ダンカン・オリジナル ミスター・ルーキー

ダンカン

角川書店 2002.3.20 初版 \1000(税別)


 映画「ミスター・ルーキー」公開に合わせて出版された小説版。と言っても、映画の原作でもなければ、ノベライズでもありません。全く別物のお話です。

 共通するのは、覆面投手がタイガースを優勝に導くというコンセプトのみ。もちろん、ミスター・ルーキーが何者かをマスコミが探るというスパイスは同じようにあるものの、ルーキーの正体は映画版のサラリーマン大原ではありません。
 昼間は他の職業を持っているという設定は共通ですが、職業も違えば覆面をかぶる理由も異なっています。映画のような速球派右腕クローザーでなく、技巧派左腕ワンポイントリリーバーという点も設定として大きく違うところです。

 そして、最大の違い。こちらはサスペンス仕立てなのです。
 覆面をかぶりミスター・ルーキーを名乗る理由は、1985年の優勝の年以来、タイガースの選手たちに人知れず危害を加えてきた「悪のミスター・ルーキー」を誘き寄せるため。映画とは全くテーマが違います。
 それと平行して、ミスター・ルーキーの正体を探るマスコミの謎解きの話、そしてタイガースの優勝争いの奮闘ぶりが描写されます。

 映画のルーキーは力のある速球と決め球のフォークボールで、それこそ「プロの力」を持った投手として描かれていましたが、小説版ルーキーはストレートも130キロそこそこのプロとしてはどう見ても通用しそうにないタイプです。
 面白いのは、そのルーキーの武器です。プロファイル(!)とそれを活かすコントロールで、相手打者を翻弄していきます。(大リーグボール1号に通じます!)
 試合前の練習中での相手選手のちょっとした会話や動作から、相手の狙いを読み、そこからわずかにはずれたコースへ投げることで、ことごとく相手打者を打ち取っていきます。現実として、そんなにうまくいくかよぉ、とか、そんな偶然が・・・(たまたまヒントになる会話を聞いていたとか)とか思うのですが、そこはそれ面白ければそれでいいかなぁと。

 ルーキーの普段の生活の描写もあるのですが、あだ名でしか登場しないため、読者の方もクライマックスまで正体がわからないというのも、うまいなと思いました。

 シーズン終盤、いよいよタイガースが優勝に向けて大詰めを迎えたところで、遂に悪のルーキーが動き出します。
 そして優勝をかけた一戦での、悪のミスター・ルーキーとの対決と、優勝をかけた登板が重なるクライマックスは一気に読ませますね。ちょっとハラハラさせてくれます。

 映画を見た人でも、全く話が違うので「もうひとつのミスター・ルーキー」として楽しめると思います。

(2003.5.4記)


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