1 絵画 絵画では,まず透視図法の研究が進んだ。透視図法というのは,近くの事物が大きく見え,遠くの事物が小さく見えるという当然のことを数学的に処理できる。今まではてきとうに描いていた近景と遠景の矛盾する関係を理論的に解決できるので,たちまち流行し研究を進める画家が続出した。
目で見てはっきりとわかる点では,空の色。以前は金色や真っ青だったが,本物らしい色になった。もちろん描画技術も進んだので,人物がリアルになった。
主題も劇的な変化が見られる。多くはキリスト教の宗教画ではあるが,より生々しくなった。金持ちのパトロンをモデルにした絵もあるので,生々しいと言うより俗っぽくなったかもしれない。さらにはギリシャ神話から主題がとられたりと,キリスト教としてはゆゆしき絵画が出てきたのだが,そこは抜け目無いルネサンスの画家たちは,キリスト教の洗礼の形を取ったりと,上手に切り抜けた。
構図は安定している。レオナルド・ダ・ヴィンチが三角形の構図で安定を理論化した。不安定な構図だとキリスト教を賛美できないから,当然といえば当然。
陰影を用いて立体感を出した表現が花咲いたのもこのころ。レオナルドはぼかし技法を駆使し,輪郭線に頼らない表現を実現させた。これがさらに進んで,バロック絵画の巨匠カラヴァッジオに到達する。レオナルドは解剖学にも凝った。
2 彫刻
ドナテッロから彫刻は激変したといわれる。まず以前は絶対に許されなかった裸体彫刻が出現したから。その点では彫刻作品はよりギリシャ・ローマの芸術を復興させている。もちろん表現技術的にも復興し,ルネサンス以前の彫刻とは比べものにならない再現性。絵画以上にギリシャ神話の影響がある。でも彫刻は,現在でもそうなのだけれど,人々に見られるっていう公共性が絵画よりも強い。よく素っ裸の彫刻作品がキリスト教のお膝元で許されていたものだ。
ミケランジェロは信じられないほどの造形力でルネサンスを決定付け,そして幕を下ろした。彼の死後は裸体彫刻なんて御法度の時代が来る。
3 建築
建築技術というのは,やはり最先端の技術である。ローマ時代には上下水道を完備させ,ローマ街道を張り巡らせ,大闘技場まで建設できた技術も,帝国滅亡とともに失われていた。ルネサンス期は技術面での復興も進んだ。無骨なだけの建築ではなく,調和と優美さを実現させるための高度な建築技術が発達した。
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