●能力の検討:INVASION 編

カード効率検討のための資料です。
このページでは、特に INVASION ブロックで発生・頻出する能力についてまとめます。追って「マナ効率」の計算に反映していく予定です・・・



●キッカー/kicker

・どんな能力?

簡単に言ってしまうと『余計にコストを払うと、追加効果が発生する』魔法です。 "kick"には『追加エンジン』というような意味があります:文字どおり、カード性能 を『蹴り上げる』のです。

例を挙げると、Breath of Darigaaz(IV) は通常 CC:1R のSorcery で、地上Creature と全プレイヤーに 1damage を与える能力を持つ魔法ですが、加えて『kicker 2』と いうものを持っています。この『2』Mana を呪文使用時に追加消費すると、ダメージ が1ではなく4に増幅されます。言い換えるとこの魔法は

という2通りの使用方法があるといえます。 この魔法は Sorcery ですが、Creature や Enchantment など、Permanentとなるもの にも適用されています。 『余計なコストを払ってパワーアップ』という概念自体は特に新しいものではありま せん:極論をいえば、Fireball などは『1Mana払う毎に1damage』なわけです。 ただ、kicker は独特なものもありますが・・・

また、拡張セット Planeshift において、更に特殊なキッカー魔法が追加されて います;基本ルールは変わらないですが、kicker 記述が2つあるようなものです。 この場合

・・・という3種4パターンの選択が行えるということです。

・メリット

とにかく、状況によって複数の効果を使い分けることができる。
これが最大のメリットです。

M:tG の基本的な仕組み上、魔法には『CCの小さなものは序盤から使える分、 後半になると決定力不足』『CCの大きなものは使えれば強いが、そのコスト を捻出できるまでに時間がかかる』という特徴があります。
そのため、軽量カードばかりのデッキは後半に持ち込まれたら負け、逆に 重量級カードが多いと序盤がきついという、デッキ全体の傾向に響いていま した。

kicker 能力を持つカードは、基本となる CC は比較的軽量であるために 序盤から使用でき、しかし後半 Mana が多く使えるような状況になればそれ だけ強力な魔法としても使用できるということで、重量デッキにとっては立 ち上がりの安定を、軽量デッキには長引いてしまったときの打開策をもたら すでしょう。

また、一部の kicker 魔法には、その本来の効果とは全く関係のない効果が 付随するケースがあります。例えば CC:2R の 1/1Creauture、Shivan Emissary(IV) は、『kicker 1B 』のコストを払うことで Dark Banishing 相当の効果を発生することができます。この場合、1枚のカードで 『Creature』『Sorcery』の2効果を同時に発生できたことになるわけで、 カードの枚数的得が発生するといえるでしょう。

・デメリット

『Kick』しないで使用する場合、柔軟性のあるカードの標準的な弱点:CC が、同等効果の魔法に比べてやや重いという点が上げられます。一般に、 1Mana程度重めになるようです。

kickした場合には、カードによりけりです。
kickしたほうが強いのは明らかですが、kickのためのコストとその効果の比 率については一概にいえません:今のところ、必ず得・損という傾向はない ように思われます。

またデメリットというにはいささか贅沢ですが・・・kickerの追加の kick コストは、1回しか払えません。例えば先の Shivan Emissary で、『kick コスト1B を2回払って2体を破壊』というようなことはできません。

・友瀬的 Mana 換算

まあ、いい感じかな。
デフォルトのCC== kickなしでのコストは、『マルチモード呪文は 50%増し』 のルールで妥当(kicker呪文は基本は軽量なものが多いので)。
『kick』した場合は、言ってみれば『カード消費なしで、もう1つ魔法使用』 ということで・・・呪文ごとのばらつきはあるものの、カード1枚分の得、 といえそうです。


●Spilit Spell/多重魔法

・どんな能力?

1つのカードに、複数(2つ)の魔法が記述されているモノです:これらの 2つのものは、色も効果もCCも、全く関係のない・・・従来ならそれぞれ が単独でカードになるようなものです。

例えば、Stand/Deliver というカードは、

・・・という二つの魔法が記述してあります。
このカードを使うときには、どちらか一方を選んで、それ用のコストを払います。

・メリット

・メリット 大きく2つの側面があります。

1つは、典型的な『マルチモード魔法』の特性。
1枚のカードで複数の使用方法が認められているため、機能的に無駄になる 可能性が小さいというメリットがあります。柔軟性ということですね。

もう1つは『1枚の魔法でありながら、CC が2種類ある』という点。
何がメリットかというと、2種類のCCを持っているため、最悪の色事故 が起きたとしても「全く使えない」ということがほとんどないのです。 もちろん不本意な使い方になる可能性はありますが・・・

・デメリット

これもマルチモード魔法の典型的なデメリットを2つ抱えています。
単機能魔法よりも割高で、かつ、複数の可能性を持っていても使えるのは1種 だけ、というもの。

複数のCCを持っていますが、それぞれのCCは、同じ機能を持つ単機能魔法 に果に比べて1Mana程度割高なようです。

・友瀬的 Mana 換算

デメリットの記述そのまんまですね。
複数のCCを持っていますが、それぞれのCCは、同じ機能を持つ単機能魔法 に果に比べて1Mana程度割高。

『マルチモード魔法は CC50%増し』というルールそのままで大体OKそうです。
複数の機能でそれぞれCCは設定されていますが、それをそれぞれ、50%増し。 そういうことです。


●土地種依存魔法/Domain Spell

・どんな能力?

プレイヤーのコントロールしている、BasicLand(基本土地)の種類数によっ て、効果が異なってくるカードです。
例えば「山」だけを持っていればX==1。山と平地なら、X==2。山+平地+ 森なら X==3 ・・・というように、効果が強化されていくわけです。

典型的なものは、Tribal Flames(IN)。CC:1R の Sorcery で、効果は『対象の Creatureまたはプレイヤーに、X ダメージ。X は、あなたのコントロールし ている基本土地の種類の数と等しい。』

・メリット

単に『土地が出ているだけ』で効果が強化されていくのが強みです。
5種類の基本土地すべてをコントロールしていれば、この『5』という数字 が効果になってくるわけで、例えば先の Tribal Flames は『CC:1R の5 damage魔法』になるのです。

・デメリット

この系統の魔法はバランス的に「3種類以上の土地」がないと割が合わないよ うになっているようです:ある程度土地を出す必要があることを考えると、ど ちらかというと Duel後半にならないと大した脅威にはならず、土地が2種以 下なら既存の通常魔法のほうが安価・効率的に優れているといえます。

・友瀬的 Mana 換算

魔法としては『3のルール』に引っかかってくるところが面白い。

基本土地は5種なのでどんなに頑張っても『5』が限界、かつ普通3色以上の デッキは難しい(できないことはないが、普通は特殊土地を多用して Basic Landは使わない)ので、3種くらいで『お得』なものはなんとか使えるか。


●ゲイト魔法/Gating

・どんな能力?

 Permanent に付随するもので、その Permanent が inplay したら、 指定色の他の Permanent を手札に戻さなければならないものです。

 類似したもの(出すために他のPermanent を戻す必要がある)は以前 からあるにはありますが、Planeshift で出現した Creature群はシリーズ 提供&非常に強力であるため、あえて記述します。

 ちなみに Planeshift で登場したこれらの Permanentは、すべてマルチ カラー。プレイした際には通常「自分と同じ色のもの」を戻すように要求 されます。
 例えば CC:1RB の Lava Zombie(PS) を場に出すには、赤か黒の Creature を戻す 必要があります。そのため、該当色の Creatureが場にいなければ使用する ことができません(厳密には、使用できるが、「自分自身を戻す」ことに なる)。

・メリット

 何といっても、これらの Creatureは、CC に対して異常に強力です。
CC:RG で3/4。 CC:1BRで 4/3 Pumper など。これらを無視するのはちょっと つらいでしょう。

 もう1つ挙げられるのが「Permanent を戻す」ことのメリット。
 普通これは明らかにデメリットなのですが、その Permanet を「再使用」 できるケースなら話は変わってきます。例えば、いわゆる187系 Creature ならばその「Comes into play」効果を再度使用できることになりますし、 他の例では序盤に普通に使った Kicker Creature を戻して「kickして再度 出す」ようなことも可能ということです。

 更に、「戻すべきモノ」は色で指定されており、戻せなかった場合の ペナルティが特にないのも注目点です。
 通常これらの魔法は「戻すべき」条件に自分自身が含まれてしまうため、 他に戻せるものがない場合は自分が戻ってしまうのですが、色やテキストを 書き換えることができれば・・・

・デメリット

 とにかく、「それ単体ではプレイできない」というのがデメリット です。Permanent を戻すにしても、無理矢理書き換えて出すにしても、 この魔法1枚では手も足もでません・・・極論を言えば、この能力を もっている Creature しか手札にない状況では、Creature は全く 出せないわけです。
まあ、Sparkcaster・・・通称射撃Kavu のような例外もいるにはいますが。

 また、「コストが安い」というのも、厳密に言えば「この魔法単体 のCC は安い」というだけで、トータルからみれば決して安価とは言い 切れません。普通 Permanent を出すことには何らかのコストを伴うの で、この魔法を使うということは、「戻された Permanent を出すために 使ったコストを捨てた」ということ。言い換えれば、これらの魔法自体 の使用コストの安さは、戻す Permanent のコストが上乗せされている ということです。

・友瀬的 Mana 換算

Permanent なのでちょっと判りません・・・が。

これらが「安価」といっても、それは Mana にしてせいぜい 1、2Mana。コストから見ても昨今のゲーム環境から見ても、 戻されるモノの CC も 1〜3程度と考えられるため、そうみれば 妥当かもしれません。


●使い魔/Familiars

・どんな能力?

基本的には小型の Creature なのですが、 特殊能力として「指定色の魔法のコストを小さくする」能力をもっています。

TEMPEST に含まれていた Artifact・Medalion に似た能力といえます。

・メリット

呪文のコストを減らせるというのは非常に大きな能力です。
1体では1Manaしか減らせないとはいえ、逆に言えばこれが 2、3体並べば、かなりの大型魔法でさえ1、2 Manaで使える ようになるのですから。

特に、Kicker、Buyback といった「大量 Manaを必要とする」 魔法もあるため、これらの支援としても非常に有力です。

・デメリット

能力こそ強いものの、Creature としては脆弱です。

まあ直接戦闘に参加することは稀だとは思いますが・・・射撃などに簡単に殺されてしまうというのは厳しいところでしょう・・・

・友瀬的 Mana 換算

Permanent なんだよね・・・

まあ、明らかにお得な Creatureではあります:標準的 Creature と比較すれば CC+1程度。そしてこれがいるかぎり、他の魔法のCC が下がるわけで・・・


●Flagger/旗持ち

・どんな能力?

 Creature の能力で、
「相手が呪文や効果を使うとき、旗持ちを呪文・効果の対象にすることが可能  ならば、必ずそれを対象にしなければならない」というもの。

 厳密には、これは白にいる「Flagbealler」という一種の「種族」の能力です。

・メリット

 相手の作戦運用を大きく妨害することができるのが特徴です。
特に「補助魔法で味方を強化しつつ攻撃」するタイプのデッキや、 「Creatureコントロール魔法(除去の類)に頼る」デッキには、 かなり影響を与えます。

 例えば除去魔法について言えば、相手が『除去したい1体』を狙い 撃つことを妨害します。
 例えばあなたが Shock を撃てる状況で、相手が Bird of Paradice と Flagbearer を出していると考えてください。普通「見たら焼け」 ともいわれる Bird of Paradice、すぐにでも焼きたいところですが、 この場合はそうできません:まず、Flager を狙わなければならない のです。

 補助魔法については・・・一番簡単なのは Enchant Creature 系 の魔法。ArmagiroArmor や Rancor といった強力な Enchantを味方に つけてごり押しをするタイプのデッキがありますが、もし相手に Flagger がいればこの作戦は成り立ちません:これらの『強化魔法』 も、相手の Flagger を狙わないとならないのです。
 その意味では、緑デッキのような『除去せず Creature強化で押す』 ようなタイプのデッキではその『強化魔法』が封印されてしまうよう なものなので、なかなかいやらしいのではないでしょうか。

・デメリット

 効果的には無視できない強力なものですが、その分コストはかかり、 そしてその分の効果が意味をなさない状況があるのが弱みといえば弱み。

 例えば、Flagger が強要するのは「狙えるなら狙わないとならない」 ということなので、そもそも「Targetをとらない」ものには無力です。 例えば Wrath of God や Tremor など。

 また、これが1人だけ出ている状況も、効果は半減です:除去魔法は、 いずれにせよ、Flagger を狙ってきます。同様に、相手が大量に除去 手段を持っている場合も厳しいでしょう。結局掃討されてしまうわけで。

・友瀬的 Mana 換算

 Permanent なので厳密にはやりませんが、CC+1くらいで実装されている ようです。
 かなり破格な能力だと思います:どんなデッキも多かれ少なかれ 「Creature コントロール」手段は持っていますが、それの使用方法を 限定してしまうわけですので。


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このページは 友瀬 遙 によるものです。

URL:http://www2s.biglobe.ne.jp/~tomose/mtg/thk_abin.htm (tomose@mua.biglobe.ne.jp)