殺人豪速球

デイヴィット・フェレル/棚橋志行訳

二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション 2003.10.25 初版 \829(税別)


 今年、86年ぶりに「バンビーノの呪い」を解いてワールドシリーズチャンピオンのなった、ボストン・レッドソックス。この小説は、そのレッドソックスを舞台にした物語です。ワールドシリーズで石井一久が投げている描写がありますから、それこそここ数年が舞台でしょうか。実際には石井はWシリーズには出ていませんから、未来を想定しているのかもしれませんし、A.ロッドがレンジャースにいるので、やっぱり数年前?
 いずれにせよ、「呪われた球団」レッドソックスでなければ、このストーリーは成立しません。

 話はレッドソックスのスカウトが偶然、99マイル=約160キロの速球を投げる高校生ロン・ケインを見つけるところから始まります。とにかく、このケインは投打に傑出した才能を持っています。当然、レッドソックスはケインを獲得。ドミニカにケインを育成するための教育リーグを作って育てた後、満を持してメジャーにデビューさせます。ケインは投打に大活躍、レッドソックスは快進撃を始めます。
 ところが、レッドソックス周辺で猟奇殺人事件が連続して起こり始めます。首なし死体がレッドソックスの移動する先々で発見されるのです。監督のシャーキーは、選手の中に犯人がいるのではないかと疑います。とにかく、怪しい人間が多いのです。個性派集団レッドソックスの面目躍如、疑い出したら、誰が犯人でもおかしくない!

 物語は中盤、GMのウルフマイヤーに「犯人が映ったビデオテープ」が送られてきて、恐喝事件に発展します。ここから、ウルフマイヤーが隠蔽工作に走ります。もちろんチームの面目を守るため以上に、その「猟奇殺人犯」がいなくなってしまうと、目前の優勝、そして念願のワールドシリーズ勝利も泡と消えてしまうことが明白だからです。
 優勝争い、そしてチーム内の確執、猟奇殺人、恐喝とフロント陣の暗躍と、物語は二重三重の出来事が一つに繋がって進んでいきます。正直、野球の場面はあっさりし過ぎですが、球団の中のドロドロした内幕はかなり細かく描写されています。

 内容が内容ですから、レッドソックス関係者は全て架空の人物です。ただ、前述したように相手チームは実在の人物(石井やA.ロッド以外にも、ヤンキースのトーリ監督も登場します)が出てくるので、リアル感はあります。また、回想場面ではレッドソックスのあのOBが数行登場するところは、タイガースファンとしては見逃せません。
 そのOBとは、「マイク・グリーンウェル」。そういえば、彼はミスター・レッドソックスという触れ込みで来日したことを思い出しました。考えてみれば、グリーンウェルって「バンビーノの呪い」と「カーネル・サンダースの呪い」を経験し、神様のお告げで引退したのですね・・・。

(2004.11.29記)


目次に戻る