ナイター殺人事件

西村京太郎

光文社文庫 1987.9.20 初版1刷 \420(税込)


 「マウンドの死」同様、この本も西村京太郎の短編集です。タイトルの「ナイター殺人事件」の他、「スプリング・ボード」、「優しい支配者たち」、「我ら地獄を見たり」、「素晴らしき天」の5編の作品が収められています。

 文庫オリジナル・傑作推理小説という冠がついていますが、全編を通して「推理小説」という範疇には入らない作品ばかりのような気がします。「優しい支配者たち」と「我ら地獄を見たり」は、個人的には西村京太郎のイメージにない「SF小説」ですからね。

 野球ものの「ナイター殺人事件」にしても、タイトルはバリバリの推理小説だし、そのつもりで読んでいたのですが、なかなか殺人事件が起きない・・・。(^^;
 振りまわすだけが取り柄だったクリッパーズの代打専門の田村が、恋人の日下令子と知り合ってからというもの、いろいろな幸運が重なり、また本人の努力もあって入団7年目にしてレギュラーを掴みます。
 この辺りの展開は「マウンドの死」と共通するところがあります。読んでるこっちも、てっきり田村が令子を捨てて、そこから殺人事件に発展・・・という先読みをしてしまうところでした。が、田村は令子にプロポーズします。順風満帆といった感じで、予想を裏切られます。
 が、大阪遠征から帰ってから、田村の様子がおかしくなります。試合でも打てず、守れず。私生活でも突然暴力的になっていきます。
 どうして変わってしまったのか、令子がその謎を調べるために、キーとなる大阪へ行きます。そこで起こった真実とは?

 結局、「ナイターでの殺人事件」は途中では起こりません。じゃあ、タイトルは看板に偽り有りなのか?というと、そうではありませんでした。いわゆるドンデン返しと言われるパターンです。タイトルが「ナイター殺人事件」だから、そうは感じないんですが。まぁ、しかし、かなり唐突な展開なので「推理小説」と呼ぶのはどうかな?

 このお話の面白いのは、選手の私生活での精神状態が、そのまま野球の成績に直結しているというところですね。田村がレギュラーを獲れたことも、また心配事を抱えてスランプに陥ってしまうのも、よくわかる話です。私生活の精神状態が仕事に影響するというのは、野球選手に限ったことではありませんからね。
 そのスランプから田村を救うために令子がとった行動も、かなり屈折していて理解しがたい部分もありますが、結局、田村を精神的に立ち直らせ、そのことが野球に直結したということなんでしょう。

(2003.3.2記)


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