庭匠 平岡嗣雄の初期作品


   

   
calendar(カレンダー)の裏に画いた庭匠 平岡嗣雄第一作目の設計図(1960年)

[ル]作品?
この庭は城が有ってその向こうに滝が見え海が広がっている そんな風景をイメージして設計した池泉式庭園です
いよいよ紙の上の絵(design(設計))が現物に置き替えられる日がやって来た
図面をひく段階で庭を作る楽しみを味わいその図面が更に現物と入れ替わるプロセスはものを作る者にとってこれほど楽しい事はない
先ず意欲、緊張、不安、迷い、孤独、優越感等々が同時に身体全体の機能を動かす
後に成れば此が「遣り甲斐があった」と言う喜びに変るのかも知れないが その最中はそれ等がいり混じった気持のなかで
唯ひたすら完成を目指し感情移入 つまり設計のモチーフで有る風景をいかに抽象化するかに専念していた
だんだん仕事が進むにつれ図面に忠実にしようと考えていてもどうしても図面と現物とのずれが生じてくるこの悩みは庭作りの場合仕方がないことだろう
申すに及ばず庭の素材には規格がなく寸法その他で庭園設計はその段階において無理が有る事は明らかである
例えば石一個の大きさも設計通りにはいかない大きさが少し違うだけで石組全体にひびき誤差を生じ 予期しない石組に変わる事もある
だからと言って設計図は庭全体の地割り全体構想には不可欠なものであるからなくすわけにはいかない
この庭は私が親父(親方)から責任持たせて貰った当時の私にとって二作目の大仕事だけに熱の入れようは唯ものではなかった

記念すべき結婚の年、最初の設計図 若干24才にして味わった最高の気分であった
しかし私の場合仕事面においては絶頂感を得るには そうは短い道のりでは無く簡単にはやって来なかった

何事に於てもその一つ々々が熟すまでには遥かに多い時間を要した
この作品は今の私の目から観れば全体にも部分にもぎごちなく空間構成上も洗練されてない浅い経験が剥きだしの庭だが
情熱だけは今の私には出せないどの作品よりも勝っている掛替えのない一作であります