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024 市場をつくる会社 エンロン 2001/12/04 2001/11/11

エンロンという米国企業がある。 2001/11/10付けの新聞にて、小さく身売りに出ていると報道されていた。 前期まで右肩あがりに成長を続けてきた同社にとって、 今期で大幅な赤字になったことが原因と新聞の記事において触れられていたが、 通常の新聞であったために何故赤字になったかまでは書いていなかった。

同社は、市場のない閉鎖的な業界になぐりこみ、『市場を作り出す』というのを 社訓にしたきわめて挑戦的で独創的な会社であった。

大企業の進出していないジャンルを埋めるようなニッチベンチャーが主流であるが、 エンロンの場合は大企業による寡占が進み、 ほとんど競争がなくなっている業界になぐりこみの競争原理を持ち込み、 既に競争をすることを忘れてしまったおじいちゃん企業に挑むのだ。 非常に痛快な企業であったのだが・・・。

このエンロンという企業。一年ほどまえには大いに日本の電力業界を脅かした。 電力業界。この業界にいったいどれほどの競争があるのだろうか?

電信通信業界同様に非競争により作りこまれた巨大な資産により、 すくなからず、消費者にとってはどうにもならない業界であることはかわりがない。

例えば電力会社が値上げをしたからと言って、 消費者には違う会社を選ぶという最終選択肢が無いのだ。

電力会社が経営をおこなうには電力を供給する必要がある。 この発電所の建設費はベンチャー企業がのこのこと勝負を挑めるような額ではない。 しかし、ここに競争原理を持ち込めば、 挑んだ者としてのシェアを獲得し、失敗しても業界第二の企業になることができる。

エンロンは九州に上陸し、手始めに電力業界に勝負を挑んでいる最中である。 今年の初めから九州電力の株価の推移を見ているが、 市場が活性化されてか、九州電力の株価も上昇している。

さらに遡ることほんの数日前、電力に関する規制緩和がおこなわれたと新聞の一面を飾った。 膠着した日本の市場は俄かに動き出したかに見えているが、 これから先はどうなるだろうか?

市場を作り出す会社という発想は非常に面白い。 その会社もまた市場に飲み込まれるかもしれないというのが、さらに市場の面白くも怖いところ。 少なくとも、いまの日本には競争無き強制のもと商品が提供され、 他の業界、他の国に比べて不当な利益を囲い込んでいる人たちがいる。

エンロンジャパンは日本に襲来した黒船と揶揄されたが、 その真価は一年後の今、どのように評価されるだろうか? さらに今から一年後、どのように業界のシェアは変動しているだろうか?

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12月2日米エンロンが米連邦破産法を申請した。 負債額は160億ドル(約2兆円)を超え米史上最大級の経営破たんになるそうだ。 上の記事を書いた時点ではエンロンが身売りに出ていることがショックな出来事だったが、 破綻となると大ショックだ。90ドルを超えていた株価が26セントだと? まじですか!? としかいいようがない。
結果的には資金の総引き上げをくらい資金繰りが困難になったことが破綻の直接の原因らしい。 なぜ資金繰りが困難になったか? 急成長の会社にはよくあることだが、内部調達がまずうまくできない。 あてにしていた外部調達資金が一気に引き上げをくらえばどんな会社だって潰れますわ。そりゃ。 あれだけ有名なアマゾン.comだって一度も黒字を出したことがないというのを知れば、 外部投機からの資金がどれほど重要か量れるというもの。 特にエンロンなどは設備投資に莫大な資金を必要とするので、資本調達困難=致命的だ。 しかし、既存の大企業を脅かす存在だっただけに、NTTを追い詰めたADSLのメタリック通信同様、 『巧妙な罠』に嵌ったのでは? と考えるのは考えすぎだろうか? ほんの数週間前の経済誌にはエンロンが潰れる可能性は低いが…と、前言して最悪の事態を記述している。 米国に金融不安がおきるのではないか…と。現時点ではワタクシ如きは、もはやなんとも。
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