ボークの適用3


【状況】
2000. 5. 2 タイガース×ベイスターズ 4回戦(阪神甲子園球場)
 9回裏、2点を追うタイガースの攻撃。1死1,3塁と絶好のチャンスに打者タラスコを迎えます。ベイスターズの投手斎藤隆は初球のセットポジションから投球動作に入ろうとしていました。タラスコは間合いの長さに焦れてか、打席で左手を何度か挙げてタイムを要求する仕草をとりました。このとき、球審真鍋が微妙に動いた?ため、斎藤隆は投球を途中で停止。
 その直後に球審真鍋が、大きなジェスチャーでタイムをとりました。すわっ、ボークか?と思われたのですが、場内への説明は「タラスコのタイムを優先」ということで、ノーカウントとなりました。野村監督も抗議を行ったのですが、結局判定は変わらず、そのまま試合が再開されました。

斎藤は明らかに投球を途中で止めているし、審判のジェスチャーも不明確。この場合、審判の判定は正しいの?


【調べてみると】
 タラスコって、よくこのジェスチャーするんですよね。見ていてヒヤヒヤするんですが、これでストライク投げられたら。ストライク1つ損するんだよね。(実は1回そういうことがあったのを中継で目撃してます。タラスコは怒ってたけど・・・)

 まずは、このタラスコの動作について、ルールではどうなっているかを調べてみました。
 公認野球規則6.02、打者の義務の(b)項です。

 打者は、投手がセットポジションをとるか、またはワインドアップを始めた場合には、バッターボックスの外に出たり、打撃姿勢をやめることは許されない。
ペナルティ 打者が本項に違反したさい、投手が投球すれば、球審はその投球によってボールまたはストライクを宣告する。


 タラスコは一応打撃姿勢はやめてなかったし、もちろんバッターボックスの外には出ませんでしたが、タイムを要請したのは明らかなんですよね。で、同じ項の【原注】に以下の記載があります。

 審判員は、投手がワインドアップを始めるか、セットポジションをとったならば、打者または攻撃側チームのメンバーのいかなる要求があっても、"タイム"を宣告してはならない。

 打者はタイムを要求してもかまわないのですが、審判はタイムを宣告してはならない=タイムは取れないと解釈してもいいですよね。それなら、この場面、タイムという選択肢はないということになります。

 それでは、投球を途中で止めた斎藤隆の動作はどうなるのでしょうか。何もなければ、完全に途中で投球を止めていますから、文句なしのボークでしょう。ただ、前述の【原注】の最後には・・・

 走者が塁にいるとき、投手がワインドアップを始めたり、セットポジションをとった後、打者が打者席から出たり、打撃姿勢をやめたのにつられて投球を果たさなかった場合、審判員はボークを宣告してはならない。投手と打者との両者が規則違反をしているので、審判員はタイムを宣告して、投手も打者も改めて"出発点"からやり直させる。

とあります。タラスコの行為は厳密に言えば、上記に相当はしないはずなのですが、タイムの動作につられたと判断されれば、ボークだけれど宣告はされないということになり、実際の審判の判定が正しいことになるわけです。

 ただ、この場面についての審判の説明は、あくまでも「タラスコのタイムを優先」です。これは、上記条項を読む限り、おかしいことは一目瞭然です。このケース、審判は"タイム"を宣告してはいけないのですからね。
 ここで「タイムを優先」させてしまったばかりに、この数球後のタラスコのタイムのジェスチャーに対して、今度は大きいポーズでタイムをかけてしまった真鍋球審。これは明らかに間違いじゃないでしょうか?
 ボークの判定自体は、結果的に正しかったのかもしれません。でも、その判定に到るプロセスが間違っています。もう少し勉強して欲しいものですね。

 ところで、ボークを誘発するために、わざとタイムをとったりするとどうなるんでしょうか?
 4.06、競技中のプレヤーの禁止事項の(a)項に以下の記載があります。

(3) ボールインプレイのときに"タイム"と叫ぶか、他の言葉または動作で明らかに投手にボークを行わせようと企てること。

 そして、ペナルティとして審判員は反則者を試合から除き、競技場から退かせる。なお投手がボークをしても無効とする。

 つまり、あまりにも悪質な場合は、退場にもなってしまうということです。どこまでが許容されるかは、審判の判断でしょうから、気をつけなければいけませんね。
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