元・阪神

中田潤・矢崎良一・橋本清・池田浩明・高橋安幸

竹書房 2004.5.28 初版第一刷 \1,238(税別)


 「背番号三桁」と同様に2003年のタイガースの優勝を受けて出版されたと思われる本なのですが、このシリーズ(TAKE SPORTS NON-FICTION)、この後の続刊を見ていると、別にタイガースに特化したものではなさそうです。どうやら、タイガース優勝を機に立ち上がったシリーズのうちの一冊と言い換えた方がよさそうです。
 タイトル通り、タイガースを去っていった、もしくは去らざるを得なかった選手を追ったインタビューあり、リポートありの一冊。元々、当時、何冊も出ていたタイガース関連本の一つという認識で、若干食傷気味で敬遠していた本だったのですが、ちょうど神戸の某大型書店に寄ったときに、「マイク仲田のサイン入り」ということで売られていたので、つい買ってしまったのでした。

 この本に出てくる「元・阪神」の人たちが、タイガースを去った理由は様々なのですが、その奥底に、マスコミ報道の恐さというものが随所に出てきます。マスコミの報道に少しでも疑問を感じていれば、確かにこういうこともありうるなぁと素直に受け入れることができるのですが、そういう意識がない人でスポーツ紙に書かれてあることを、そのまま信用してしまっていた人にとって、この本を読むことは大いに有意義なことなのではないかと思います。もちろん、ここに書かれていることは、マスコミとは逆に、書かれる側からの一方的な主張かもしれませんが、マスコミの書くことのいい加減さがわかっていれば、どちらが信用に足るかは自明でしょう。
 特に、その色合いが強いのが、藤田平氏と松永浩美氏の項。
 藤田氏の項では、当時のタイガースというチームのダメさ加減について、はっきりと書かれています。これじゃあ強くならないなというほどの酷さで、はっきり言ってプロのチームとは言えませんでした。ここに改革の手を入れようとしたのが藤田氏だったのですが、それを良しとしない球団上層部がマスコミと結託して、藤田氏をスケープゴートとした経緯が書かれています。藤田氏のやろうとしていたことは、今から考えてみれば、ノムさんや星野さんのやってきたことと同じなんですけどね。ノムさんが辞めなければいけなくなったときに、岡田監督や木戸氏が次期監督候補にあがりましたが、まだまだ改革途中であったことから、生え抜き監督は時期尚早だと思っていました。藤田監督時代のこういう話を読むと、それは正解だったなという思いを強くします。
 松永氏に関しては、その退団経緯も含めて、毛嫌いしている人が多いのですが、個人的には好きな選手の一人(ブレーブス時代から)だっただけに辛いんですよ。でも、彼を非難している人たちには、是非、この本の内容を知って欲しいですね。確かに、タイガース生活の一年間では、怪我もあって成績は残せませんでしたが、当時のチーム体質やマスコミの歪曲報道について知れば、その非難される要因の一部は「言われ無き誤解」だったことに気づくはずです。

 しかし、表紙の江夏氏の写真、いかつすぎます・・・。(でも、江夏×ダンプ辻対談はバッテリー論として秀逸です)

(2006.1.4記)


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