マウンドの死

西村京太郎

光文社文庫 1986.9.20 初版1刷 \380


 「消えた巨人軍」についていた西村京太郎の作品リストに何冊かの野球ものらしき作品名が載っていました。古本屋で全て揃えたのですが、そのうちの1冊がこれ。
 この本は短編集で、タイトルの「マウンドの死」以外に「裸の牙」、「血に飢えた獣」、「二十三年目の夏」、「バイヤー殺人事件」、「わが心のサンクチュアリ」の6編の作品が収められています。

 野球モノは、タイトルでもわかるように「マウンドの死」です。
 二軍で三年間くすぶっていた小野一彦が恋人の草場滋子の一言から頭角を表し、あっという間にチームの中心投手になっていきます。自信なさげだった小野も、すっかり自信を持ち、日本シリーズの先発をまかされるまでになります。
 それと同時に滋子からは心が離れ、チームの後援会長である貿易会社社長の令嬢とつきあうようになり、滋子との別れ話になります。

 よくある話というか、お約束の展開ですね。
 そして、小野が登板した日本シリーズのマウンド上で、タイトル通り、突然死んでしまうわけです。滋子のちょっとしたいたずら(と言っても、小野を自分の元に取り戻そうとした思いからの行動です)が原因で殺人の容疑がかかります。もちろん動機もあるわけですが、最後はそのいたずらが容疑を晴らしてくれるという仕掛けです。

 滋子がいたずらを仕込んだ後、テレビで試合を見ながら、いつその効果が表れるかを、どこかワクワクしながら見守る様子、そして突然、小野が倒れたときの不安、最終的に小野の死を翌朝の新聞で初めて知らされたときの動揺と、滋子の心の動きが非常によくわかります。
 当然のことながら、警察に連行された後は、どうやって無実を証明するのかに焦点が移るわけです。かなり不利な状況からの逆転劇が見物だと思います。
 短編なので、それほど捻ったトリックはありません。それでも、いろいろと考えさせてくれました。

 野球に絡んだお話は「マウンドの死」だけですが、他の作品も面白いですね。西村京太郎の短編ということで、初期の作品と思われるのですが、さすがだと思いました。

(2003.2.2記)


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