1985

真田至

太田出版 2000.4.14 初版 \1500(税別)


 以前から、実際のタイガースの試合を軸にして一ファンの物語が書けないかなぁと思っていました。文才がないので、実際に書くってこともなかったのですが、この本は、まさにそのアイデアを具現化したものと言えるでしょう。同じことを考える人は考えるものだなぁ。

 タイトルでわかるように、この物語は1985年のタイガース優勝の年が舞台。この年に起こったタイガースファンの物語です。おそらく、著者の私小説的な部分もあるんじゃないでしょうかね。

 登場人物は、主人公の立命館大四年の橋本もみじと、バイト先で知り合った雨森七子。この二人を軸にして、もみじくんの友人の相撲部の大曲くんと、その彼女の伸子さん、そして広島出身ということだけで彼女を振ってしまった緑川くんという「強烈な」個性満載のトラキチの同志たちです。
 彼らは、年代的にかなり私にもカブっているので、読んでいてもちょっと懐かしい感覚がありました。登場人物が身近に感じられるんですよね。っていうか、こういう人たち、身の回りにいたし。ひょっとしたら、自分もこの中にいるかも。(^^;
 そういう意味では、18年前の物語なのですが、どうもリアルタイムのお話のような感じで読んでいました。

 タイガースファンにとって、やっぱり1985年というのは特別な年でしたね。ストーリーの中で、タイガースの試合の様子が書かれているのですが、それぞれの試合のときに自分が何をしていたかって、大体憶えているんですよ。そういうことを思い浮かべながら読むこともできるので、やっぱり感情移入はしやすいですね。
 特に優勝決定の10月16日。あの日をどういう風に迎えたか、何をしていたかは、当然今でも憶えているわけです。それは決してみんな同じではなく、それぞれのファンが、それぞれの事情、それぞれの思いで迎えたということを改めて感じました。でも、それも全て共通体験になっているんですよね。
 日本シリーズ、大学の食堂でテレビ観戦しながらの酒盛り・・・これもどっかで(?)経験したような記憶が・・・。(^^;

 年が明けて1986年のオープン戦が始まる頃、もみじくん達もそれぞれ別の道に進みます。この辺りが「宴の後」という感じでちょっと物悲しい気分にさせられます。当時はまたすぐに新しい宴が始まると思っていたんですけどねぇ。

 トラキチならではのマメ知識も、注釈という形で随時記載されています。ストーリーの中では、あえて省略されていることも、この注釈を読めば、当時を知らなくても追体験は可能でしょう。もちろん、知っている人にとっては、こちらの記載もニヤリとさせられること請け合いです。

(2004.1.12記)


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