パーフェクト・ブルー

宮部みゆき

創元推理文庫 1992.12.25 初版 \580(税別)


 私立松田学園高校野球部にあった打者人形が東京湾岸の工場団地の一角で燃やされたことが物語の発端。これはただの悪戯と見られていたところに松田学園のエースにして高校球界のスーパースターである諸岡克彦が、実際に同じ場所で同じように焼き殺されるという事件が起こります。
 この事件を蓮見探偵事務所の調査員・蓮見加代子と克彦の弟・進也、そして元警察犬のマサが調べる中で、様々な人間関係が明らかになっていきます。
 松田学園をスキャンダルで陥れようと画策するライバル校、当初は克彦殺しの犯人と思われた元チームメイト。マサの視点で語られるという面白い趣向で話は進んでいきます。

 物語の中盤、そのマサの視点から一転、大同製薬という会社の内部での話になります。そして、徐々にこの事件と大同製薬にも関係があることが明らかになっていきます。

 マサの視点からという語り口で、ストーリー自体は軽妙に読み進めることができますが、事件の背景、真相はかなり重いです。正直、かなり気分は悪くなりました。マサがうまく緩衝材の役割を果たしてくれています。

 事件の元凶は数年前に遡り、絡み合った糸をほぐすように事実が明かされていくわけですが、蓮見探偵事務所側、大同製薬側のお互いの思惑が微妙にすれ違いながら終局に向かっていく点も面白いところ。何となく推理できそうでいて、そのすれ違いがあるが故に、ジグソーパズルの最後のピースがうまくはまらないという感じです。
 そして、最後に、ある人物から本当の事実が明かされることにより、ようやく全ての伏線がひとつに繋がります。この辺りの展開はなかなか脱帽ものです。

 事件は解決しても、実際にはこの事件の元凶はまだ尾を引いているという結末は、どうにもやり切れないものを感じさせますが、こういうことは実際にもありそう(あってはいけないことだけど・・・)で、妙にリアリティを感じます。

(2003.5.4記)


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