指名打者の交代


【状況】
1998. 5.15 ブルーウェーブ×ホークス 6回戦(グリーンスタジアム神戸)
この日、いつものようにDHとしてラインアップに名を連ねていたブルーウェーブのニールですが、何か様子がおかしい。(^^;
どうも試合前に急に体調が悪くなったようで、試合どころではないようです。仰木監督が交代を告げたようなのですが、審判はこの交代は認められないと主張。急なことなので特例を認めようという動きもあったようですが、結局10分ほどの中断のあとニールが打席へ。
この打席でニールはなんとホームランを打ってしまうのですが、そのまま病院へ直行してしまいました。

何故、このケースでニールの交代は認められなかったのでしょうか??


【調べてみると】
 DH(指名打者)制って、かなり定着してきましたが、細かいルール運用ってあまり知られていないような気がします。
 パリーグではだいたい4番打者として打撃専用の選手を出すことが多いので、本来の定義を忘れがちですが、あくまでも投手の代わりに打つ選手というのが基本なんですよね。
 指名打者については、公認野球規則6.10に記載されています。

 先発投手または救援投手が打つ番のときに他の人が代わって打っても、その投球を継続できることを条件に、これらの投手に代わって打つ打者を指名することが許される。

 投手の代わりに打つ打者を指名できるから、指名打者なんですね。
 さて、この指名打者の指名は試合前に行わなければいけません。

 投手に代わって打つ指名打者は、試合開始前に選ばれ、球審に手渡す打順表に記載されなければならない。

 ニールはこの時点で、指名打者に指名されたわけです。ここで指名打者に対してある拘束条件が付与されます。これが問題のルールになるわけです。

 試合開始前に交換された打順表に記載された指名打者は、相手チームの先発投手に対して、少なくとも一度は打撃を完了しなければ交代できない。ただし、その先発投手が交代したときは、その必要はない。

 このルールが適用されるために、ニールは代わりたくても1回は打席に立たなければ代わることが許されなかったわけです。
 パリーグの場合は予告先発なので考えられないのですが、おそらく指名打者に当て馬を使うということを予防するためのルールなのでしょうね。
 さて、結果的にニールはここでホームランを打っちゃうわけですが、仮にニールが打つ前にダイエーの先発投手が交代してしまった場合にのみ、ニールは苦しい思いをして打席に立たなくてもよかったわけです。

 この試合はとりあえずニールが1打席をこなしたので、その後の打席でニールの代わりの指名打者を代打として交代させることはできるわけです。
 指名打者に代えてピンチヒッターをつかってもよい。指名打者に代わった打者は、以後指名打者となる。退いた指名打者は、再び試合に出場できない。
 指名打者に代わって出場させようとするプレーヤーは、指名打者の番がくるまで届け出る必要はない。

 仮にニールがホームランじゃなくヒットや四球で出塁した場合は、代走を出すことは可能です。
 指名打者に代わって代走者が出場することができるが、その走者が以後指名打者の役割を受け継ぐ。指名打者がピンチランナーになることはできない。

 おもしろいので、さらに突っ込んで選手交代に絡んで指名打者がその試合でどういう扱いになるのかを列挙してみたいと思います。

 まずは指名打者が全く使えないケースですが、例えば、オープン戦なんかでセリーグもDHを使うことが多いですが、これは必ずしも使わなくてはいけないわけではありません。
 チームは必ずしも投手に代わる指名打者を指名しなくてもよいが、試合前に指名されなかったときは、その試合で指名打者を使うことはできない。
 試合前に指名しないと、その試合ではずっと指名打者を使うことができないので、投手の打撃が期待できない以上はあまり得策ではありませんね。例えばイチローを先発投手で使ったら当然指名打者は使わないでしょうが・・・。(笑)

 何らかのアクシデントがあって、指名打者が守備につかなくてはいけなくなった場合はどうなるでしょう。
 指名打者が守備についてもよいが、自分の番のところで打撃を続けなければならない。従って、投手は退いた守備者の打撃順を受け継ぐことになる。ただし二人以上の交代が行われたときは、監督が打撃順を指名しなければならない。
 仮にニールが試合途中で一塁の守備についたとしましょう。4番DHニールは4番一塁ニールになるだけですが、それ以後、一塁手が打っていた打順、例えば5番を打っていたとしたら、5番で投手が打たなければいけないことになります。この交代と同じときに8番打者の守備も交代しておけば、監督が5番か8番かを指名しなければいけません。
 で、その場合、指名打者というポジションはどうなってしまうかというと。。。
 指名打者が守備位置についた場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。
 指名打者はいなくなってしまうわけですね。


 今回のケースのように指名打者を試合途中で交代させなければならなかったとき、交代させるべき選手が明らかに4番タイプじゃない場合、守備位置の変更のように打順も変えることは可能でしょうか。
 指名打者は、打順表の中でその番が固定されており、多様な交代によって指名打者の打撃の順番を変えることは許されない。
 答えはダメですね。こう考えると、指名打者って結構制約が多いポジションだと言えます。選手交代に絡んで守備位置を変えるのと同じ感覚で交代はできないということですね。

 次は指名打者が投手の代わりに打つ打者だということがよくわかるケースです。
 投手が一度守備位置についた場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。
 野村監督がよくやっていた戦法で、ワンポイントでリリーフを送るときに、仮に一時的にいま投げている投手を外野にもっていったというような場合です。このルールにより、この戦法をとった瞬間に指名打者がいなくなってしまうわけですね。
 この場合、おそらく指名打者は外野に行った投手の代わりに打っていたということなので、指名打者の打順にこの投手が、引っ込んだ外野の選手の打順にリリーフ投手が入るんでしょうね。

 ピンチヒッターが試合に出場してそのまま投手となった場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。(試合に出場している投手は、指名打者に代わってだけ打撃ができる)
 例えば、嘉勢をピンチヒッターで使い、そのまま次の回に投手として登板させると、その時点で指名打者は消滅します。嘉勢は代打ででた打順でそのまま打つことになり、指名打者のところに代打で欠けた守備位置の代わりの選手が入ることになると思います。

 こうして見てみると、これらのおもしろいルールが適用できそうなのは、ブルーウェーブくらいだなぁ。是非トライしてほしいぞ、仰木監督!(爆)
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