学校での歯科健診、歯科保健活動について

  学校での歯科健診、歯科保健活動について

    ( 質疑応答集 )



                             平成11年  月

                           駿東歯科医師会公衆衛生部



「歯科医療の現状と歯科保健活動のあり方について」

1,フッ素塗布によるむし歯予防が一部の学校で行われているが、その効果は立証されているのか。また、中学校から開始しても効果があるのか。
 
 フッ素のむし歯予防効果は立証済みです。
 日本におけるフッ素の利用法はフッ素の歯面塗布法(保健所や歯科医院において、およそ9,000ppmの沸度のフッ素を塗布する方法)、フッ素の洗口法(幼稚園や学校において、週1回900ppmまたは1日1回100〜500ppmの濃度のフッ素溶液でぶくぶくうがいをする方法)、フッ化物配合歯磨剤の利用などがありあます。ご質問によると一部の学校でフッ素塗布が行われているということですが、フッ素洗口法の間違いだと思います。
 フッ素洗口ではおよそ30〜50%のむし歯予防効果がみられています。すなわち、フッ素を使用しない群では平均むし歯が10本できたのに対してフッ素使用群ではむし歯が5〜7本であったという意味です。また、萌出まもない歯であればあるほどフッ素の取り込み量は多く、固い結晶の丈夫な歯(フルオロアパタイト)になります。また、中学からでも効果はあります。成人でも歯周病により歯肉が退縮し、露出した歯根面はむし歯になりやすく、そのような箇所にフッ素は有効です。

 フッ素使用については静岡県歯科医師会作成の一般向けリーフレットがありますので、駿東歯科医師会公衆衛生部までお問い合わせ下さい。一冊30円程度

2,フッ素塗布は医療行為になるのか否か。また、薬物を使用することの危険性はないのか。
 
 間1で述べたようにフッ素塗布とフッ素洗口は異なります。学校ではフッ素洗口が行われています。
 フッ素塗布は歯科医師の管理下において行うことが必要であり、しかも歯科医師または歯科衛生士などの専門家によって行われるものであり、広い意味での医療行為であります。しかし、フッ素洗口は濃度も薄く安全性も高いため、歯科医師の指導のもと学校保健法第二条に規定する学校保健安全計画に位置づけられ、学校における保健予防管理の一環として実施されているものです。これから考えると、フッ素洗口は保健行為と考えられます。
 フッ化物応用の安全性に関しては、WHOの勧告もあり世界各国で広く活用され日本においても、日本歯科医師会および日本口腔衛生学会の専門団体は安全かつ有効であるとの見解を示しています。
 学枚におけるフッ素洗口においては、用いられるフッ素濃度とその使用量を間違わなければ、安全性において問題はありません。週1回法ですと、使用洗口液10cc中にフッ素量約9.Omg、洗口後吐き出して口の中に残るフッ素量約1.Omgといわれています。WHOではフッ素は必須栄養素として扱っており、われわれは飲食物から1日平均1.0mg摂取しています。ちなみにお茶一杯あたり0.1mgのフッ素を含んでいます。かりに洗口液を誤って全部飲み込んだとしてもフッ素の急性中毒量は体重1kgあたり2mgなので心配はいりません。むし歯予防を目的としたフッ素の使用量では多くの実験の結果、生理的になんらの有害もみとめられず、また実際に30年以上水道水フッ化物添加を行っている多数の諸外国で、安全性を疑わせるような証拠はみいだされていません。
 しかし、薬は一般的に濃度と摂取量を間違えればどんなものでも危険物になる可能性はあります。学校で使用するフッ素の処方は、学校歯科医、学枚医、学校薬剤師が行しフッ素洗口溶液の管理は養護教諭などが行い、各クラスの担任は洗口の実施において指導や監視をすべきです。                        


3,キシリトールやアパタイトの有効性についてはどうか。

キシリトールは白樺やとうもろこしから精製される糖アルコールの仲間で、ほかにもソルビトール、マルチトール、エリスリトールなどがあります。むし歯予防効果に差はありませんが、キシリトールが砂糖に一番近い甘みを持っています。ミュータンス菌によって代謝されないため、酸を生成しません。キシリトール50%以上であればはむし歯はできないと言われています。吸湿性に富むため飴などの商品にはなりにくく、現在は食品としてはガム、タブレットが主流です。しかし、非常に甘いので味覚形成のうえから甘味嗜好になる心配があります。したがって積極的に食べさせるものではなく、ガムをよく食べる習慣のある子どもに対して、キシリトール入りのガムに代えるという利用の仕方が良いと思われます。食べ過ぎると下痢症状をおこしたりします。キシリトールは食品であり甘味料であって、むし歯の発生を予防する薬剤ではないことを銘記すべきです。 ハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2は歯や骨のミネラルの主成分です。アパタイト入りの歯磨剤の利用は、エナメル質に親和性の高いハイドロキシアパタイトの微粒子を歯の欠損部に吸収させる考え方ですが、欠損部にそのまま吸着するのではなく、唾液中のカルシウムの供給とフッ素イオンの存在が大変重要な因子となります。したがってハイドロキシアパタイトがどの程度歯質の欠損部に吸着するのかはまだはっきりしていません。
  食事をすると口の中が酸性になり、歯が脱灰しますが、20〜30分後には唾液中に十分なリン酸、カルシウムが存在するのでその働きで歯は再石灰化します。したがって高価な歯磨剤を使用しなくても、むしろフッ素入りの歯磨剤の方が安価で、しかもフッ素には再石灰化を促進する作用があるので、歯科専門家はフッ素入り歯磨剤を勧めています。


4,歯科医療の現状を踏まえ、歯科保健活動の望ましい在り方について研修したい。

 歯科医療の現場はいまだに“痛み”の主訴が多く、それに対する治療が主立っているものの、“削って詰める”または“痛いから治す”という従来の治療行為から次第に痛まないようにする「歯および歯周の予防」へと診療体系も保険制度も変わりつつあります。
 一方、学校歯科保健は平成7年度の改正により、従来の「早期発見、早期治療」から「早期発見、長期観察」へと予防保健指導を重視する方向に傾いてきました。それをうけて事後措置に関しても、治療中心から経過観察と予防保健指導に主眼をおいた歯科保健活動が検討され始めています。
 しかしながら、歯科疾患は高い罹患率の割に重篤な症状に陥る危険性は希であるため、児童生徒自身による健康管理意識の啓発を期待することは容易ではありません。そのためには、学校、家庭、かかりつけ歯科医の3者の協力のもと、口の健康の大切さを、ある特定の時期だけでなく常に指導し、児童生徒が「自ら考え、実践行動する」意識を生み出す環境を作ることが大切であります。学校においてはぜひ実技の保健指導だけでなく、教科の中に積極的に歯科保健が導入されることを切望します。


5,歯科疾患を有する子どもはなぜ多く、また減らないのか。

 学校健診のなかで疾病の方が健常より多いのは歯科健診ぐらいでしょうか。浜松市においてむし歯は中学3年生で約5本、高校3年生で約8本です。中学2年生で85%、高校2年生で95%がむし歯経験者です。したがって、むし歯がない子どもを探す方が大変です。 歯肉炎も厳密には40〜50%はあり、30%以上が歯磨きで出血します。歯並びもきれいなこどもは20%ぐらいですので正常咬合は非常に少ないといってよいと思います。ここが医科の疾患と違うところです。
 日本人はまだまだ口の中に関する関心が低く、汚れていて、特に中学生、高校生の口の中の汚れは気になります。爪、頭髪、体毛などに対する関心は高く自分で手入れするけれど、目に見える前歯には歯垢がたまっていて歯ぐきが赤く腫れている子どもはたくさんいます。家庭における生活環境だけでなく、学枚教育の中において歯科健康教育の欠如が一つの要領と考えられます。                      
 したがって子どものうちから口の中に関心を持ち、自分の口をよく観察し、正しいケアーの仕方を学習することは健康教育として大変重要であると考えられます。

                        
6,歯周疾患の低年齢化の環状とその原因、予防法等について教えてほしい。

 歯周疾患は、骨の破壊を伴う歯周炎と歯肉の発赤腫脹を伴う歯肉炎とに区別されます。中学生、高校生ぐらいまでは重篤な歯周炎は少なく、大部分が歯肉炎です。歯肉炎は生活習慣病と同じく、その低年齢化が言われていますが、実状を明らかにした報告はなされていません。その理由はこれまで診査基準が統一されていないため、データの比較を行うことができなかったからです。
 平成5年度の歯科疾患実態調査では、歯肉炎は6歳で18。2%、9歳で39。2%12歳で55。1%と年齢とともに急増しています。しかもこのデータは他の調査に比べて低い数値を表しています。歯周疾患が原因で歯が動揺し、喪失する年齢は40歳代後半です。したがって学枚教育の中でしっかりと予防法を学習することは大変重要です。
 歯周疾患(歯周病)の原因は、むし歯の発生と同様多くの因子が重なり合っていますが、主原因は歯垢(プラーク)です。歯垢は食べかすではなく、細菌の魂です。
 予防法は、ブラッシングによる歯垢の機械的除去が第一であり、その他に食生活の見直し、家庭環境の改善等、むし歯の予防法を準用すればよいと思われます。しかし、歯と歯の間や、歯と歯ぐきの境界部に存在する歯垢は通常のブラッシングでは容易に除去できないといった報告がみられます。
 したがって歯周疾患の予防には自分の口に適したブラッシングの指導をうけて継続実践することと、今後は定期的にかかりつけ歯科医へ受診し、専門的な歯のクリーニング(PMTC:Professional Mechanical Tooth Cleaning)も必要であると指摘されています。


7,カラーテスターの使用は有害でないか否か。錠剤と液体とどっちが安全か。
 
 10年ほど前にアメリカで色素の毒性について研究発表がありましたが、その後、使用は全く害がないとう事で、各国の公的機関から使用が認められています。
 カラーテスターの組成は、錠剤では色素と香料など、液体では大部分が精製水で、色素、防腐剤、アルコール、香料などです。
次に安全性ですが、色素は主に赤色104号が用いられています。これは厚生省令により口紅、リップクリーム、歯磨剤などに使用が認められているもので、その毒性は食品添加物公定書によると急性毒性を表すのは体重1kg当たり2〜3gを経口で摂取した場合で、これを体重20kgの子供に例えると40〜60g(錠剤にして約10000錠)を一度に摂取しなければ問題はないということです。また、慢性毒性、特殊毒性においても問題はありません。その他の香料以外の成分は日本薬局方収載品で安全性に問題はなく、香料も安全性を確認済みです。したがって歯垢染色として、錠剤でも液体でも全く安全です。
 錠剤と液体の使い分けは、大人数を簡単に行うなら錠剤、熟練者のマンパワーがあれば、より確実に染め出せる液体タイプをお勧めします。

8,矯正をしている子供が増えているが、不正咬合の知識が十分でなく相談にのってあげられない。口腔衛生全般について研修を深めたい。

 矯正治療、不正咬合についてご不明な点は学校歯科医にお聞き下さい。それでも疑問がある場合は駿東歯科医師会公衆衛生部に問い合わせいただければ、調べてお答えいたします。
 駿東歯科医師会および駿東歯科医師会公衆衛生部では、これから定期的に研修会を開催して、歯科知識の普及に努めていきます。機会あればぜひご参加下さい。
 矯正治療ほか歯科一般についての参考書籍として、レタスクラブ生活便利シリーズ13「いつまでもきれい歯の健康」(千円)のご一読をお勧めします。   
    

9,歯科健診を通して、不正咬合や顎関節異常の子供が多いことに気づいたが、その治療には保護者の理解が必要であり、養護教諭としてどのような対応ができるのだろうか。

 現在のところ、残念なことに、矯正治療は口蓋裂などを除いて、保険では治療できません。しかし、健診結果歯列咬合2は機能障害につながる恐れがあり、矯正治療をした方が望ましい子供ですので、一度目の検診結果は治療勧告、次回からはお知らせの用紙の不正咬合の所見に丸印をつけ、一度歯科医院に相談されることは勧めて下さい。ただ矯正治療はどこの歯科医院でも相談できるとは限りませんので事前にお調べ下さい。
 治療には当然保護者の理解が必要ですが、治療費用、治療期間の問題で治療を断念する場合もあります。矯正治療を無理強いすることはできないと思います。また、一度治療勧告済みの方は次回から通知のみになっています。
次に顎関節異常ですが、健康診断票の歯列・咬合と顎関節の記入欄は分けましたので、顎関節異常はそれほど多くはないと思います。しかし、顎関節異常は明らかに疾患ですので、顎関節2は歯科医院にて検査を受けるよう指示する必要があります。そのまま放置すると、口が開かなくなったり、痛みや顎のゆがみにつながることもあります。また、一般的には保険で治療ができますが、歯並びが原因の場合はそのための矯正治療は保険は利用できません。
学校での事後処置については、39を参考にして下さい。

10,発達段階に合ったブラッシングや間食指導の在り方について研修したい。

 小学校から中学校の時代には子供たちの口腔内は、乳歯列から混合歯列、永久歯列へと変化します。それに伴いむし歯はもちろん、歯肉炎の予防も考えていかなくてはなりません。さらに歯肉炎の低年齢化についても留意すべきです。また小学生、中学生ではその年齢によって、物事に対する理解力にも大きな差がみられます。したがってこの時期の子供たちに、ブラッシングや間食指導を行なう場合、以上のことを総合的に考慮した上で行なう必要があります。
具体的には、ブラッシングについて言えば、どの年代についても歯垢の染め出しによる自分の目による視覚的なチェックは不可欠です。歯ブラシの使い方を細かく説明するよりも、鏡で見て染め出された部分に歯ブラシを当て、どのように動かしてどのくらい時間をかければ歯垢がとれるのか自分の体で理解することが必要です。そして小学校低学年ではお互いの口腔内をみて仕上げ磨きをし合うことも大変有効な方法です。
最も良いのは、もしできるなら学級担任、養護教論も子供たちといっしょに染め出しを行ない、ブラッシングをし、仕上げ磨きに参加することです。これは家庭内でもいえることなので参観会などにおいて保護者に対する指導も行ない、ブラッシングのレベルアップをはかりたいものです。通常、小学校に入るころになると、子供の親離れが始まります。ブラッシングに関しても、今まで親が仕上げ磨きを行なっていた家庭でも、本人任せになる時期です。実際には10歳くらいまでは自分1人では充分なブラッシングができないのが実状です。
小学校低学年ではブラッシングの動機づけなど理屈を押し付けるよりもむしろ遊び感覚の方がブラッシングに入りやすいでしょう。さらに高学年以降ではむし歯や歯肉炎の原因や経過等を理解きせることにより、自主的なブラッシングを目指すべきです。
間食指導についてはやはり、「好きな時に好きなものを好きなだけはだめだ」ということを生活のリズムとして教えることです。先ほど述べたように子供が小学校に入学するころになると、子供の親離れが始まるし、母親においても仕事を始めるなど子離れが始まります。そこで今まで母親によって間食に歯止めがかかっていたものが、買い食いなど子供の自由になる可能性がでてきます。間食指導は本来家庭で行なわれるべきものですが、学校と家庭と協力することにより、一層の効果を期待することができます。
 スポーツドリンクについては脱水症状を起こしたときなど吸収性が良いなどの理由から、体に良い飲み物と考えている方がいますが、実は糖分を多量に含むものが多く、歯にとってはむし歯を作りやすい危険な飲物だといえます。小学校高学年以後、部活などで水がわりに飲まれる可能性があり、正しい知識を提供する必要でしょう。また最近中学生、高校生などでは勉強をするときに飴を口に含む子供が増えていますが、多数歯にわたりむし歯を作るので十分な注意が必要です。
 また最近、子供の生活習慣病が増えていることから、糖分だけでなくスナック菓子に含まれる塩分の積取にも注意を払うべきです。

11,咀嚼機能と歯の健康という点で研修したい。生涯を通じての歯の健康ということを考え、今後の学校歯科衛生活動の在り方について考えたい。
  
 今、日本ではかつてない高齢化社会を迎え、介護保険をはじめとして高齢者に関する様々な問題がクローズアップされていますが,歯科界における8020(80歳で20本の歯を残す)運動の推進もその1つです。8020を達成された方々を観察してみると、体もとても健康で気力も充実している方が多いのに驚かされます。浜松市歯科医師会の調査でも、多数の歯が残り、歯が健康で咀嚼力が維持されていることが、QOL(生活の質)・ADL(日常生活動作)と大いに関係があり、高齢になるほどその傾向が強いことがわかりました。
 また同調査では全歯牙中(智歯を除く)最も残存率が低い歯牙が下顎第一大臼歯、次いで下顎第二大臼歯、次いで上顎第一・第二大白歯という結果でしたが、8020を達成された方の口腔内を審査してみると、第一大臼歯或いは第二大臼歯或いは両方が残存している人が多く、健全歯数も多いことが明らかになりました。すなわち生涯を通じて歯の健康を考えるならば最初の永久歯である6歳臼歯(第1大臼歯)を長持ちさせることがポイントとなります。これはとりもなおさずできるだけ歯を削らないということを意味しています。
 今までの学校歯科衛生活動というと主に衛生週間におけるブラッシング指導といったところではないでしょうか。しかし現実にはむし歯は減少しておらず、以前のブラッシング指導だけではむし歯を減らすことは難しいし、特に単発的なものではほとんど効果は期待できないでしょう。しかしブラッシングが不必要というわけでなく、CO・GOの経過観察療養中には欠くべからずものであるし、特に今後歯肉炎予防という意味でのブラッシング指導法の確立が必要です。
むし歯の予防に簡単で効果的な方法として、フッ素歯磨剤などのフッ素応用をすすめています。フッ化物による予防を正しく行なえば、再石灰化の促進と歯質の強化ができます。しかも誰が行なっても確実にむし歯を減少できるし、安価で危険も少なく、今後できるだけ早期に取り入れるべきです。
歯列不正、咬合異常、顎関節異常等については養護教論の方々に研修してもらい、知識を深め、子供と歯科医とのパイプ役を果たしていただきたいと思います。
最後にまとめとして今まで以上に養護教諭と学校歯科医との連携を強め、歯科の専門的な分野での相談、歯科に関する溝演会、ブラッシング指導など学校歯科医が活躍できる場を提供してもらうとともにに、学校歯科医をうまく利用していただくようお願い致します。


12,小学校・中学校でやるべき(できる)歯科衛生指導はどうあったらよいか。

学童期は永久歯への交換期であり、また口腔機能の発育を考えても非常に重要な時期です。特に、萌出直後の幼若永久歯は、むし歯になる危険が高く、この時期に適切な口腔内の清掃、及び予防処置を行うことが重要です。学校においては、学校歯科医による衛生指導の他、学枚歯科医の指導を仰ぎ養護教諭、学級担任による継続的な衛生指導を行うことが望ましいと思います。(間10、11の答を参考にして下さい。)


13,歯列・咬合異常の子供、保護者に対して、どのような指導をすればよいのか。

歯列・咬合異常の場合、本人、保護者が自覚していないことが多く、また、その病態、成長発育・全身への影響等の認識は薄いのが一般的です。このため、せっかくの早期発見早期治療の機会を逃すことがあります。どちらも、場合によっては、早期治療をしないために重篤な症状に移行することがあり、したがって、学校歯科保健の立場としては、その病態、及び口腔の発育、全身の発育への影響を説明し、理解を促すことが第一です。その上で、必要に応じ、すみやかに、歯科医師に相談することを勧めるべきです。
                 (間8、9、39を参考にして下さい)


14,よくかんで食べられない子の具体的指導方法について知りたい。

 まず最初になぜ噛めないか口の中をよく調べる必要かあます。大きなむし歯があり、痛くて噛めない・むし歯が多いため噛める歯が少ない。または歯の交換期で萌出している歯が少ない。扁桃腺が大きくて食べ物をうまく飲みこめないなどの原因があるかもしれません。その場合は歯科医院を受診して下さい。
一般的には口の中に疾患はみあたらないけれども、軟食化が進み、噛まない、噛めない子が増えてきました・良く噛まないと、顎発育に影響があるだけでなく、脳の発育、胃をはじめとする消化器官、全身の体力、肥満等さまざまな影響がでます。まずこのことを本人、保護者に良く指導し、食習慣が重要な事を理解させます。家庭では、なるべく噛みごたえのある食事をとるようにします。噛みごたえと噛む力がいることとは違います。噛みごたえのある食品とは繊維質の野菜や肉のことです。するめやビーフジャーキーを好んで食べるのはけっこうですが、何も特別固くなくてよいのです。すなわちキュウリやキャベツは特別固くはないが10回ぐらいではとても飲み込めません。何回もよく噛んで唾液と混じり合うことにより、飲み込めるようになる食品と言う意味です。それから食事中の飲み物はやめましょう。口の中に食べ物が入っている状態でスープや汁、お茶、水等の液体で食べ物を流し込まないようにしましょう。家庭でも、給食でも、具体的にまず両方の奥歯で一口30回噛む等の目標を設定しても良いでしよう。また、だらだら食いはいけませんが「早く食べる」ことを強制するのはやめましょう。


15,中学校では、「歯の衛生週間」としての学校行事を組みにくい現状であるが、何かよい実施例があれば知りたい。
 
 衛生週間の行事は期間的に短く、しかも学校行事であるから効率的かつ学年単位以上の集団を対象とすることを考慮に入れなければなりません。したがって行事の内容としては、学校歯科医、養護教論の講話、生徒の絵画ポスター標語作文発表、既製歯科保健ビデオの活用、保健便りの配布、実技刷掃指導などが考えられます。


16,むし歯予防について効果的な指導方法はどうあったらよいか。
 
 学年単位の年間計画をたて、各学年の指導目標を明確にして長期的展望のもとに実施するのがよいと思われます。しかし、これには校内の協力はもちろんのこと保護者等の協力も必要となり大変なことです。なお問11で述べましたが、むし歯の予防に関して最も効果的な方法はフッ素の応用です。フッ素歯磨剤等のフッ化物を正しく使えば再石灰化の促進と歯質の強化ができます。しかも誰が行なっても確実にむし歯を減少できるし、安価で危険も少なく、今後できるだけ早期に取り入れるべきです。一方、歯磨きのむし歯予防効果は現在まで科学的にはあまり評価できる値がでていません。すなわちその子供に適した質の高い歯磨きの学習をしなければ、現在までの歯磨き方法で1日3回、食後歯を磨いていてもなかなか効果が認められません。
 問1のフッ素、問10のブラッシングと間食指導、問15を参考にして下さい。
 フッ素使用については静岡県歯科医師会作成の一般向けリーフレットがありますので、駿東歯科医師会公衆衛生部までお問い合わせ下さい。一冊30円程度

17,歯科衛生指導が重視される一方でなかなか十分な指導の時間がない。休み時間等の短い時間を活用して効果的で能率的なブラッシング指導をするにはどうすればいいか、よい実践例を聞きたい。
 
 基本的には時間をかけて一度ブラッシング指導をすることがよいと思います。時間の都合でできない場合は、やむを得ず歯垢を染め出して自分で鏡をみてどこが汚れているか確認させ、どのように歯ブラシをあてて動かすと汚れが取れるか自分で考え工夫させることが大切です。汚れが多く、むし歯も多い子供は時々保健室に集め、歯垢染め出しを継続することも必要です。その時は保健委員に手伝ってもらうのもよいと思います。


「健診における問題点などについて」

18,学校歯科健診におけるスクリーニングを考えたとき、歯科ではどこまでが必要なのだろうか。
 
 従来の学校保健、とくに歯科保健は、むし歯などの疾病の早期発見、早期治療という疾病を基礎にした健康診断でありました。平成7年度の学校保健法の改正では、疾病を早期発見し、治療の勧告を行うだけでなく、健康志向の時代に対応した学校の健診のあり方が示されており、健康であるかどうかふるい分けることを目標にしたスクリーニング健診としての性格を強調しています。すなわち0:異常なし、1:定期的観察保健指導、2:精密検査、治療、予防処置を必要にふるい分けることを念頭に置いて診査し判断します。これが学校歯科健診における学校歯科医の判断です。このようなことは単に疾病異常の発見とその予防処置や受診勧告、ならびに観察するなどの事後措置にとどまらず、健康状態を把握し、将来を含む自分の問題として捉え、自主的な健康づくりに役立てることに意義があります。
そこで健診結果のお知らせを全員に渡すことは、その後の保健教育や定期的観察などの事後措置に重要な意義を持つようになり、健康教育活動と密接な連携を持つものとなります。

19,健診内容に口腔内の状態や歯列咬合等の状態も含まれるようになったにもかかわらず、健診時間はこれまで通りであるのが現状です。効率よく正確に行うための工夫について十分に話し合いたい。

20,健康診断票の記載内容が更に詳しくなると聞いているが、養護教諭が記載している現状では、負担が大きく、特に大規模校では大変であるので考慮してほしい。
21,機能的な歯科健診のあり方について、効果的で能率的な健診方法や児童指導、運営方法について情報交換したい。

22,歯科健診用の椅子を使用したり、歯科衛生士が手伝いに来ている学校などでは、大変スムーズに健診が進められているということだが、全体では難しいことなのだろうか。大規模校には、歯科衛生士をつけていただきたい。

 従来の歯科健診において、むし歯だけでなく・不正咬合や歯周疾患も健診用紙に記載するようになっていました。ただ顎関節や歯垢に関しても、すべて記載義務になったということです。つまりたとえば今までの不正咬合の欄は記載がない場合は、健診されたのかその結果異常がないのか判別ができませんでした。今回からはガイドラインが明記され、3つにスクリーニングするようになりました。
 日本学校歯科医会では、今回の改正後の健康診断票に非常に近い形の様式で2年間に数学級でトライアルを行いましたが、いずれも被検者一人あたり1分前後で、従前とそれほど変わらないという結果を得ております。
ただし、学校側と事前の調整がついて顎関節の症状や歯並びの関心度、時々痛む歯があるなどを保健調査で知ることができれば、時間の短縮だけでなく、より正確な診断判が行えると思います。
 効率よく正確にという点では、検査を行う部屋に一度に多くに児童生徒を入れない方がよいと思います。騒がしくて記録者が聞き取りにくい場合があります。検診時の誘導を各クラスの保健委員がアシスタントする方法も考慮にいれてはどうでしょうか。また、時々歯科医院に他人のものではないかと思える健診結果のお知らせを持ってくる児童生徒がいます。健康診断表は各自に持たせて健診のときに記録者に手渡すようにする方が間違うことが少なくなると思います。
また、照明器具や診察位置も重要であり、水平位がとれるような歯科健診用椅子があれば理想的です。一般家庭用の折りたたみ椅子が15,000?2万円ぐらいで購入できるのでぜひ多くの学校で検討して頂きたいと思います。

23,学校歯科医によって健診の仕方が違うのは困る。出来る限り同じ方法や示し方で健診を行ってほしい。

 従来学校歯科健診は学校歯科医の先生にすべてまかせ、健診方法の統一を図る場はありませんでした。たしかに健診データの学校間の格差があまりにも激しいため、学校歯科医を対象とした研修会を開催しました。健診基準と記載内容の統一を目的としましたが、学校歯科医以外の先生方も参加していただき、これからは毎年行っていく予定です。
 また、以前から校医は担当校の健診結果と他の学校との比較ができるような全学校の健診結果の資料をもらっています。したがってこれからは少しずつ改善されていくと思います。
 今後は学校歯科医だけでなく、お知らせの用紙をもって受診する歯科医院側の受け入れ体制の指導統一も考えなければなりません。また、ご希望があれば養護教諭の先生方にも研修の機会を設けます。

24,現在歯の項目がなければ現在歯も言ってくれない歯科医さんがいたり、1人1本の探針がほしいという歯科医さんがいたりとばらつきがある。

 「現在歯の項目がない」はよく意味がわかりません。現在歯を言わないと言うことはたとえば「左下6番C(シー)、あとはむし歯ありません。」というような歯科健診をしているのでしょうか。
 学校歯科医研修会では健診の進め方として、記録者と事前に打ち合わせをして、歯式の欄は右上顎臼歯から始まり、上顎前歯、左上顎臼歯、ついで左下顎臼歯、下顎前歯、右下顎臼歯へと診査するように指導して統一をはかっています。(コの字の順に診査する、順番は反対でもよい)また、健全歯の言い方も「健全」または「あり」と統一するようにしています。もし本当に現在歯を言ってくれないなら現在歯数が記入できず、集計上困ることを学校歯科医にお願いして下さい。
 探針の使用に関しては、学校歯科健診では健全歯や明らかなむし歯に対しては探針の使用は控え、探針を用いる際は、歯質の外傷性破壊をおこさないように、緩やかな圧で、小窩裂溝や平滑面の最も疑わしい部分1カ所を触珍し、むやみに探針を動かさないように注意する使い方を指導しています。したがって全員に探針は必要ないと思います。これも今後統一されていくと思います。


25,喪失歯(△)の標記について、むし歯のための欠損と外傷性の欠損があるが理由を書く必要があるかどうか聞きたい。
 
 理由を区別して記載する義務はありません
定義では永久歯の喪失歯を△として記入する。ことになっていますので,むし歯によるものと外傷によるもののどちらも含まれます。その理由を記入する必要性は健康診断票の記入例には示されていませんが,児童・生徒の健康管理上の記録として、欠損理由がわかれば歯科保健のうえで大変参考になると思われます。むし歯以外の外傷や歯列矯正のため便宜抜去したものについて▲(補助記号)を用いることも考えられますが、学校健診の場で問診等で喪失理由を確認するのは困難な面もありますから、所見欄に理由を記録するかどうかは学校歯科医に相談してください。


26,乳歯の処置歯について校医さんが言わないので、統計処理上や健康診断票の記入の際困っている。 
                            
 処置歯はマルという言い方(記入は○)で統一されています。以前は乳歯の治療勧告を出しても治療してもらえる医院が全国的にも少ない状況でした。したがって乳歯の治療勧告はしないというのが一般的でした。現在はどこの歯科医院でも治療してもらえるようになり、しかもレジンという歯の色に似た材質を使用することが多くなり、健全歯と処置歯との区別がわかりにくくなってきました。レジンにて処置した歯を健全歯として見誤ることはあるかも知れませんが、乳歯、永久歯問わず健全歯、未処置歯、処置歯は記載義務がありますので、校医の先生に事前に「統計処理上記入がないと困るので処置歯も言って下さい」とお願いして下さい。これは何も遠慮なさることではありません。


27,シーラント(健全歯)の記載を導入することの是非について考えたい。

 シーラントの記載については、健康診断票の記入例には示されていませんが、シーラント歯は健全歯として取扱うことになっています。歯科医師会の中でもこのことについては研修をしております。シーラントとむし歯の処置に用いるレジン修復材(白いプラスチックのつめ物)が材質も同じであり,学校の健康診断の場で処置歯と誤って診断されることが考えられます。せっかく予防的な処置をして健全歯を保っているのに、処置歯と娯って評価されるのを未然に防ぐためにも、あえてシという補助記号を用い、記載することにより注意を促すことにしました。また、歯科保健が進めばシーラント歯は増加するものと思われますので、今後の混乱を避けるためにも早めの対策と思っています。


28,健全歯の数に癒合歯は、1本、2本と数えるのだろうか

健全歯としてもちろん数えるべきですが、1本と数えるか2本と数えるかについては、詳細な規定はありません。1本として数えるともう1本が先天欠如なのか未萌出なのか区別がつきにくいので2本とする方が取り扱いやすいと思われます。しかし、処置が必要でない疾病異常(癒合歯、円錐歯など)は、その他の疾病及び異常欄に記入する必要はないです。記号としては/でよいかと思いますが、癒合している歯を線で結びゆの記号で対応すればより丁寧です。


29,歯科健診結果を受けて、GO、COと珍断された歯の治療と、保健指導のあり方について知りたい。また、CO、Cの経過観察の目安について知りたい。

30,「要観察歯(CO)のお知らせをする子が大変多いが、病院への受診はした方がよいのでしょうか。

 CO(歯周疾患要観察者)は歯肉に軽度の炎症症状が、認められるが、歯石の沈着はなく、注意深い歯磨きを続けることにより、炎症症状が消退すると思われる者です。
 CO(要観察歯)はエナメル質の軟化した実質欠損は認められないが、脱灰を疑わせる白濁や褐色斑などのむし歯の初期病変を疑わせる所見を有する歯をいいます。両者とも放置すると歯科医による治療が必要になるむし歯や歯周疾患になるため、学校における保健指導によって予防するため検出することになりました。したがって治療の対象ではありません。
 事後措置は一応学校における歯科保健指導を行い、適当な間隔(2、3カ月?6カ月)にて再健診を実施し、歯肉の炎症の改善がみられなかったり、むし歯の進行がみられ、医療機関での処置が必要と判断できればその時点で、歯科医院に受診するように勧告することになっています。
 学校における保健指導内容は、歯垢の染め出しをして、磨き残しがないよう隅々まで丁寧にきれいに磨く指導が必要です。生活リズムの乱れ、甘味飲食物の摂取も関係します。本来、CO、GOの対象者は数多くいると思われますが、学校において保健指導をする児童生徒が多すぎると、指導が徹底しないため十分な効果が得られないことがあると考えられます。また、マンパワーの不足と時間的制約から学校での保健指導には限界があると思われます。積極的に予防を希望する方も増えておりますので、CO,GOだけのお知らせで受診していただくのも一つの方法です。

31,歯式の中で現在歯は記入されているので、現在歯数を数える必要はないのでないか。労力の割に意味のない作業であると思われる。効率のよい統計処理の仕方を考えたい。

 現在歯数は、児童生徒の歯の健康管理上の基本となる数値です。発達段階に応じた歯科保健指導を展開していくうえで、また児童生徒がどのような状況下にあるかについての全体像を具体的に把握しておくために大変重要であります。そして児童生徒自身にとつても、自分の歯が何本あるのか、ということを知っていることは歯科保健指導をするときに大切なことです。また、発達段階で現在歯数が極端に少ない児童生徒は指導や観察が必要です。このようなことから数値として残すことは意味あることと考えられています。ちなみにC1?C4の数値は平成7年より削除になりました。労力の割に意味のない作業ということだったのでしょう。


32,「正中離開」と診断された子は、歯科医から経過観察でよいという返事がくるが、毎年連絡する必要があるか。

 正中離開の原因は、専門的には埋伏過剰歯の存在や上唇小帯付着異常、側切歯の先天的欠如、側切歯の舌側転位など種々考えられます。したがって経過観察をしながら適切な時期に、過剰歯の抜去や矯正治療などの処置が必要になることもあります。経過観察にて正中離開が閉鎖してくればお知らせする必要はありませんが、正中離開が変化しなければ処置すべき適切な時期を判断していると考えて下さい。よって歯科健診における事後措置として毎年連絡することも十分考えられます。

「健診結果の通知について」

33,歯科医師による診断と健康診断票及びお知らせの仕方について検討したい。

34,保護者や子供が見て、歯科にかかる必要性を理解できるような「お知らせ」の用紙や項目にしたい。治療の必要性(重要性)を理解してもらうための良い方法について考えたい。

35,「治療のお願い」の用紙に記載する内容の明確な基準はどうあったらよいか。

36,案として示された「お知らせ」の紙など、診断基準が明確に示されたり、記入の要領が明記されているので分かりやすくてよいと思った。

 歯科健診結果の事後措置として、平成7年以前もむし歯だけでなく不正咬合や歯周疾患のお知らせをしているところもありました。平成7年の改正により歯列・咬合・顎関節、歯垢の状態、歯肉の状態も前面に出たと考えていただければよいと思います。ただ、今までは歯列咬合や歯垢歯肉について健診用紙に記載がなければ異状なしか検診されてないのかの区別が確認できませんでした。改正後は異常なしも0と記載が必要になりました。
 情報公開、知る権利という見地からこれからは受診者全員に健診結果のお知らせをすることが必要になってくると思います。しかも健診内容の基準は0:異常なし、1:定期的な経過観察保健指導 2:歯科医院受診勧告(治療、検査、予防処置)という大きく3つにスクリーニングして、治療の勧告だけでなくすべてお知らせするのが望ましいと思います。
 今回の改定のもう一つの柱はCO,GOが導入されたことです。これは本来口の中が汚れていて、初期のむし歯や歯肉炎があるこどもたちに学校において経過観察しながら歯科保健指導や予防処置を行うものであります。しかし、該当する児童生徒を集めて昼休みや放課後保健指導を行うことは事実上難しく、また学校だけの問題ではなく、家庭での食生活が大きな影響を与えているので保護者もまじえてかかりつけ歯科医で定期的な保健指導や予防処置を行う方が効果的でかつ望ましいと判断した場合は、受診をすすめる記載を行ってください。
 歯科健診結果とそのお知らせに関して、今回の用紙案は健診結果に対応してお知らせの紙に記入できるよう明確に指示されており、よく検討されていると思われます。むし歯中心の健診から口の中全体の機能まで含めた本来あるべき歯科健診こ改定されたため、一見複雑になったように思われますが、これは学校保健法にて定まったものであり、学枚歯科医部会で専門家が検討したものですのでご理解いただきたいと考えています。なお実務上の不備や問題点があれば今後ともよりよき健診結果の通知に変えていきたいと思いますのでご提言下さい。


37,不正咬合の治療勧告について疑問である。現状からその治療に必要性は理解できるが、1回の受診で解決できるわけではなく費用の負担もあることから、納得のいく指導をする間もなく1枚の勧告書だけで済まされるものとは思えない。
 
 不正咬合の場合は、治療勧告ではなく、健診結果のお知らせだと思います。矯正治療するしないはともかく、一度歯科医院で相談することが望ましい者に治療勧告又はお知らせしています。したがって納得のいく指導は歯科医院で受けるべきです。お知らせを出すことにより、現在の口腔状態を認識してもらい、口腔衛生に関心を持ってもらうことに意義があると思います。確かに矯正治療には長期間必要です。また費用もかかります。しかし、保護者が子供の口腔状態を把握してなく、お知らせをもらって初めて不正咬合に気づいたこともあります。
 
「その他」

38,歯のけがが非常に多いが、学校における応急処置として、どのような対応をしたらよいか。
 歯が抜けて汚れてしまったら、まず流しに栓をして、水道水を流しながら、軽く10〜20秒程度すすいで下さい。このとき、決してゴシゴシ洗わないで下さい。歯を洗うときに、もし目に見える汚れがついていても決してアルコールや石鹸、塩水などを用いないで、冷たい水だけで洗い流して下さい。歯の根っこの表面の繊維を取り去らないことが大切です。この時、歯の根っこの部分は絶対に持たないで下さい。根の部分を手でさわったりして汚すと感染の源になります。その後、牛乳の入った容器の中に入れたままただちに歯科医院に持ってきて下さい。一番よいのはあらかじめ学校において、生理食塩水を用意しておくことです。
大事なことは歯を湿ったまま保つことです。もし歯が抜けてから30分から1時間以内に歯を湿らせたままで治療することができたなら、歯は再び機能を回復する可能性が高くなります。
歯が抜けてはいないが飛び出した場合は、もしできるならガーゼかきれいなハンカチで歯を慎重にゆっくりとおおよその元の位置に差し込んで下さい。
 歯が欠けた場合は、使える場合もありますので大きな破片はいっしょに持ってきて下さい。

39、CO,GO,歯垢付着,歯列交合1、顎関節1の事後指導について

〇印刷物用等の簡単な説明、指導

・CO
むし歯になりかけている歯があります。ていねいなはみがき、正しい食生活を心掛けて下さい。
・GO
歯ぐきが少しはれています。ていねいなはみがきをしてください。
・歯垢付着
むし歯や歯肉炎の原因となる歯垢(細菌)がついています。ていねいにはみがきしましょう。
・歯列交合1
歯並びに少し気になるところがあります。経過観察をして、気になるようでしたら歯科医院へ受診して下さい。歯並びがわるいと、みがき残しが多くむし歯や歯槽膿漏にかかりやすくなります。ていねいなはみがきをしましょう。
・顎関節1
あごの関節にすこし気なる症状があります。しばらく経過観察して具合い悪いようでしたら歯科医院へ受診して下さい。
日頃注意する事:正しい姿勢、両側でかんで食べる、無理に大きな口を開けたり、極端に固いものをかんだり、長い時間くいしばらない。


〇顎関節1、2の児童への日常生活での注意
1、学校歯科健診後、少なくとも半年に一度、学校歯科医またはかかりつけ歯科医の検査を受けてください。
2、食事の際はよくかんで食べ、また片側だけで咀嚼(かむこと)しないでください。
3、いつも正しい姿勢をとり、勉強中あるいはテレビの視聴中等に頬づえをつかないよう、また無意識に強くくいしばる事のないよう注意してください。
4、極端に大きく口を開けたり、非常に固いものを無理にかまないでください。
5、顎関節の症状が悪化したときは、速やかに学校歯科医またはかかりつけ歯科医に相談してください。
6、毎日適度な運動をしてください。
7、あまり気にし過ぎないようにしてください。

顎−2と思われる場合でも、そのときの状況でしばらく顎−1としてようすを見る事もありますので、必要に応じて下記の急性期(痛いときなど)の注意を添付すると良いでしょう。
〇痛みなどの症状が悪化した時は下記の注意を守って下さい。
・湿度の高い状態での寒さを避ける
・何らかの作業、仕事中のくいしばりを避ける
・下顎の急な動きを避ける
・耳前部への圧迫を避ける
・下顎への圧迫を避ける
・勉強や仕事での姿勢の改善に努める
・長時間にわたる緊張の持続を避ける
・痛いときはかたいものをかまない。
・痛いときは長い時間かまない。
・痛いときは左右どちらか痛くない方を使う。
・激しい運動は避ける。
・治らないようなら速やかに学校歯科医またはかかりつけ歯科医に相談する。


40、質問調査について
医科領域では健康状態を総合的に評価するため、健診前に保健調査が行われます。
不正交合や顎関節などについても、健診前にアンケートを行うことすすめています。

〇調査項目の例(項目に丸、はい、YES,□にV、など)
くちのあけしめや物を食べるとき、あごの関節(耳の前)に痛みや音を感じる事がある
くちがあきにくいことがある
歯ならびが気になる
歯ぐきから血がでる
歯が痛んだり、しみたりする
食べ物がのみこみにくい事がある

〇実施にあたっての注意
・上記の歯科単独の質問調査形式にとらわれる事なく、別の方法で保健調査全体の中に組み込んで実施しても良い。学校歯科医が正確に症状を把握できる事が肝要。
・事後指導も含め、個人のプライバシーに注意して行う事。


参考資料


日本学校歯科医会会誌
浜松市養護教諭研修会質問回答集
岐阜歯科医師会なるほどシリーズ
駿東歯科医師会ホーム 資料室資料室へ戻る 公衆衛生部資料室へ戻る