背番号三桁 「僕達も胴上げに参加していいんですか?」

矢崎良一・中田潤・岩田卓士・池田浩明・玉森正人・伊村雅央

竹書房 2004.1.1 初版第一刷 \1,238(税別)


 一昨年のタイガース優勝を受けて出版された本。便乗本と言ってしまえば、それまでですが、巷ある便乗本とは視点を変えた内容です。企画自体は、誰もが考えつきそうなものなのですが、なかなか見ることがないジャンルで、当時出た優勝関連本の中でも特異な一冊と言えるでしょう。まだ「超人」ではなかった頃の「あぶさん」のエピソードに通ずるような、フリーライター、新聞記者の取材を元にした、所謂、裏方さんにスポットを当てた作品です。
 優勝は、もちろん、チームの首脳陣、選手の力が結集した結果なのですが、でも、それだけでは決して達成できるものではないのは確か。チームを支える裏方さん、監督や選手と比べて、普段はあまり注目されないコーチ陣やスコアラー、チームを見守ったOBの人たち。そういう人たちが、あの年の優勝をどういう形で支えていったか?どういう思いで、その瞬間を迎えたか?それをこういう本で知ることができたということは、ビデオなどで、あの胴上げシーンを繰り返し見る度にどんどん深みが増していくような感覚になります。

 サブタイトルにある「僕達も胴上げに参加してもいいんですか?」というセリフはその象徴のような言葉です。それに対する星野監督の返事はもちろん、「アホか!そんなもん、決まっとる。全員参加や」。そうなんですね。裏方さんがいなければ、決してチームは成立しないのです。当たり前のことなのですが、決してスポットが当たらない存在だけに、外から見ている我々ファンは、なかなか気づかないのです。

 全12章のうち、やはり、この本の真髄は最初の2人。ブルペン捕手・西口裕治と打撃投手・多田昌弘。2人とも、将来を嘱望されてプロ入りするも、一軍実績はなし。しかも、選手生活も1年〜2年なんですよね。今でも、本当に数年で解雇される選手がいますが、こうして野球の仕事が続けられる人も、ほんの一握りです。実際に、最終章で紹介されている安達智次郎氏は、ドラフト1位指名から、最終的には打撃投手も経験しましたが、いまは野球の仕事を離れています。
 なまじ希望に燃えてプロ入りした人たちだけに、裏方としての仕事を選択するときの葛藤は激しかったはずです。ただ、その仕事を通じての現役選手との関わり、先輩のブルペン捕手、打撃投手との関係、他チームで頭角を現してくる同期生の姿、また同じように裏方に回った同期生との出会いがあり、そういう諸々があって、やはり彼ら自身がその仕事に誇りや生きがいを見つけて懸命に取り組んでいる様子が描かれています。それを通じて、彼らがチームのかけがえの無い一員だったということを再認識させられました。

 今年の優勝にも、同じように裏で支えた人たちがいて、また、他チームにも同じような形で野球界に貢献している人たちがいます。我々ファンは、そのことを忘れないようにしたいですね。

(2005.11.27記)


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