新本格猛虎会の冒険

有栖川有栖/いしいひさいち/逢坂剛/佳多山大地/北村薫/黒崎緑/小森健太郎/白峰良介/エドワード・D・ホック

東京創元社 2003.3.28 初版 \820(税別)


 遂に今年、18年ぶりの優勝を成し遂げたタイガース。書店にいけば、例え関東と言っても「タイガースコーナー」ができるほど、様々な虎本が出版されました。特に独走のペナントレースだっただけに、出版社も企画が立てやすかったのではないでしょうか。
 マジックが出てからの出版ラッシュは、結局全てを網羅するのが不可能なほどでした。

 この本も、そんなタイガースコーナーに置かれる1冊なのですが、注目すべきは、その出版日。開幕前なんですよねぇ。ちなみに、私もこの本は開幕前に買っています。
 おそらく、去年の開幕ダッシュのフィーバーの頃からの企画なのではないでしょうかね。ただ、去年のあの躍進があって、今年の期待感に繋がったことを思えば、この本の企画が通ったのも必然だったような気がします。
 いまも書店のタイガースコーナーに置かれているのを見かけますが、優勝したので帯のデザインが変わってましたね。

 逢坂剛氏の序文「阪神タイガースは、絶対に優勝するのである!」、佳多山大地氏の「解説−虎への供物」を含めた9編からなるミステリーの短編集です。もちろん、全てタイガースに絡んだお話で、タイトルを見ただけでも楽しくなってきます。

「五人の王と昇天する男達の謎」(北村薫)
 ややこしいのが、このお話の主人公がタイガースファンの推理作家・有栖川有栖さん。この本の中で有栖川有栖氏が他のお話を書いていますが、最初は誰がどの話を書いたなんて意識になかったので、てっきり有栖川氏がこの話を書いていると思ってしまいましたよ。
 死後の世界に招かれた有栖川さんが「煉獄スポーツ」の記者に出された謎解きに挑戦。
 「シェ−」のポーズから導き出されたジャイアンツかタイガースの2人の選手は誰でしょう?ドンデン返しで出てきた名前は・・・・まさか、あの選手の名前に結びつけてしまうとは。(^^;

「一九八五年の言霊」(小森健太朗)
 あの1985年の優勝は「言霊」のおかげだったというお話。個人的に、結構、言葉の力が想念として現実に作用するという感覚はありかなと多少思う部分があって、かなり興味深い話でした。

「黄昏の阪神タイガース」(エドワード・D・ホック/木村二郎訳)
 タイガースの豪腕ピッチャー国良直樹の兄が殺害され、国良本人も誘拐されて身代金が要求されます。国良は試合前に解放され、その日のジャイアンツ戦に登板、そしてノーヒットノーランの快投を見せますが、事件は意外な決着を見せます。って、まぁ意外でも何でもないありきたりな展開なのですが。タイガースファン向けのお話にしては、ちょっと後味が悪い決着でした。

「虎に捧げる密室」(白峰良介)
 野球を見に行くと必ずひいきチームが負けてしまうという人っていますよね。もちろん、たまたまなんでしょうが、自分が行くから負けるというジンクスができてしまうと、なかなか次に行く勇気がなくなっちゃうんですよね。友達からも「お前が行くと負ける」とか言われたりして。
 これがこのお話の犯人の動機に繋がっています。ひいきチームがない人には、わからない話かもしれませんが、妙にリアリティがあるんだよなぁ。

「犯人・タイガース共犯事件」(いしいひさいち)
 もちろん、いしい氏独特の漫画です。(^^;
 トリック云々より、気楽に笑ってください。

「甲子園騒動」(黒崎緑)
 甲子園のスタンドで繰り広げられる誘拐犯の捕り物劇。先入観が真実を覆い隠すというのが、トリックになっているのですが、謎解きのきっかけが、かなり強引。(^^;

「猛虎館の惨劇」(有栖川有栖)
 有栖川さんの作品はこっち。
 猛虎館と言われる屋敷の主人が殺され、首なし死体で発見されます。猛虎館は黄色と黒の縦縞模様に、空からみるとTとHのタイガースマーク。タイガース関連のコレクションも多く、被害者は病的なほどの「虎」コレクター。虎を極めれば当然行きつく先は・・・。

 まぁ、短編集なので、気楽に読んでみてください。タイガースファン以外が楽しめるかどうかは、ちょっとわかりませんが。(結構、有名な作家さんが揃っているようなので、そちらのファンの方たちも楽しめるでしょうね。タイガースファンの切ない思いが伝わるでしょうか)

(2003.11.2記)


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