2. データモデリングと論理学 |
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2.1. 論理学2.1.1. 記号論理学の成立フレーゲは、19世紀末に論理的推論に関わる人間の思考すべてを表現する記号言語(記号論理学)を独力で考案し、それに基づく思考の計算化を体系的に表した。フレーゲは、この記号言語を“概念記法”と呼び、数学の全定理を僅かばかりの論理の公理から証明することにより、カントールの集合論で実現できなかった数学の基礎をしっかりとした岩の上に築こうと考えた。 しかし、フレーゲ論理学は、集合の集合に関するラッセルの逆理を解くことができなかった。というのも、集合の概念がカントールの時代と変わっていなかったからである。クラスという考え方が確立されるまでには、もう少し時間を置かねばならなかった。 2.1.2. 論理学考論理は論理命題の集合で構成する。つまり論理的な真理を表すのは命題であり、全ての命題が全体的に妥当な推論形式にしたがって世界を形成しているかを判断するための体系が論理というものである。ということは、論理にはいくつかの代表的な思考の形式も存在することになる。このように一定の方法によって、人は世界について思考するという発想のもとに命題解釈を整理したのが論理学である。 論理の世界では、客観的であり、解釈に個人差の生じない特定の叙述文を命題という。これは現実世界とは違った世界を作り上げる。例えば、「豚が木に登る」という文は、想像できる。豚も木もそのもの自体はゆるぎない。ある人は太った豚を想像するし、ある人は黒い豚を創造するかもしれない。木も同様で、ある人は青々と茂ったケヤキのような木を創造するかもしれないし、ある人は湖面から突き出た枯れた杉の木を創造するかもしれない。紀元前7世紀のユダヤ人であれば、木といえば絞首刑の台を思い起こすだろう。しかしながら、”豚”が”木”に登るには違いがない。このように、論理学の世界では、現実世界ではありえないことを真として認めるのだということを踏まえておいて欲しい。つまり論理的推論とは、現実世界に存在しない事実を検証することがありえるということである。 ところで、フレーゲの試みた命題の数学的演算は、いくつかのパターンとして集約を見る。そのパターンとは、単純命題の真偽に関係なく常に真を表す命題とその逆に偽を表す命題である。前者を恒真文(一般的には、”トートロジ”)、後者を矛盾律と呼ぶ。 2.1.2.1. 論理学−論証の正しさ
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