュンク堂書店で発見!
 とにかく、ずっと探していた本なので、さっそく読んでみました。

 東日本アトラスは、ハイテクを駆使した情報収集、早い話が「スパイ行為」で勝ち続け、3連覇を達成しています。
 ところが、4連覇を目指してスタートしたシーズン、そのシステムが思い通り機能せず、結果として最下位に低迷する事態に陥ってしまいます。どうして機能しないのか、その原因から、人が何人も死んでいく事態になり、その事件を追ううちに球界の暗部が明らかになっていきます。

 アトラスのスパイ行為は徹底しています。現実にこんな大規模な情報管理システムを持っている球団はないんじゃないでしょうか。監督直下の組織である「資料課」の人間が、球場内や場外の建物から、相手チームのあらゆる動き(もちろんベンチやベースコーチの挙動、バッテリー間のサインも)を電波によって「オフクロ」と呼ばれるコンピュータ・システムに送り、そのリアルタイムの解析情報がベンチに送られ、その情報を元に作戦がたてられます。
 今は禁止されていますが、試合中にスコアラーからの情報をベンチに伝えるいわゆる「伝書バト」と言われる役割がありました。アトラスは、それをハイテクに置き換えて実行しているという設定です。

 その「オフクロ」のシステムが機能しない理由。それが「オフクロ」の情報を元にして立てられた作戦やバッテリーのサインが相手ベンチに知られているから。つまり、スパイ行為のスパイ・・・ややこしいですが、そういうことが行われていたからなのです。

 物語は3塁スタンドでデータを集めていた資料課員が試合途中に球場の照明灯から落下して死んでしまうところから始まります。その死を資料課の本部である「覗き部屋」のメンバーである秋月課長、佐伯智則、松橋涼子が追っていくうちに殺人事件が起こり、そしてスパイ事件の真実が明らかになっていきます。次々と明らかになっていく新事実や事件が、一気に読ませてくれます。

 ストーリー的に面白いと思ったのは、相手側のスパイの手口を探るために、普段の「オフクロ・システム」で培った方法を使ったりするところですね。スパイのスパイをスパイするためにスパイする・・・みたいな。(^^;
 照明灯から落下して死んだ資料課員が、その試合に撮っていた写真が、この物語のポイントになるのですが、どうしても、この写真にスパイが写っているんじゃないか、とか思ってしまいます。佐伯達も、この写真がスパイ行為のヒントになると考えて行動するのですが、いろいろと新事実が発覚する中で、どうしてもこの写真の謎はわかりませんでした。だから、最後の謎解きでこの写真の真相がわかったときは「やられた」と思いましたね。照明灯からの落下や、それに続いて起きた殺人事件の真相は、この謎が解けない限りわからないでしょう。どのような真相かは読んでからのお楽しみ、ということで。

 野球的にも面白いシチュエーションがありましたね。
 どうしても勝てないアトラスの中で、成績を残している二人の投手の共通点であるとか、捕手のサインを無視した投球をしたら勝ってしまう投手とか。
 実際に勝てないアトラスにも当てはまるのですが、情報に頼った野球の脆さとかも、うまく表現できていたと思いました。

 事件の真相は明らかになりましたが、その後のアトラスをはじめ、この世界のプロ野球はどうなっていったのでしょう。かなり気になるところです。

(2003.1.18記)


目次に戻る