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富山橋の富山流域のブナ林


◇有峰「大多和峠」(ありみね・おおたわとうげ)1250m、北アルプス北部の薬師岳の麓

「この地図の作成にあたっては、国土地理院発行の数値地図25000(地図画像)、
50mメッシュ(標高)を使用しました。

国土地理院の成果の使用・複製に当っては、規定を守って下さい。
ルート記入はカシミールで作成しています。

「ブナの山旅」の著者坪田和人さん(通称BUNAさん)と有峰湖周辺のブナ林を廻って見ました。

BUNAさんと4.2mブナ大木

有峰は山名では無く地域名で、全国あちこちでよく聞く平家伝説の地域ですが、長く陸の
孤島状態だったとの事で、田部重治(富山県出身の学者で登山家、ハイマツを燃やして飯
を炊いた時代からの山行記の草分け)の山行記にも、苦労してこの集落に入る話が出て来
ます。

この有峰集落ですが、県の有峰ダム建設構想で集団移転をし、後に電力会社によるダム建
設で湖底に沈んでしまいました。
又、周辺の山々は県から電力会社の私有に移り、ダム工事用の資材の調達に使われ、ダム
に向いた斜面の大木巨木は次々に切り出され、コンクリート型枠などになったのです。そ
の結果、語るも寂しい歯抜けの山と化した事は、知らない人も多いかも知れません。
しかし、元々立派な原生林だっただけに、残った樹林だけでも普通の人には良い樹林にな
って見えるので、富山県のトップ級の原生林地として自然公園に指定しても、不思議に思
う人はいないでしょう。又、公園として下記の様に自慢すれば、ますます信用が高まると
云うものです。

また、尾根筋には、オオシラビソ、コメツガ、クロベの針葉樹が、斜面には、ブナ、ミズナラといった広葉樹が、そして谷筋には、トチノキ、サワグルミといった広葉樹が生育している。このように、尾根の針葉樹林、谷の広葉樹林が、規則的に織り成す豊かな景観を形成している。さらに、有峰林道沿線には、折立の薬師岳登山口のミズナラ、東谷キャンプ場のカツラ、猪根遊歩道のブナなど、有峰の生き証人のような巨木が姿を見せている。 (富山県治山課HPより)

しかし、この説には多少偽りがある様で、まずかなり広い地域に植林が見られ、試験的で
は有るのでしょうが、外国の樹木を植林しているのはどういう事でしょうか。
寿命が80年程度と云われるシラカンバ(白樺)が多く見られるのは、数十年前に伐採した
二次林が多い事を示し、原生林と云うより人工に近い自然林と云うところでしょう。
比較的良いと思われる猪根山のブナ林では、数本の3m級のブナ大木が見られるものの、
他は細ブナが多く、見栄えのしないブナ林ですし、その他の木々もトチ以外に大木が見ら
れませんでした。

有峰の紹介に「鬱蒼とした原生林に囲まれた有峰湖」と云う文字が並ぶ事が多い様ですが、
果たしてそう言い切れるのかなあと思います。
確かに遠目に斜面を眺めると、鬱蒼としている様に見える山ですが、近づいて見ると意外
に疎らな樹林だったりします。
所々に赤茶けた山肌が見えるのはどうした事でしょうか、大木を切られた斜面の、次世代
の木々の育ちが悪く、斜面が荒れ始めているのだそうです。

今有峰林道は全線2車線化工事が進められています。止めて欲しいとはいいませんが、こ
れにより有峰に残された昔からの樹林が少なくなる事が無い様にして欲しいものです。
まず外国の樹木はすぐに取り除いて欲しいですし、シラカンバの植樹を止め、ブナ植樹に
切り替えて欲しいと思います。
「目指せ200年後の有峰極相林」と言う気の長い構想は持てないものでしょうか。

そんな中で、わずかですが大多和峠付近と祐延峠付近のブナ林は見るべきものが有ります。
大多和峠のブナ林には、幹周4.2m、他3.5〜4m級のブナが数本見られ、今回廻っ
た有峰のブナ林では抜きん出た存在だったのは、昔の有峰のブナ林を物語る一端と思い、
納得が出来たのでした。

まだ切り出しの都合で残されたブナ林が残っているかも知れませんが、幾分にも道が無い
ので見えていても到達する事が出来ません。東谷支流・西谷辺りにもブナ林が残っている
とか、大木情報をお持ちの方がいらっしゃいましたらお知らせ頂きたいと思っています。

全体時間:
ブナ時間:
山行適期:残雪期、無雪期
登山道 :猪根山のみ道有り
交通  :マイカーで、有峰林道で有峰湖周辺道路まで


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