冒険の概略
新米も新米、今さっきパーティーを結成したばかりの新米冒険者達に、酒場のマス
ターからお誂え向きな依頼が入りました。
「コボルト退治に行かないか?まだ実害が出てないんで、そう急ぎの話でもない。お
前達にはピッタリの依頼だろう」
冒険者達はこの「お手軽」な仕事に一も二もなく飛びつき、依頼先の村に向かうで
しょう。そこで冒険者達を待っているのは、コボルト達の突然の夜襲です。それも一
晩に二度も!村人達は今までになかったこの出来事に恐慌状態に陥ります。冒険者達
はコボルド達の行動の突然の変化の理由を探り、その裏にある原因を取り除かねばな
りません。
このシナリオは1〜2レベルの冒険者、5人前後用にデザインされています。
冒険の舞台
冒険者の宿がある街と、その近くにある小さな村。この二つの条件が満たされる場
所であるならどこでもかまいません。
冒険への導入
冒険者達はまだパーティーを結成したばかりで、実際の冒険の経験は殆どありませ
ん。冒険者の店には「勇者求む!」「腕に覚えのある冒険者募集」などと張り紙が貼っ
ていますが、素人同然の彼らはどうも気後れしてしまいます。もっと簡単な依頼はな
いのかな?そんな気分でテーブルで酒を飲んでいる冒険者達に、店のマスターは気安
く声をかけてきました。
「パーティー結成おめでとう!さっきから張り紙を気にしているようだが、どうだ?
手頃な依頼は見つかったか?なに、まだ?はっはっは、そうだろうな!儂も初めての
時はなかなか踏ん切りがつかなかったもんだ。よし、それじゃあプレゼント代わりに、
儂から一つ、いい仕事を紹介してやろう」
冒険者達が興味を示すと、マスターは洗い物の手を止め、こう切り出します。
「ここから北に二日ほど歩いたところにあるハイラって村、知ってるか?なんでも最
近その村の近くで、コボルド達がウロウロしているらしい。まだ実害は出ていないそ
うだが、まぁ、あんまり気持ちのいいもんでもないしな。それでこの間、その村の村
長さんの使いからコボルド退治をしてくれって依頼があったんだ。どうだ、おいしい
話だろう?特に急ぎでもないコボルド退治。お前さん達には手頃だと思うがね」
報酬は一人500Gで、細かい話は実際の依頼人であるハイラ村の村長としてくれ
ということです。この話を聞いた冒険者が知名度6の怪物判定に成功したのなら、こ
こでコボルドのデータについて知ることが出来ます(コボルドのデータについては、
ルールブックを参照して下さい)。また、伝承知識で目標値10に達した冒険者は、
ハイラ村についても以下の情報を知ることが出来ます。
○ハイラ村は人口二百人程度の小さな村である事
○平和で、どちらかというと地味な感じの村である事
○ハイラ村はここから街道沿いに、北へ2日ほど歩いたところに位置する事
マスターはこれらの情報を全て知っており、冒険者に聞かれればハイラ村のことや
コボルドのデータについて詳しく教えてくれます。
おそらく冒険者達はこの依頼を引き受けるでしょう。依頼の内容や報酬の額に冒険
者が不満を漏らした場合、マスターは新米冒険者にはこの程度の依頼内容と報酬が適
当だと、噛んで含めるように申し渡します。それでも冒険者が依頼を引き受けない場
合、マスターは溜め息をついて引き下がりますが、もっとも、この依頼以外に新米冒
険者にもこなせそうな仕事はありません(それともキマイラ退治に挑戦しますか?)。
たとえ一度話を断っていても、冒険者から頼まれればマスターはもう一度この仕事
を斡旋してくれます。
冒険者達がこの依頼を引き受けた場合、マスターは冒険者達にこの店の推薦状を手
渡してくれます。この推薦状を持っていない冒険者は村に行っても追い返されてしま
うので、絶対に失うことのないようにとマスターから忠告されます。推薦状自体には
なにも怪しいことはありません。中には、推薦状を持つ冒険者の身分を冒険者の店が
保証する、と言う内容が地方語の文章が書かれています。
それほど急ぎの依頼ではないので、冒険者達は比較的ゆっくりと出発の準備が出来
るでしょう。しかし、あまりゆっくりし過ぎるのも考え物です。依頼を引き受けて三
日経っても冒険者がハイラ村に向かわない場合、マスターから厳しい調子でこう言わ
れます。
「今すぐに出発するか、それともここで仕事を取りやめるか。どっちがいいんだ?」
後者を選んだ場合、シナリオはここで終了し、以後この店で冒険者達にに仕事が回っ
てくることはないでしょう。
はじめの街からハイラ村へは徒歩で丸二日の道程で、途中は街道沿いになっている
ため特に危険なことはありません。冒険者達が街を午前中に出発した場合、次の日の
夕方にはハイラ村に到着することが出来ます。途中に立ち寄れるような宿場町などは
ありません。おそらく大概の冒険者達は、始めの街を午前中ないしは正午頃に出発し、
ハイラ村へ夕方から夜の間に到着するはずです。
もし、冒険者達が極端な寄り道をしたり、街を夜中に旅立ったりして、ハイラ村に
昼間に辿り着きそうになった場合、マスターは「思ったより時間がかかった」等と言っ
て、冒険者達がハイラ村へ夕方頃に到着するよう時間を調整して下さい。この後のシ
ナリオ展開の都合上、ハイラ村へは夕方頃に辿り着いて貰わなければやりにくいから
です。以後、冒険者達はハイラ村へ夕方に辿り着いたと仮定してシナリオを進めます。
本編
1.村長からの依頼
ハイラ村は主に農業と、村の北側に広がる森で行われている狩猟によって成り立っ
ている小さな村です。見た感じはとても平和なところで、コボルド達に対して特に警
戒しているという雰囲気は感じられません。冒険者のやってきた時刻によっては、村
の広場で子供達が遊んでいる場面なども見受けられるでしょう。村の戸数は50戸ほ
どで、そのうち二階建ての建物は村長の家と村の酒場の二つだけです。依頼人の村長
の家は村人に聞けば誰でも教えてくれますし、一番大きい建物を探していけばすぐに
見つけることが出来ます。
村長の家は村のほぼ中心に近いところに建っていて、村の酒場を除いては一番大き
な建物です。冒険者達が村長の家に行き呼び鈴を鳴らせば、玄関のドアを開けてがっ
しりとした体格の青年が応対に出ます。青年ははじめは見慣れないこの旅人達に警戒
の念を隠しませんが、冒険者達がコボルド退治の依頼を引き受けたことを明かせば態
度を一転させ、彼は明るい調子で冒険者達を応接間まで案内してくれます。冒険者達
が応接間に座って程なく、50歳程度の初老の男が姿を現します。彼がハイラ村の村
長で、名をイダール・ガンラードといいます。
イダールはまず初めに、冒険者達に推薦状を持ってるかどうか訪ね、冒険者達が持っ
ていると応えるとそれを受け取ろうとします。
「いや、確かに。初めに疑うようなことをしてすいませんでしたな。推薦状の有無は
必ず確認するようにと、冒険者の店のマスターから言われたものでして」
イダールは推薦状を懐にしまいながら話を続けます。
「ここに来る途中で見られたかもしれんが、このハイラ村は直ぐ近くに森がありまし
てな。昔からその森で狩りをしては、この村の人間の生きる糧にしていたのです。と
ころが最近、その森でコボルド達がウロウロしているのを村の若い猟師が見つけまし
てな。以前からコボルド達が住んでいるという噂はありましたが、どうも奴等は近頃
餌場を変えたらしい。幸いなことに、まだ村には何の被害もありませんが、それでも
近くを妖魔がうろついているのは、やはり気味が悪い。かと言って村の人間だけで立
ち向かって、死人やけが人が出ては元も子もありません。そこでここは一つ、専門家
である冒険者さん方に依頼しようと村で話し合いまして…」
冒険者達はイダールから以下の情報を聞き出すことが出来ます。イダールは終始柔
和な態度で、冒険者達の質問には出来る限り応えようとします。
○初めてコボルドが見つけられたのは、二月程前である事
○村には何人かがその森で狩猟をしており、彼等ならコボルド達について詳しく知っ
ているだろう事
○村の猟師達は、夜には村に戻ってくるのではないかという事
イダールは報酬は一人当たり500Gで、そのうち200Gを前金として先に渡そ
うと申し出ます。冒険者達がの交渉次第では、この朴訥で平和な村の村長を騙くらか
してもう100Gは上乗せ出来るでしょうが、それ以上は村の金庫を逆さに振っても
出すことは出来ません。また、冒険者達の人数に関わらず、イダールが出せるのは総
計で3000Gまでです。
冒険者達が報酬について了解したのならば、イダールから一人一人に前金のガメル
銀貨が詰まった皮袋を渡されます。
「なにはともあれ、取り合えず荷物を降ろす宿がお入り用でしょうな。それに今日は
もう暗い!今息子に宿まで案内させますんで、仕事が終わるまでそこに泊まっていて
下さい。ご安心を、当然主人に無料で泊まれるよう、話はつけて有りますのでな。お
い、ルード!冒険者さん達を宿まで案内してあげなさい!」
そのイダールの声に呼ばれて、先ほど玄関であった青年がやってきます。彼の名は
ルード・ガンラード。イダールの息子です。彼は先に立って、冒険者達を宿屋まで案
内します。
「どうぞ、こっちです。この村の宿屋は酒場も兼ねているんですが、もう少ししたら
村の若い奴等が晩メシを食べに来る時間なんです。あいつ等なら、コボルドのことで
何か知ってることがあるかも知れませんね。なんなら、俺から連中を紹介してもいい
ですよ」
ルード・ガンラード(人間、男、24才)
器用度=13(+2) 敏捷度=12(+2)
知力=16(+2) 筋力=15(+2)
生命力=14(+2) 精神力=14(+2)
冒険者技能 なし
一般技能 ハンター技能1、ファーマー技能2
生命抵抗力:0 精神抵抗力:0
冒険者レベル0
武器:ロングボウ(必要筋力15) 攻撃力3 打撃力20 追加ダメージ3
盾:なし
鎧:ソフト・レザー(必要筋力7) 防御力7 ダメージ減少0
会話:共通語、地方語
読解:共通語、地方語
彼は村長の息子であると同時に、ハイラ村の青年団のリーダーでもあります。若
いのに似合わずしっかりした青年で、青年団のリーダーになったのも、そんなとこ
ろを皆に買われたためです。彼は普段は家の畑を耕していますが、時々は村の若い
連中を誘って森に狩りに出たりもしているようで、この装備はその時のものです。
2.「狼の毛皮」亭にて
この村の唯一の酒場「狼の毛皮」亭は、同時にこのハイラ村唯一の宿屋でもありま
す。営業時間は午前10時から午後10時までですが、よほどの深夜でもない限り、
ルードに連れられてきた冒険者達を泊めてくれます(たとえよほどの深夜であったと
しても、ルードが頼み込んでくれるために結局は泊めさせてもらえるのですが)。
「狼の毛皮」亭は一階が酒場、二階が宿屋の典型的な構造をしていて、夕方頃には村
の若者達で酒場は毎日盛り上がっています。二階部分には4人部屋が一つと、二人部
屋が二つの計三室が用意されていて、冒険者達はそのうちの二部屋を利用できます
(組み合わせは冒険者達の人数、男女のメンバー構成によって自由に選ぶことが出来
ます)。
さて、宿に荷物を置いた冒険者達。彼等の次に起こす行動は一体何でしょうか?急
ぎじゃない仕事に親切な村人、夜、若者で盛り上がる酒場。これだけ揃えば十中八九、
まず彼らは酒場で夕食がてらの情報収集と洒落込もうとするでしょう。
酒場は夕食時には、十人ほどの村の若者達で盛況な様子を見せます。大半の若者達
は農夫風の仕事着を着ていますが、何人かはテーブルの足下に矢筒と弓を転がしてい
て、一見して猟師であることが知れるます(ルードと若者達は仲の良い友人同士で、
あらかじめルードに頼んでおけば、ここで彼から若者達を紹介して貰えます)。若者
達は冒険者達にも気さくに声をかけてきては、頑張ってくれと声援を投げかけてくれ
ます。以下に、村人達のセリフの例を書いておくので参考にして下さい。
「あんたたちが、コボルド退治に来た冒険者なんだろ?みんな知ってるよ。冒険者を
呼ぼうって、村の話し合いで全員で決めたんだからな」
「一回くらいコボルドって奴を見てみたいねぇ」
「いやぁ、冒険者ってのは流石に強そうだな!これならコボルドなんてイチコロだよ」
「ああ、俺も村の近くでコボルドを見たことが有るんだ。二匹いたかな?気持ち悪い
し、びっくりしたんで慌てて逃げちゃったよ」
この場にいる若者の大多数は、コボルドについて具体的なことは殆ど知りません。
冒険者達がコボルドの住処、数などについて話を聞こうとした場合、カイラという猟
師風の若者が「俺、知ってるぞ!」と声をあげます。2ヶ月前、村の近くの森で初め
てコボルドを発見したのがカイラです。彼はその後も、何度となく森でうろつくコボ
ルド達の姿を目にしています。
エイン・カイラ(人間、男、24才)
器用度=16(+2) 敏捷度=14(+2)
知力=13(+2) 筋力=14(+2)
生命力=12(+2) 精神力=13(+2)
冒険者技能 なし
一般技能 ハンター技能2
生命抵抗力:0 精神抵抗力:0
冒険者レベル0
武器:ロングボウ(必要筋力14) 攻撃力4 打撃力19 追加ダメージ4
盾:なし
鎧:ソフト・レザー(必要筋力7) 防御力7 ダメージ減少0
会話:共通語、地方語
読解:共通語、地方語
ハイラ村で猟で生計を立てている元気のいい青年です。これらの装備は狩りに行く
ときの標準的なもので、彼自身が冒険に出ることはありません。また、彼はルードと
は大の親友でもあります。
「ああ、初めてコボルドを目にしたのは2ヶ月前の話だ。その後も何回も森であいつ
らを見かけたよ。そりゃま、一匹だけならまだしも、あんなのにあんまりウロウロさ
れてちゃ気持ち悪いからなぁ。以前はもっと向こうにいたって話だけど。何匹くらい
いるだろう?一回、四匹一緒に歩いているのを見たことが有るな。だいたいでいいの
なら住処も分かると思うよ」
初日の夜、冒険者達が酒場で手に入れることの出来る情報はこれくらいです。以下
に整理した形であらわしておきます。
○初めてコボルドが姿を現したのは二ヶ月前である事
○その後も、森の中で継続して姿を見かける事
○最低四匹以上はいるだろう事
○警戒はしているが、全体的に村人はコボルド達に対して危機感を抱いていない事
最後の項目は「情報」として教えるのではなく、会話の雰囲気からそれとなく冒険
者達に伝えて下さい。
カイラはコボルド達の住処について大体の見当をつけていて、冒険者達をそこまで
案内することが出来ます。冒険者達がカイラに道案内を頼めば、彼は快諾しますが、
夜は暗くて上手く道案内をする自信がないので、出発は明日の朝にしようと主張しま
す。実際の話、暗視を持つコボルド達に夜襲を掛けるのは上手い方法ではありません。
カイラのその言葉に、周囲の若者達はもっともらしく頷いては、冒険者達のコップ
に酒を注ぎ入れようとします。
どうも、長い夜になりそうです。
3.コボルドの襲来
ここまで順当にシナリオが進めば、冒険者達はカイラに明日の道案内を頼み、コボ
ルド退治の支度を整えていることでしょう。もしかしたら、冒険者達は徹夜を覚悟で、
若者達と酒を楽しんでいるかもしれません。いいですね、非常に結構。マスターはプ
レイヤーにこのシナリオはとても「お手軽」なシナリオなのだと、ハッキリ印象づけ
て下さい。
この日の深夜、コボルド達がハイラ村へ来襲します。深夜午前零時、村のほとんど
の住人はぐっすりと眠りこけている時間、一匹のコボルドが村の南側の一軒の鶏小屋
に侵入しようとするのです。コボルドの侵入に気がついた鶏は、村中に響き渡るほど
の鳴き声をあげるでしょう。
なお、今後当シナリオに出てくるコボルドは全て、ルールブックに載っている標準
の個体と全く同じ能力値を持っていると考えて下さい。
[3ー1]冒険者達が午前零時、宿の外を歩いていた場合
コボルドは午前零時、村の北側に位置する森から一匹で村に侵入します。夜の闇の
中、コボルドは村人に見咎められることはありません。コボルドは村の中を数分ほど
歩き回った末、村のやや南側、村長宅から南に数百メートルほど離れた場所に建つ一
軒の鶏小屋に押し入ろうとします。
この時、村の警戒、夜風に当たりたかったなどの理由で、冒険者達の一人以上の人
間がこの時間帯に村の中を出歩いていた場合、このコボルドの侵入に気づく可能性が
あります。このような行動を取っている冒険者は「冒険者レベル+知力ボーナス」を
基準値に成功ロールをしてみて下さい。目標値は9ですが、明かりを持ってない者、
回りを警戒すると宣言していなかった者にはそれぞれ−2のペナルティーが与えられ
ます(このペナルティーは重複します)。
ロールに成功した冒険者は、暗闇の中で小走りに駆ける小さな人影を発見します。
明かりを持っている者なら、その影の鼻面を突き出した犬のような顔を目にすること
が出来るでしょう。以前に怪物判定に成功した冒険者は、その影がコボルドと呼ばれ
る妖魔であることに気づきます。
コボルドは冒険者に発見されたことに気がつくと、全力移動で村の南側に向かって
走り出します(森のある方角とは逆の向きです)。このコボルドを追跡するには、冒
険者が暗視かインフラビジョンの能力を持っていなければいけません。これらの能力
を持ってない冒険者は、コボルドを見失わないためには毎ターン「冒険者レベル+知
力ボーナス」を基準値に目標値8のロールに成功する必要があります(明かりを持っ
ていて、その明かりの照射範囲内にコボルドがいる場合はこの判定は不要です)。コ
ボルドを見失わずに6ターンの間追跡を続けられた場合、コボルドが一軒の鶏小屋の
ドアを蹴破って中に入り込むところを目撃出来ます。冒険者達がそれ以前にコボルド
に追いついた場合は、コボルドは(果敢にも)冒険者に向かってボロボロに錆びたショ
ートソードを片手に襲いかかってきます。一度戦闘に入ったコボルドは決して逃げよ
うとしません。冒険者達の中で目端の効く者は、あるいはこのコボルドの行動を奇異
に思う事でしょう。
コボルドが冒険者に発見されたことに気がつかなかった場合、もしくは冒険者達が
誰もこのコボルドの進入に気がつかなかった場合、コボルドはしばらく村を彷徨き回っ
た挙げ句に、村のやや南側に位置する一軒の鶏小屋に忍び込みます。
[3−2]冒険者達が屋内にいた場合
冒険者達がコボルドの侵入に気づくことはありません。コボルドは村をうろついた
末、例の鶏小屋へと忍び込みます。次の「4.鶏小屋」に進んで下さい。
4.鶏小屋
コボルドは途中で冒険者達に殺されない限り、最終的にはこの鶏小屋へ忍び込みま
す。鶏小屋は民家の隣に建てられている堀立て小屋で、中では百羽程度の鶏が眠って
います。
入り口の戸には鍵が掛かっておらず、取っ手のところに一本横木を渡しているだけ
なので、その気さえあれば誰でも中に入ることが出来ます(コボルドはこの戸を蹴破っ
て進入します)。コボルドは小屋の中の鶏を手当たり次第に捕まえ、なるべく多くの
鶏を持ち帰ろうとします。飛び散る羽、鶏の首の折れる音、藁と泥を踏みつける足、
逃げまどう鶏の鳴き声!小屋の騒ぎは村中に響きわたり、この時点で冒険者達を含む
村の多くの者が異常に気づきます。
[4−1]冒険者達が屋外にいた場合
この場合、冒険者達に耳がついている限り必ず小屋の騒ぎに気づきます。冒険者達
が騒ぎの中心へ向かって走る気があるのなら、遅くとも一、二分の間に例の鶏小屋に
まで辿り着くことが出来ます。先ほどコボルドの追跡をしていた冒険者なら、コボル
ドが小屋に侵入してから数ターン以内には到着出来るでしょう。この場合、冒険者達
は鶏小屋の中で必死に鶏を捕まえようとしているコボルドと対峙します。
コボルドはやって来た冒険者に気づくと、それまでに捕まえた鶏を抱えて逃げだそ
うとします。もっとも、唯一の出入口を冒険者に塞がれているため、コボルドが脱出
することはほぼ不可能でしょう。逃亡が無理だと悟ったコボルドは、右手の掴んだ鶏
を錆びたショートソードに持ち換えると、叫び声をあげて襲いかかってきます。
[4−2]冒険者達が屋内にいた場合
目を覚ましている者は、この時よほどの大騒ぎをしていない限りは騒ぎに気が付き
ます。眠っている者でも、「冒険者レベル+知力ボーナス」を基準値に目標値7のロ
ールに成功すれば、鶏の鳴き声に目を覚ますでしょう。屋内にいる場合でも、冒険者
達がすぐに行動を起こせば、数分以内には騒ぎの中心である鶏小屋に辿り着けます。
この騒ぎに気が付くのは冒険者達だけではありません。家の隣に鶏小屋が建ってい
るロドニアと言う村人は、隣の鶏小屋の騒ぎに飛び起きます。彼は数分後、鍬を構え
て異常な鳴き声の響く鶏小屋へとおそるおそる近寄っていきます。さらに時間が経て
ば、他の家でも鶏小屋に近い家から順に明かりがつき始め、多くの村人が寝ぼけ眼で
外の様子を覗こうとするでしょう。
数分以内に鶏小屋に辿り着いた冒険者は、鍬を構えたロドニアと鶏小屋の前で出く
わすでしょう。コボルドはその瞬間に抱えきれない程の鶏を持って小屋から飛び出し
てきます(ロドニアはコボルドの姿を見た途端に腰を抜かし、「コボルドが出たぁ!!
」と大きく叫び声をあげます)。冒険者達の対応が遅かった場合は、鶏を抱えたコボル
ドと村の真ん中で鉢合わせになるかも知れません。冒険者達がこの騒ぎを無視した時
は、コボルドは何とか村人達の捜索を振り切って森の中へと逃げ込み、森の巣穴へと
帰り着きます。
5.襲撃後の鶏小屋
おそらくコボルドは、鶏小屋の中か、その付近で冒険者達と戦闘に入り、そして倒
されることでしょう。コボルドに押し入られた後の鶏小屋はひどい有り様で、興奮し
た鶏が鳴き喚き、小屋の床には鶏の羽や割れた卵、踏み荒らした小さな足跡などを見
ることが出来ます(この小屋には床がなく、足下は地面が露出しています)。レンジャ
ーの捜索を試みて目標値の8に達した者は、この足跡は確かにコボルドのつけたもの
であることが分かります。
コボルドとの戦闘が終わってしばらく経つと、鶏小屋の回りに寝間着姿の村の住人
達が何事かと集まって来ます。彼らはコボルドの死体を見ると皆一様に驚き、今まで
コボルド達が村の中に入ってきたことは一度だってなかったと騒ぎます。実際、今初
めてコボルドを見たという村人も少なくありません。
[5−1]コボルドから得られる情報
冒険者達がコボルドを上手く生け捕りにし、なおかつパーティーにゴブリン語を理
解出来る者がいれば、このコボルドから情報を引き出そうと試みることが出来ます。
例え生け捕りにしたとしても、冒険者達がコホブリン語を喋れない場合は、このコボ
ルドと意志の疎通を図るのは不可能です。以下に、このコボルドか得れる情報を聞き
出しやすい順に並べてみます。
○家畜を盗みに来た事
○鶏小屋は匂いを頼りに探し出した事
○仲間は他にもいる事
○森の中の洞穴に棲んでいる事
○盗んだ鶏は、食料として食べるつもりではない事
コボルドの対応は極めて非協力的で、たとえ縛られていようと、隙あらばまわりの
人間に噛み付こうとします。よほど冒険者側の説得(よりは脅しの方が効果的でしょ
うが)が巧みでない限り、このコボルドは先にあげた情報を喋りません。特に最後の
情報を聞き出すのは至難です。何故なら、この夜二度目の襲撃イベントがこのすぐ後
に発生するからです。現時点で、冒険者達にコボルドをゆっくり尋問する時間はあり
ません。コボルドの尋問にゆっくり時間がとれるのは、後述の「6.二度目の襲撃」
以降です。
[5−2]コボルドの死体
冒険者との戦闘の結果コボルドが死んだ場合、当然そこにはコボルドの死体が残っ
ているでしょう。コボルドはボロボロの革鎧を着、錆びたショートソードを腰に差し
ています。鶏小屋の帰りに殺されたのなら、コボルドの周囲には無数の鶏の羽が散ら
ばっており、ベルトには数羽の鶏がぶら下がっています。冒険者が「冒険者レベル+
知力ボーナス」を基準値に目標値8のロールに成功したのなら、このコボルドは標準
よりは大分痩せていることに気が付きます。ただし、今日明日中に飢え死にすると言
うほどでもありません。
6.二度目の襲撃
初めのコボルドが村に侵入してから数十分後、やはり村の北側の森から、今度は二
匹のコボルドがハイラ村に侵入します。村は今、初めに出現したコボルドの対応で大
わらわ。コボルド達は、騒ぎに目を覚まして外に出ていた一人の子供をさらって森の
奥へと姿を消し、少年を連れて巣穴へ戻ります。
[6ー1]二匹のコボルド
コボルド達は初めの一匹が村に入ったその数十分後、今度は二匹でハイラ村へと侵
入しようとします。よほど用心深い冒険者でも、先に侵入したコボルド対策に気を取
られて、この二匹のコボルドの侵入には気づきません。また、二匹が村を歩いた時間
も一匹目に比べて極めて短く、事実上このコボルド達の侵入を冒険者達が妨害するこ
とは不可能です。
二匹のコボルドは村の北に広がる森から現れ、森と村との間の数十メートルほどの
距離を横切って村の北側へと侵入します。
村はその頃、コボルド騒ぎで多くの人間が目を覚ましています。その騒ぎは村の端
々にまで届き、当然子供たちも例外ではありません。村の北端に住むケーン君は外の
騒ぎに目を覚まし、何事かと様子を覗きに出たところをコボルド達に襲われました。
コボルド達は暴れる少年を二人がかりで担ぎ上げ、北の森の方へと走り去ります。ケ
ーンの母、ネイがその場面を発見して叫び声をあげますが、コボルド達はそのまま森
の闇の中へ消えていきました。
冒険者はこの時のネイの上げた、闇を切り裂くような悲鳴を耳にするでしょう。悲
鳴を聞いた冒険者達が村の北端のケーン少年の家に向かうのなら、そこで金切り声を
上げ続けるネイの姿を目にします。ネイはひどく錯乱しており、時間をかけて落ちつ
かせるか、サニティを使うわない限り、彼女から詳しい事情を聞くことは出来ません。
ネイを落ちつかせることが出来たのなら、冒険者達は彼女から以下の情報を聞き出す
ことが出来ます。
○息子のケーンがコボルドにさらわれた事
○コボルドは二匹いて、森の方へ走り去った事
○ケーンは五才の小柄な少年である事
7.真相
ここで、コボルド達の突然の行動の変化についての原因を書いておきます。元々、
ハイラ村の北の森には、数年前からコボルドの小集団が住み着いていました。しかし
元来が臆病な彼らは、森が豊かで餌にも困らないせいもあって、南の人里の方にはあ
まり近づかず、人間と接触することなく暮らしていたのです。
その、彼らなりに平和な生活を破ったのが、コボルド達の巣穴(彼らは森にある洞
穴に住んでいました)の側に根を張った一本のハンギング・ツリーと呼ばれる怪樹で
した。コボルド達は数匹の仲間をこの樹の養分にされた末に、それ以上の被害を被ら
ないために自分達でこの樹に餌をやることに決めました。これが三ヶ月ほど前の頃の
話です。
初めの内はハンギング・ツリーの満足する量の餌を確保出来ていたコボルド達です
が、徐々に従来の餌場だけでは必要な量の獲物を得ることが出来なくなってきました。
やむなく、コボルド達は狩場を森の全域にまで広げます。その時からコボルド達の姿
が村の猟師達の目に触れるようになってきました。コボルド達は自分達が腹の減らし
たハンギング・ツリーに喰われないために、必死に多くの獲物を求めます。森をさま
よい、足りない分は自分達の喰う餌の分も削って。
それでも餌の不足は補えません。ある日、狩から帰ってきたコボルド達は、仲間が
また一匹、ハンギング・ツリーの養分にされているのを見て、ついに人里を襲うこと
を決意します。この時点で、コボルドの数はわずか六匹にまでに減少していました。
コボルド達の突然の襲来の、これがその理由です。
ハンギング・ツリー
モンスター・レベル=4 知名度=13
敏捷度=10 移動速度=0/6
出現数=単独 出現頻度=ごくまれ
知能=なし 反応=敵対的
攻撃点=蔦:10(3)、
打撃点=8
回避点=蔦:13(6)/本体:10(3) 防御点=3/8
生命点/抵抗値=蔦:6/本体:24/14(7)
精神点/抵抗値=−/13(6)
特殊能力=蔦による吊り上げ
炎に弱い
説明=深い森の奥、樹上から垂らした蔦で下を通る動物を吊り上げ、貪り食らう樹。
この蔦状の怪樹はその巻き付いた樹と合わせて、一般にハンギング・ツリー、もしく
は首吊りの樹と呼ばれ、森で暮らす人々に恐れられています。ハンギング・ツリーは
クリーピング・ツリーの亜種だと言われており、大きな樹にびっしり巻き付いている
蔦という姿が一般的です。
ハンギング・ツリーは樹の枝から垂らした蔦で眼下を通る動物を吊り上げ、強靭な
力で絞め殺そうとします。セージ、もしくはレンジャー技能による動植物鑑定で目標
値13のロールに成功したのなら、近づく前にハンギング・ツリーの正体を見破るこ
とが出来ます。もし、冒険者達がこのロールに失敗した場合は、必ずハンギング・ツ
リーの不意打ちとなり、1ラウンドの間ハンギング・ツリーの攻撃のみが行われます。
ハンギング・ツリーは無数の蔦を使って、一度に数十以上の目標を攻撃できますが、
一つの目標に対しては一回ずつの攻撃しか出来ません。
ハンギング・ツリーは戦闘になれば、1ラウンド目は必ず対象の首を狙って攻撃し
ます(ギャロットによる攻撃と同じです。目標の魔法行使不可、締めつけダメージ、
攻撃点にー2のペナルティー。よって、不意打ちに成功した場合の一ターン目の攻撃
点は12点になります)。その攻撃が命中したものは、次のラウンドの最初に樹上に
吊り上げられてしまいます。ハンギング・ツリーの蔦から逃れるには、蔦を切断する
か、命中時のハンギング・ツリーの攻撃点を目標値に、「冒険者レベル+筋力ボーナ
ス」を基準値としたロールに成功する必要があります。吊られた目標は全行動にー4
のペナルティーを受けますが、自分に絡んだ蔦を攻撃する場合のみ、自動的に攻撃が
命中します。蔦を切断するか、力任せに引きちぎった場合、蔦一本に付き一点のダメ
ージを本体に与えられます。このダメージをハンギング・ツリーは減点できません。
「吊られた」目標がハンギング・ツリーの蔦から脱出した場合、落下によるダメー
ジを受けなければいけません。標準的な成体で、ハンギング・ツリーは目標を五メー
トル程の高さにまで吊り上げることが出来ます。三メートルの高さから落下したもの
として、ダメージを計算してください。
ニラウンド目以降は、通常の締めつけを行ってきます。この攻撃が命中したものは、
やはり次のターンの最初に樹上に吊り上げられます。ただし声は出せるので、各種魔
法の行使が可能です。
また、ハンギング・ツリーはその恐るべき特徴として、蔦はもとより、その本体さ
えもが移動が可能である点が挙げられます。獲物の減少、支えにしていた樹木の倒壊
等で充分な養分が得られない状況では、ハンギング・ツリーは蔦の群塊となって地面
を這いずって移動することが出来ます。この状態のハンギング・ツリーは「緑渦」と
も呼ばれ極めて凶暴であり、生物であるなしに関わらずおよそ周りのものは全て蔦の
群塊に飲み込まれしまうでしょう。「緑渦」となったハンギング・ツリーの攻撃は、
本体の中心から十メートルほどの射程があり、全て通常の締め付けとして解決します。
一度樹から離れたハンギング・ツリーは、獲物の豊富な場所を見つけるまで収まる
ことはありません。フォーセリアでは何年かに一度、人里にまで下りてきた「緑渦」
によって大きな犠牲が出ています。
8.森
村は突然のコボルド達の、それも二度もの襲来によって騒然となっています。この
頃になるとほぼ村の全ての人間が目を覚ましており、ロドニアやネイの家の回りには
村の男達が松明を持って集まって来ます。そんな中、やはり起き出して来たルードが
村の人間に次々に指示を出しているのが冒険者達の目にも入るでしょう。
「おい、青年団の人間は今すぐ村の男たち全員を明かりを持たせて集めてくれ!ネイ
さんのところのケーンがコボルドにさらわれたんだ。明かりが揃ったところから四人
一組みで村の外に捜索に行くぞ。猟の経験のある奴が班に最低一人は居る様にしろ!
ケーンが見つかってもすぐに駆けよるんじゃないぞ!すぐ近くにコボルドが居るって
ことを忘れるな!!」
ルードの指示は的確で、村人達も不平を言うこともなく彼に従ってケーン少年の捜
索に出ます。しかしそのルードも、村人達の中から「夜の森に入るのは少し危険じゃ
ないのか?」と質問が出たときには苦い表情を浮かべます。いかなコボルド相手と言
えども、夜の森の中では大の男でも勝てる保証はありません。また、森の中には、コ
ボルド以上に危険な生き物だってかなりの数が生息しているのです。実際、普段村の
猟師達はよほどの理由があっても、夜の森には踏み込もうとはしません。
[8ー1]冒険者達が森の捜索に協力する場合
冒険者達がルードに夜間の森の捜索の協力を申し出た場合、初めはルードも他の村
人達も村の周りならともかく、森の中は危険過ぎると反対します。特に先のコボルド
との戦いで冒険者達が苦戦をしていた場合などは、村人達の反対はより強いものにな
るでしょう。それでも冒険者達が協力すると言えば、最終的にはルードは冒険者達の
申し出を受け、森の中の捜索を頼むことになります。ルードは土地感の無い冒険者達
に、道案内の猟師を一人付けてくれます。
「誰か、彼等の道案内で森に入ってくれる奴はいないか?」
そう叫ぶルードの前に、村人達の輪から狩人姿のカイラが進み出ます。
「俺しかいないだろ?一番森に詳しいのも俺だしね」
これより、冒険者達はカイラと行動を共にすることになります。カイラが付いてい
る限り、冒険者達が森で道に迷うことはありません。順調に行けば、森に入って二時
間ほどでコボルドの巣穴を発見することが出来ます。
[8−1−1]捜索にコボルドを道案内に使う場合
冒険者達がコボルドの生け捕りに成功していた場合、そのコボルドを森の道案内に
使うことが出来ます(当然、冒険者達がゴブリン語を喋れる必要があります)。確か
に、コボルドがさらった子供を探すのに、コボルドは能力的には最適な案内役なので
すが、しかしその態度は最悪です。観念し、表面的には従順に見えても、コボルドは
虎視眈々と脱出のチャンスを伺っています。わざと回り道をしたり、道に迷ったふり
をするなどの妨害工作も忘れません。
以下に、時間を掛けて尋問した場合に、コボルドから得られる可能性のある情報を
聞き出しやすい順にあげます。
○自分達の巣穴のそばに、三ヶ月前から「吊り上げる樹」が根を張った事
○なるべく多くのエサを確保しないと、自分達が樹のエサになってしまう事
○現在、村に押し入った者も含めて、自分達は六匹しかいない事
○巣穴の正確な場所
コボルドから「吊り上げる樹」の話を聞いた冒険者は、レンジャーかセージで怪物
判定ロールを行って下さい。ここで17(ハンギング・ツリーの知名度13+不正確
な描写による−4のペナルティー)以上の目を出した者は、ハンギング・ツリーと言
う怪樹の存在に思い至ります。
その他、コボルドは「7.真相」の全ての情報を知っています(言う必要はありま
せんが)。
もし、冒険者達が説得(もしくは恫喝)によりコボルドから巣穴の場所の情報を聞
き出す事に成功したのなら、コボルドを連れた冒険者達は森に入って一時間で巣穴に
まで辿り着くことが出来ます。そうでない場合は、コボルドのサボタージュにより冒
険者達がコボルドの巣穴に辿り着くには四時間以上もの時間が掛かってしまいます。
[8−1−2]冒険者達が単独で森に入った場合
森は半径数qに渡って広がっており、土地感のない人間がおいそれと入っていける
場所ではありません。冒険者達がカイラ、その他の案内人無しに森に入った場合、捜
索に一時間費やす毎に「レンジャー技能+知力」で成功ロールを振り、目標値が12
のロールに成功しない限り道に迷ってしまいます。道に迷った場合は、冒険者達は自
動的に2時間のタイムロスを被ります。また夜の間は、例えロールに成功をしても、
冒険者達がコボルドの巣穴に辿り着くことは出来ません。
昼間の日の光が当たっている時であれば、毎時毎の成功ロールで15以上を出せば
コボルドの巣穴を発見することが出来ます。また、10以上を出せば道に迷うことも
ありません。
[8ー2]冒険者達が森の捜索に協力しない場合
ルードは冒険者達にケーンの捜索に協力して欲しいと頼んできますが、冒険者達が
それを突っぱねた場合(コボルド退治以外は依頼外だ、など)、もしくは捜索に協力
しても森の中には入ろうとしない場合、結局森の捜索にはルードとカイラを中心とし
たグループが向かうことになります。
冒険者達が森を捜索しない限り、ケーン少年が無事に戻ってくることはありません。
彼等は捜索途中で三匹のコボルドに遭遇し、そのうちの一匹を倒しはするものの、代
わりにルードが重傷を負った為にやむなく退散します。
○森でのイベント
以下に、森で冒険者達が遭遇する可能性のあるイベントをあげておきます。森に入っ
てから一時間毎に1D6を振り、その出た目に応じてそれぞれのイベントが発生しま
す。この方法では都合が悪い場合などは、GMの裁量で各イベントを発生させてもか
まいません。
1D6で1、もしくは2
一行にモンスターが襲いかかってきます。GMは適宜、次に挙げるモンスターを出
現させて下さい。適当にダメージを与えれば、モンスター達は皆逃げ出してしまいま
す。
○バイパー×1
○ジャイアント・センティピード×1
○バット×3
1D6で3
冒険者達は森の中で一匹のコボルドと遭遇します。「冒険者レベル+知力ボーナス」
を基準値に目標値が10のロールに成功した場合、冒険者達はコボルドよりも先に相
手を発見することが出来ます(夜間で明かりを持っている場合、冒険者側はこれに−
2のペナルティーを受けます。パーティー全員が暗視の能力で無灯火で歩いているの
でない限り、このペナルティーを外すことは出来ません)。
このコボルドは、自分達が食べる為の食料を採取する為に森を歩いています(ハン
ギング・ツリーは肉しか食べませんが、コボルドは雑食です)。このコボルドは前述
の「[8−1−1]捜索にコボルドを道案内に使う場合」で書いた、コボルドから得
られる可能性のある情報を全て知っています。
コボルドは冒険者達の姿を見つけると、一声叫び声を挙げて巣穴の方へ走り出しま
す。冒険者達がそれを追いかける場合の処理は「3.コボルドの襲来」の時と同じで
す(要暗視かインフラビジョン、無い場合は「冒険者レベル+知力ボーナス」を基準
値とした目標地8の成功ロール)。このコボルドを数分ほど追いかけられればコボル
ド達の巣穴へ辿り着くことが出来ます。冒険者達が隠れているのを気づかれなかった
場合、コボルドは三十分ほど食料を探した後、歩いて巣へと戻ります(三十分も延々
と隠れ続けることは難しいでしょうが)。
冒険者達との戦闘によってこのコボルドが殺された場合、その場にカイラがいれば
「ここら辺りがコボルドの一番よく見かけるところなんだ。きっとこの近くに、コボ
ルドの住処があると思うんだけど」と指摘します。冒険者達がそれに同意をして辺り
を捜索すれば、数十分ほどの捜索の末にコボルドの巣穴を発見します。
このイベントは一度だけしか発生しません。
1D6で4以上
なにもイベントは起こりません。
9.コボルドの巣穴
冒険者達は数時間ほどの探索の末に、森の一角で丘のように地面が盛り上がってい
る地点を発見します。丘の腹にはぽっかりと洞穴が口を開いており、その入り口には
一匹のコボルドが所在なげに立っているのが見えるでしょう。この洞穴がコボルド達
の巣穴であり、ケーン少年が連れ去られたのはここです。巣穴は丘の中心を貫いて通っ
ており、こことは反対側の地点にもう一つ出入り口が存在します。ただし、そのすぐ
脇にハンギング・ツリーが根付いた為、現在は使用されていません。
(注:このMAPの縮尺はかなりいい加減です)
周辺A
冒険者達がコボルドの巣穴を発見する地点です。素穴の入り口にはコボルドが一匹、
見張りをしているのが見えます。松明程度の明かりならともかく、ライトなどの大き
な明かりではこのコボルドに気づかれてしまうでしょう。コボルドを案内に連れて来
ている場合、コボルドは大声を上げたり足を踏みならしたりして、何とかこの仲間に
冒険者達の存在を知らせようとします。
森からコボルドの立っている巣穴までは、およそ十メートルほどの距離が空いてま
す。
出入口B
二つある出入り口の内の一つで、現在コボルド達はすべてここから巣穴に出入りし
ています。見張り役に一匹のコボルドがつっ立っており、何か異常があれば叫び声を
上げて部屋Cの仲間に警告し、自分はショートソードを抜いて切りかかってきます。
部屋C
コボルド達が数匹、ここでたむろしています。入り口Bの仲間が異常を知らせれば、
この部屋にいるコボルド達はその次のターンには、入り口Bに武器を構えて辿り着く
事が出来ます。
分岐点D
Yの字型に通路が分岐しており、片方は部屋E・Fへ、もう片方は部屋Gと出入口
Hへつながっています。
部屋E
縦横六メートルほどの空間で、部屋の両端に、それぞれ分岐点Dと部屋Fにつなが
る通路が開いています。この部屋中にすえた臭いのする藁が散らかっており、昼間、
コボルド達はここで寝ています。
部屋F
部屋Eに比べて一回り小さい空間です。コボルド達はここを食料庫として使ってい
ましたが、食料のあらかたをハンギング・ツリーに食べられてしまった現在、地面に
生ゴミの欠片が転がっているだけです。
部屋G
分岐点Dから出入口Hまでの通路のほぼ中央に有る脇道の先に、コボルド達が物置
代わりに使っている部屋があります。直径四メートルほどの空間で、ここにはコボル
ド達の集めたガラクタが乱雑に積み重ねられています。ここに金目のモノは何一つと
して有りません。
出入口H
分岐点Dから十五メートルほど進んだ先に、この出入口Hが口を開いています。こ
の出入口のすぐ外にはハンギング・ツリーが根を張っているため、コボルド達はハン
ギング・ツリーに餌をやりに行くとき以外、ここを通ろうとはしません。
○コボルド達の人数の変化
コボルド達の総数は六匹で、これには外に出て活動をしていた個体(鶏小屋に押し
入った一匹、村の少年をさらった二匹、夜に森の中を歩いていた一匹)も含みます。
以前の冒険者達との遭遇等により倒されたものがいれば、その分の数を「部屋C」に
いる個体から引いておいて下さい。
出入口B
昼夜関わらず、常に一匹のコボルドがここで見張りをしています。
部屋E
昼間、二匹のコボルドがここで睡眠を取っています。夜間は誰も居ません。
部屋C
昼夜関わらず、常に三匹のコボルドがたむろしています。
森の中
夜間、二匹のコボルドが食料の採集に出払っています。昼間は全員が巣穴の中に引
き篭もっています。
10.コボルド達との戦闘
冒険者達とコボルドは、おそらく出入口B付近で戦闘になるでしょう。見張りのコ
ボルドと戦闘になった場合、その次のターンには部屋Cからの増援が戦闘に加わりま
す。部屋Eで寝ていたコボルドは、戦闘が始まって四ターン後に増援に現れます。巣
穴の通路は幅が一メートルほどしかなく、人間サイズの者は一列にしか並べませんが、
コボルドは二匹並んで戦闘をすることが出来ます。
ここのコボルドは士気が高く、たとえ勝ち目がないと分かっても戦闘を止めません。
途中、傷を受けた一匹のコボルドが後ろに逃げようとしますが、おびえた視線を背後
の通路の奥に向け、また戦闘に参加します(ハンギング・ツリーを恐れているので
す)。
しかし、コボルドは最後の一匹になると剣を投げ捨て、通路の奥へと逃げ始めます。
途中で冒険者の手にかからない限り、このコボルドは分岐点Dを抜け、出入口Hへと
向かいます。夜間で有れば、明かりを持っていない冒険者はこのコボルドを追跡する
ことは出来ません。
コボルドは冒険者達に追われ、目蔵滅法、出入口Hから逃げだそうとします。しか
し、ハンギング・ツリーはそれを見逃すはずがありません。コボルドは出入り口Hを
抜けた途端、頭上から襲い来る蔦に首を絞められて吊り上げられてしまいます。たと
えすぐ後ろを冒険者達が追いかけていたとしても、事前にハンギング・ツリーの存在
を予想していなかった場合は、「冒険者レベル+知力ボーナス」で目標値10のロー
ルに成功しない限り、コボルドが突然消えてなくなったかのように見えるでしょう。
このロールに成功した者、もしくはハンギング・ツリーの存在を予想した上でこの
コボルドの吊り上げられた様を見た者は、次のハンギング・ツリーの不意打ちを防ぐ
ことが出来ます。
11.ハンギング・ツリー
コボルドを追いかけて、もしくは巣穴にはさらわれたケーン少年が居ないと気づい
て、冒険者達は出入口Hに向かうでしょう。
出入口Hの外には、出入口Bと同じように辺りを取り囲むようにして森の樹々が生
えており、そこに一本の古木に絡みついた姿でハンギング・ツリーも存在しています。
頭上の枝からは蔦に絡みつかれた動物の亡骸が幾つもぶら下がっており、中には以前
「吊られた」コボルド達の姿も見受けられます。
その、ハンギング・ツリーの根元にケーン少年が横たわっています。ケーン少年が
すぐに蔦の餌食にならないのは、動いている者を狙うというハンギング・ツリーの習
性が、眠っている少年をさし当たっての餌と見なかっただけの話です。朝が来て、ケ
ーン少年が目を覚ました時、蔦は容赦無く少年の首に巻き付くでしょう。よって、ケー
ン少年がさらわれた翌朝以降にここに辿り着いた場合、冒険者達は頭上に揺れる少年
の死体と対面することになります。
出入口Hからハンギング・ツリーまでは六メートルほど離れており、H地点からハ
ンギング・ツリーの根元にまで駆け寄り、少年を抱え、また引き返して来る(もしく
はそのまま周囲の森の中へ逃げる)までに最低三ターンの時間が必要です。少年を抱
えた冒険者が蔦に捕まった場合、締めつけのダメージは少年にまで及びます。少年の
生命力は六点ですので、まともに巻き付かれれば即死でしょう。GMは冒険者側の戦
力に不安があるのなら、蔦による攻撃回数を三回程度に減少させてもいいと思います。
ここでは、幸運と機転が冒険者に味方をしない限り、ケーン少年の生存は難しいで
しょう。
12.緑の渦
「11.ハンギング・ツリー」の項で冒険者達がハンギング・ツリーを倒した場合、
その時点でこのシナリオは終了します。状況によっては一、二匹のコボルドが生き残っ
ているかも知れませんが、彼らにはもう人間を害する力は残っていません。放ってお
いても、より人里離れた森の奥へと移り住むだけでしょう。「冒険の結末」へ進んで
下さい。
しかし、ハンギング・ツリーが生きているのなら、冒険者達がケーン少年の救出に
成功したとしても、まだシナリオは終わりません。餌に逃げられ、自分に餌を貢いで
いた妖魔達の消失を関知したハンギング・ツリーは、本能的により餌の多い場所へと
移動を開始します。何者をも飲み込む緑の渦巻は、地面を這い進みながら、真っ直ぐ
にハイラ村へめがけて突き進むのです。
[12−1]最後の依頼
村に戻った冒険者からハンギング・ツリーの話を聞いた村の猟師達は、すぐにその
ハンギング・ツリーの凶暴な習性に思い当たります。そして、かなりの確率で「緑渦」
となったハンギング・ツリーが、豊富なエサを求めてこの村に襲いかかってくるだろ
うことも。
村は騒然となり、村中の男達が手に手に武器を持ち、村の北端に柵を造ってハンギ
ング・ツリーの来襲に備えます。村の青年団のリーダーであるルードは、ここでも男
達を率いて急拵えの櫓を組み、武器を配布し、女子供を避難させたりと指示を飛ばし
ています。
そんな緊張した雰囲気の中、村長のイダールが冒険者に話をしたいと言ってきます。
「『首吊りの樹』か。コボルド共が突然にやって来たかと思ったら、まさかそんなも
のが森に根付いていたとはなぁ。しかし、わしらはあんた方にはコボルド退治を頼ん
だんじゃ、これで、取りあえずはあんた方の仕事は終わった。これが礼金じゃ、確か
めて欲しい」
イダールは、依頼料の残りを冒険者達に渡します。
「出来れば、あんた方に森から来るだろう「緑の渦」を、村の男達と供に撃退する手
伝いをして欲しい。しかし、残念ながらわしらにはもう金が残っておらん。いくらか
き集めても、せいぜい千ガメルがいいところじゃろう。これしきの金で、村に何の義
理もないあんた方にはとても無理は言えん。
しかし、もう一度依頼させて欲しい。この村を守るために、是非もう一度、力を貸
してもらえんじゃろうか?」
追加の金額としての千Gは、イダールにとってはぎりぎりの数字です。冒険者達の
弁舌が如何に巧みであっても、これ以上報酬額を吊り上げることは不可能です。ここ
で依頼を断った場合、イダールは溜息をついて引き下がり、村の男達だけで「緑渦」
と化したハンギング・ツリーと戦う決意を固めます。そしてその結果、村の男達の半
数近くが犠牲になるでしょう。このニュースは近隣の街や村に瞬く間に広がり、その
後長い間、この事件に関わっていた冒険者達は臆病者の烙印を押されて生きることに
なります。「冒険の結末」へ進んで下さい。
[12−2]緑渦との戦闘
たとえ冒険者達がコボルドを倒さなかったとしても、いずれは餌を供給出来なくなっ
たコボルド達は「吊られ」、ハンギング・ツリーは人里へ降りてくる事になるでしょ
う。
ハンギング・ツリーは、コボルド達の死から半日程度で移動を開始し、数時間でハ
イラ村の北の森から、緑の蔦の群塊という姿で出現します。「緑渦」となったハンギ
ング・ツリーは、この地点から村まで、およそ三ターンほどで辿り着くことが出来ま
す。
対する村人の戦力は、火矢を持った猟師が三名、普通の弓矢を持った狩猟の経験が
ある男達が四名、手に棒や鍬などを持った男達が十名ほどです。このうち、カイラを
含む三人の猟師以外は実質的な戦力にはなりません。猟師達にしたところで、攻撃は
全てハンター技能頼みであるために、ハンギング・ツリーの蔦から身を守ることは出
来ません。猟師達の火矢は、一人一発につき一点のダメージをハンギング・ツリーに
与えることが出来ます。村人達について詳細なデータが必要な場合は、以下のものを
参考にして下さい。
ハイラ村の猟師
モンスター・レベル=1 知名度=−
敏捷度=10 移動速度=10
攻撃点=火矢:10(3)
打撃点=7(火に弱いハンギング・ツリーに対しては9)
回避点=7(0) 防御点=3
生命点/抵抗値=10/8(1)
精神点/抵抗値=10/7(0)
ハイラ村の村人
モンスター・レベル=1 知名度=−
敏捷度=10 移動速度=10
攻撃点=矢:8(1)
棒:7(0)
打撃点=矢:4
棒:3
回避点=7(0) 防御点=3
生命点/抵抗値=10/7(0)
精神点/抵抗値=10/7(0)
冒険者達の報告と行動が適切且つ迅速であれば、ルードの指揮の元、村の北端に見
張り櫓と柵が建てられます。櫓の高さは六メートルあり、火矢を持った猟師と弓矢を
持った村人が各一名、櫓の上で森を見張っています。また、村と森の間に備えられた
柵は、わずか一ターンですが、ハンギング・ツリーの突進を食い止めることが出来ま
す(この柵によって、ハンギング・ツリーが森から村に辿り着くまのに四ターンの時
間が必要となります)。
以上が、村人達の戦力の全てです。冒険者達がこの村人達をハンギング・ツリーと
の戦いで前線に押し出せば、村人達には非常に大きな損害が出るでしょう。冒険者達
が最少の被害で事件を解決したいのであれば、彼らを直接戦闘に参加させるべきでは
ありません。
何にしろ、決して逃げることのないハンギング・ツリーとの戦闘は、このシナリオ
最後のイベントとなります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
男達が武器を握り、緊張した面持ちで森を見つめていた。
森の奥から、うねり、ざわめく音が聞こえてくる。
樹々を踏み倒し、草を薙ぎ払いながら近づいてくる音。
ザワッ
風が駆け抜けた。鳥達が飛び立つ。
騒ぎ立てる鳥の声。それを圧っして響く、ざわめきの音。
ズザザザザザザザザサザッッッッッッ
「来たぞ!」
櫓の上の猟師が、警告の声を上げた。
森の隙間からこぼれ出る蔦。溢れるように、押し出されるように、蔦は次々に森を
抜けて村へと押し寄せる。
「あれが、緑渦か……?」
あんなものに、このちっぽけな棒っきれが役に立つのだろうか?村の男は、その思
いを口にはしなかった。一度口にしてしまえば、怖れで立っているのだって無理にな
ることを知っているから。
無数の蔦は絡み合い、渦巻きながら餌を探す。
エサだ。
あそこにいるぞ。
渦は、貪欲な蔦を広げる。
喰ってしまえ。
次の瞬間、
緑の奔流が男達に襲いかかった!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
冒険の結末
冒険者達が、恐るべきハンギング・ツリーの奔流からハイラ村を守りきった時点で、
このシナリオは終了です。イダール村長から約束の報酬を受け取り、村を救った英雄
としてもてなされるでしょう。
逆に、「緑渦」と化したハンギング・ツリーとの戦いに参加しなかった、もしくは
戦いで負けてしまった場合、多くの村人達は命を失い、村は滅茶苦茶に破壊されてし
まいます。ハイラ村の再建には、今後何十年もの月日が必要となるでしょう(イダー
ルはそれでも冒険者に報酬の残りを渡そうとしますが、それを受け取るかどうかは冒
険者次第です)。
コボルドを全滅させ、ハンギング・ツリーを撃退したキャラクターには、1000
点の経験値が与えられます。ハンギング・ツリーの撃退に失敗した場合、キャラクタ
ー達には500点の経験値しか与えられません。また、さらわれたケーン少年の生死、
逃がしたコボルドの数、死んだ村人の数によって、この経験値は増減します。
○ケーン少年を生きて救出した場合
+500点
○コボルドを取り逃がした場合
−(逃げた数×50)点
○ハンギング・ツリーによって村に大きな損害が出た場合
−500点
○村人の中から死亡者が出た場合
−(死んだ人数×50)点
軽いコボルド退治のつもりで初陣に出た冒険者は、エライ目にあって冒険者の店に
帰ってきました。店のマスターは洗い物の手を止め、冒険者達に向かって嬉しそうに
こう、声をかけてきます。
「よう!どうだった?楽な仕事だっただろう?初めはどのパーティーだって、そうい
う簡単な仕事をこなしていって大きくなっていくんだ。次からは、もっとしんどい仕
事もやって貰うぜ。冒険者に相応しい仕事をな!
…顔色が優れないようだが?」
[GMに対する演技指導]
導入、そして序盤にかけて、プレイヤー達に「このシナリオは楽勝だな」という意
識を徹底して刷り込んで下さい。そうすれば、コボルド達の夜襲もかけやすくなるし、
「首吊りの樹」のインパクトも増すというものです。プレイヤーがGMに騙され、
…もとい、このシナリオが実は難しいのではないかと思うのは、ハンギング・ツリー
に首を吊り上げられてからでも十分でしょう。勘のいいプレイヤーは「士気の高いコ
ボルド」に対し疑念を抱くでしょうが、GMは適当に質問をかわして下さい。それも
伏線の内です。
このシナリオでは、コボルドの突然の変節の理由をプレイヤーが理解してくれなけ
れば、面白さが半減してしまいます。ハンギング・ツリーに供えられたケーン少年と、
くびり殺されたコボルドの死体が枝にぶら下がっているのを見てもプレイヤーが変節
の理由に気付かなかった場合、ルードやカイラの口から「もしかしたら…?」という
形で知らせてやって下さい。
また、ルードやカイラ等のNPCは、シナリオではかなり有能な人物として描写し
て有りますが、プレイヤー達が慣れていれば、もう少し「抜けた」キャラクターとし
て扱ってもよいでしょう。やはり、活躍の場面はNPCよりはPCの方に優先したい
ものです。
ちなみに、最後の「緑渦」の来襲シーンは、アニメ映画「もののけ姫」のオープニ
ングを思い浮かべて下されば、より直接的に理解できることと思います。私は、祟り
神がかなり気に入っております。
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