スノーモードドライブのイロハ(雪道を快適にドライブするために)

Contents:
 イ:はじめに
 ロ:スノーモード突入前に
 ハ:雪道ってどんな道
 ニ:駆動方式別スノードライビング
 ホ:おねがいなど
 ヘ:結論



イ:はじめに
 このページに書いてあることは、すべて実体験に基づいています。他のメディアの記事等の受け売りはありません。普通のドライビングテクニックを持った普通の人間によって書かれています。よって基本中の基本的な事項のみで、スーパーテクニックは出てきません。4輪ともスタッドレスタイヤを装着していることを前提に話を進めます。


ロ:スノーモード突入前に

 まさか雪のあることがわかっている場所へ無防備で行く人はいないと信じていますが、たまにそれらしき人を見かけますのでこれだけは準備してほしいものリストを作ってみました。

(1)スノータイヤ又はチェーン(必要)

 雪道を甘く見てはいけません。前に進むこともさることながら、止まるために必要です。

(2)冬用ワイパー(強く推奨)

 降り続く雪の中で唯一視界を確保してくれるのがワイパーです。ところが夏用ワイパーは、ゴムを押さえるスプリング部分がむき出しになっているため、降雪時には凍り付いてしまい押さえが利かなくなって機能しなくなります。こうなると雪だるま式にフロントガラスに雪がこびりついてしまい、まったく前が見えなくなることもあります。このような状態になると危険であるばかりか、運転者のストレスもたまり、精神的にもよろしくありません。冬用ワイパーはこのスプリング部分をゴムですっぽりと覆ってあり、ゴムの材質も軟らかいものが使用してありますので、完全ではありませんが夏用ワイパーよりははるかに視界を良好に保ってくれます。ちょっと高いので、運転席側だけでも交換されることをお勧めします。

(3)長靴(推奨)

 スタックしたときなど、なりふりかまっていられないでしょう。特に冬用長靴はタイヤと同じく雪上でのグリップ力に優れています。トランクの隅っこに入れといて下さい。そうでなくても結構使い道あります。

(4)雪かき(推奨)

 T字型で、先の部分がゴムの板とスポンジ等になっている通称「スノーワイパー」などと呼ばれるものです。手よりは、やはり道具ですよ。雪の荷重って、ばかになりません。燃費も悪くなるし、途中で落ちるのを待っているなんて、他の人に迷惑です。

(5)手袋(推奨)

 スキー手袋でチェーン掛けたくないでしょ。軍手で十分ですが、ボア付ゴム製のものなら快適です(細かい作業には向きませんが)。

(6)黄色のヘッドライト(推奨)

 最近HID装着者が増えてきて、従来のバルブも白や白より白い(?)青系がアフターパーツ市場のラインナップの主流になっているようですね。ところがその白いライトは雪に反射して、道路の境目を見にくくします。黄色だと少しはマシですし、吹雪の中でも視認性がUPします(雪が降っているときの白いライトは目が回る)。我が家の全ての車にはホワイトとイエローの中間色(メーカーによってゴールドとかプラズマイオンイエローとか呼ばれています)のバルブを装着しています。

(7)スコップ(ないよりはいい)

 こんなもん載せたら、他の荷物載らなくなりますよね。登山用のコンパクトなものは高いし、おそらく地元の人でも車に積んでる人は少ないでしょう。スタックしたら地元の方の善意に素直に甘えましょう。

(8)ブースターケーブル(ないよりはいい)

 ひとけのないところに駐車するんならともかく、スキー場なら誰か持ってるだろうし、宿にはきっとあるでしょう。

(9)けん引ロープ(ないよりはいい)

 助け出されるために持っているんなら、「なんて用意のいい人なんでしょう」と感心されることでしょう。スタックしたときは、人海戦術が一番。

(7)〜(9)は、「万が一」のために備えるものですが、そうならないように心がけることの方が大切です。



ハ:雪道ってどんな道

 雪道と一口に言っても、いろんなコンディションの道があります。

(1)積雪路:雪が降り積もった状態の道です。
(2)圧雪路:雪が踏み固められて硬くしまった状態の道です。
(3)氷雪路:いわゆるアイスバーンです。凍り付いています。

 雪(あるいは氷)は、摩擦抵抗がほとんどありません。スノータイヤがグリップするのは、雪とタイヤの摩擦力ではなく、タイヤのブロックが作り出した雪柱のせん断力によるところ大です。ここが夏のアスファルトと大きく違うところです。
 それでは、コンディション別の特徴を述べてみます。



ニ:駆動方式別スノードライビング

 ここでは駆動方式別のドライビングについて述べてみます。

(1)共通:雪道では、タイヤのグリップ力の低さから夏では考えられないくらい低いスピード域でも挙動変化が激しくなります。ただし、その車のサスペンションが想定する荷重域ではないため、雪道での挙動=ドライ時の限界域での挙動では決してありません。夏でも同じことがいえますが、とにかく「タイヤ次第」でどんなふうにでもなります。
 どんな駆動方式であれ、スノードライブ時のプライオリティは「止まること」を最優先させて下さい。夏でさえ難しいブレーキングが、雪の上でそれ以上にできることは決してありません。特に夏の感覚で一気にブレーキを踏み込むと、即ロックしてコントロール不能になります。ブレーキの踏みはじめは、タイヤのグリップと相談しながら、じわりじわりと踏み込んで下さい。
 タイヤは、残り溝の多い方を「前」に履いて下さい。後輪駆動車も同じです。「進むこと」より「止まること・曲がること」が大事だからです。
 ABSを過信しないで下さい。ABSは「止まるため」の装置ではありません。そのしくみを思い浮かべて下さい。ロックしたらブレーキを緩めて、グリップが回復したところで再びブレーキングをする、その繰り返しです。したがって、基本的にグリップしない雪の路面では、グリップが回復するまでの時間が余計にかかる分、逆に制動距離が延びてしまうことがあります。
 車間距離は多めにとるように心がけて下さい。前を走っている車の装備は夏以上に千差万別です。前の車は信用しない方がいいです。追突することが一番みっともないです。
 カーブの先に車がスタックしているかもしれません。くれぐれも「止まること」を頭に置いといて下さい。

(2)前輪駆動車(FF):駆動輪の上にエンジンが載っているので、トラクションはよくかかります。「引っ張る」ことがいかに有利な駆動方式か雪道ならよくわかります。しかし、重量物が前に集中しているため、アンダーを出すとそのまま真っ直ぐ行ってしまいます。また、リアが極端に軽いため、ブレーキング時にステアリングをきっているとリアが簡単にブレイクしますので、コーナーへは直線中でブレーキングを終了させて進入するよう心がけましょう。慣れてくるとタックインと併用して素早い姿勢変化ができるようになります。コーナリング中もむやみにスロットルを開けない方がいいと思います。タイヤのグリップ力は夏ほど高くないので、すぐアンダーが顔を出します。そのトラクション性能からコーナー立上りは速いので、次のコーナーまでのオーバースピードに注意して下さい。

(3)後輪駆動車(FR・MR・RR):後ろから「押す」駆動方式は雪の上ではフロントが抵抗となり、何かと不利です。FRは重量物が分散しているため、コーナリング中の挙動はとても安定していますし、姿勢の制御もスロットルでできます。慣れてくるとブレーキングドリフトが簡単にできるようになります。しかし、リアが比較的軽いため、トラクションは一番かからない方式です。コーナー立上りのテールスライドに注意して下さい。立上りでの大カウンターは、迫力はありますが、前へ進むことなくそのままスピンモードに陥ってしまいます。MRはFRと違い、エンジンが駆動輪の上にあるため、FF同様トラクションがよくかかります。ただ、重量バランスがリア寄りとなるため、ブレーキング時のフロントのグリップ力不足からくるアンダー(というよりロックしてしまう)がでますし、コーナリング中にリアがブレイクすると挙動変化が一気にきます。立上りは上り坂ならFFより強力です。RRは乗ったことがないので、コメントしようがありません。

(4)4輪駆動車(4WD):2輪駆動との一番の違いはトラクションの高さです。ミラーバーンで難なく発進できる(とはいってもただスロットルを開けただけではホイールスピンします)のは4WDだけです。コーナリング中の安定度も2輪駆動車よりあります。少しスロットルを開けた状態でとても安定しますが、そこから踏み込むと、とたんにプッシングアンダーが出てしまいます。カウンターが必要なくらいリアが出たときは、グリップを回復したとたんカウンターを当てた方向に車が向かってしまいますので(実際にはそんなことはありえませんが、挙動は大きく乱れます)、注意して下さい。ステアリングが直進状態のドリフトで立ち上がりが一番速くなります(そりゃそうだ)。とにかく雪の上であろうとスロットルを踏んだ分だけ加速するので、次のコーナー入り口でのオーバースピードは要注意です。止まる性能は他の駆動方式と何ら変わるところがありませんから。むしろ車重がある分止まりにくいと考えて下さい。4WDといえば、エンジンブレーキが4輪に効いて、非常に安定したブレーキングができそうな気もするんですが、それが有効なのは常時4駆の方式に限られます。現在の生活4WDで主流となっているのはスタンバイ式(前後輪の回転差が大きくなった時に4WDとなる方式)ですので、エンジンブレーキは普段の駆動輪にしか効かないことになります。


ホ:おねがいなど

(1)雪道で追いつかれたら、素直に譲りましょう。また、追いついた方も煽ったりしないで、気長に待ちましょう。無理は禁物です。トラブルになっても、水掛け論で終わってしまいます。
(2)そのスピードはテクニックによるものですか?車の性能に頼って走っていると、とんでもないことになりますよ。(道端でささっている車は圧倒的に4WDが多い)
(3)夏タイヤ+チェーンで走っているときは決して無理しないで下さい。特に後輪駆動車はフロントが夏タイヤのままでしょうから、下りのブレーキングは慎重に。
(4)雪道のドライブは精神的な疲れもでます。また、ペースが遅いためストレスもたまることでしょう。休憩を充分とってリラックスしましょう。
(5)対向車がきたら、フォグランプは消して下さいね。あなたにとって「明るくてよく見える」ということは、対向車には「眩しい」ということです。
(6)3シーズン目のスタッドレスタイヤは要注意。ブロックが残っていても、ゴム質が変化しているので、思ったほどグリップしなくなっています。空気に触れないような保管方法を考えて下さい。
(7)雪をつけたままクルマに乗り込んでいませんか?シートに腰掛けて、両方の足を車外で浮かせ、合わせるように「ぽんぽん」としてから乗りましょう。そうしないと融けた雪がフロアカーペット下にたまって、腐食の原因になりますし、室内の湿度も高くなって窓を曇らせてしまいます。


ヘ:結論
 「習うより慣れろ」。体で覚えて下さい。慣れたからといって、無理だけはしないで下さい。初めて雪道を走ったときの気持ちは忘れずにいつまでも持っていて下さい。






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