むこうの世界


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まえがき

1999年8月29日早朝、DASACON2会場となった朝陽館本家大和の間において、田中香織さんは、大森望さんに向かいこんな質問を発しました。

「大森さんと小浜さんってどっちが年上なんですか?」

至極真っ当な疑問です。二十歳そこそこのかけだしSFファンから見れば30代も半ばを越えた「SFのエライ人」の相対年齢など、わからなくても当然でしょう。しかし、この言葉は大森望さんの琴線に触れてしまいました。
「どっちが年上だとおもう?」
それは世界を生み出す言葉となりました。

ここには、作家・翻訳者などのSF間連業界のプロ、有名ファン、ネット上の有名人、DASACON参加者などについて、被験者が考える年齢の相対関係(99年8月時点での絶対年齢含む)によって構築される4つの世界が記されています。記載されている人名は、質問者(被験者毎に記載)の一存で決まっています。なぜ自分の名が挙げられているか(あるいは挙げられてないか)について不満のある方は、当該質問者にぶつけて下さい。当サイト管理者は事後の情報整理を任されただけであり、情報構築の過程には一切責任を持ちません。

また、当然ながら、この世界はフィクションです。実在の人物の年齢等とは一切関係ありません。それでもなお、この表に文句がある場合は、各創造主に言ってください。

なお、もとの表には多くの場合、もう一人ネットの有名人が記載されていましたが何かあると鬱陶しいので省きました。


田中香織の世界

主質問者:大森望
年齢人名
不明小松左京
不明野田昌宏
不明伊藤典夫 柴野拓美 矢野徹
不明浅倉久志
60高橋良平 火浦功
不明横田順彌
48永田弘太郎
46巽孝之
45井上雅彦
42神林長平 野阿梓
40牧眞司 志村弘之 東雅夫 大原まり子 岡田斗司夫 笠井潔
39日下三蔵 山岸真* 倉阪鬼一郎 星敬 阿部敏子
38水玉螢之丞 小浜徹也
37大森望 小谷真理 みいめ 山形浩生 久美沙織 新井素子 篠田節子
36梅原克文 柳下毅一郎 さいとうよしこ
35浅暮三文 田中光 喜多哲士 冬樹蛉 藤元直樹 中村融 東茅子 尾之上俊彦 小林泰三
34三村美衣 みなとみらい子* 津原泰水 ニム
33山之口洋 福井健太* 森岡浩之 安田ママ 木戸英判
32添野知生 堺三保 塩澤快浩 涼元悠一 尾之上浩司 タニグチリウイチ
30u-ki 風野春樹 大森英司 谷田貝和男 風野満美 尾山則子
29溝口哲郎 岡田英之 森山和道
28林哲矢 森太郎 鈴木力* ジョニイたかはし
27ぬーべる・給仕犬
26代島正樹 サイトウマサトク 清涼院流水 野田令子

*を付記した人物は被験者の言によると「同じ匂い」がするらしい。どういう意味かを伝聞で書いてしまうととんでもない騒動が巻き起こらないとも限らないので、直接創造主に訊いて欲しい。

●鑑賞のポイント●

まずは被験者が21歳であることを念頭に置いてもらいたい。この表の大半を占める30代後半以上の人物は、彼女からすると二周り以上上なのであり、正しく配置されなかったとしてもある程度仕方が無いとはいえる。そこに留意すると、全体が思ったよりも正しくなっていることに気づくだろう。わずか数箇所の不整合が、全体を大きく歪んでいるように見せているのだ。これは、異世界を構築する際の大きなヒントになるのではないだろうか。そう、無理をして異常を作り出さずとも、数箇所の重要な歪みさえあれば十分幻想的な世界を構築することは出来るのだ。

その意味で一つのキーになっているのが志村弘之の使い方である。さりげなく氏を牧眞司と並べることによって、第3期京大SF研の秩序世界を大きく揺るがすことに成功している。さすがSFセミナーにおいて小浜徹也賞を受賞した実力派だけのことはある。

また、三村美衣=みなとみらい子ラインもあなどれない配置だ。SFセミナーの歴史を一気に縮める心憎い年齢選択といえる。これが地味な技に見える読者にも、被験者自身がSFセミナースタッフであるという事実を効果的に活かしていることを指摘しておけば、その素晴らしさが分かって頂けるのではないか。

もちろん、伊藤典夫=柴野拓美=矢野徹や、高橋良平=火浦功が60歳、火浦功より年下の横田順彌などの大ネタの数々を忘れるわけにはいかない。退屈な事実に堕さず、荒唐無稽に陥らず、現実と非現実のあわいで見事にバランスを取った傑作である。(文中・敬称略)

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野田令子の世界

主質問者:大森望
年齢人名
不明水鏡子
不明小川隆
43阿部敏子
不明巽孝之
38志村弘之
38中藤龍一郎
38堺三保
38牧眞司
38尾之上俊彦
38大森望
37中原尚哉
37浅暮三文
37日下三蔵
37柳下毅一郎
37内田昌之
37山岸真
37藤元直樹
37喜多哲士
37小浜徹也
37東雅夫
37涼元悠一
37福井健太
37冬樹蛉
37風野春樹
31小谷真理
30さいとうよしこ
30水玉螢之丞
30三村美衣 みなとみらい子
30塩澤快浩
29鈴木力
29東茅子
●鑑賞のポイント●

表中、同年齢が縦に並んでいることについて奇異に思った方も多いだろう。これは、元の表が数直線状に描かれていたことに起因している。で、あれば同年齢単位で整理し直せばいいとおもわれるかもしれないが、それは考えが甘い。実は一個所だけ人名が併記されているところがあるのだ。1個所でも併記されている個所がある以上、例え同年齢でも相対関係に意義があるので、別に書かれたのだと考える方が自然であろう。従って、当報告でも、元表の相対関係が識別できるように、同年齢の場合も別項目を立てて記載している。

中で目を惹くのは、やはり田中世界において指摘した2点が、この世界でも再現されているということだろうか。2番目に構築された世界であるため、オリジナリティーを問われるといううらみはあるが、こちらは関東ファンダム歴8年にもなろうかというキャリアがあるだけにまた違った味を出している。そのキャリアからすると、志村弘之が学生であった時代を知っているはずなのだが、世の中油断でき無い物だ。

また、実にさりげない「鈴木力29歳」もいい味を出している。大学入学は自身と同年であると知りながらも、こう書くあたり、どのような含みがあるのか興味深いところだ。

他は、不可抗力といえるものが多いのでさほど強調すべきものはないが、強いてあげれば風野春樹37歳が気になるところか。おそらく、日下三蔵と風野春樹は同級生という知識に引きずられたものと思われる。断片的な知識の積み重ねで世界が構築されていく様をうまく表現している部分だ。(文中・敬称略)

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岡田英之の世界

主質問者:森太郎
年齢人名
不明水鏡子
不明大野万紀
不明牧眞司
不明阿部敏子 古沢嘉通 浅暮三文
不明水玉螢之丞
39or40大森望 山岸真
不明小浜徹也 堺三保 喜多哲士 添野知生 日下三蔵 タニグチリウイチ 野尻抱介 浜田玲
不明森岡浩之* 菅浩江* 冬樹蛉*
不明志村弘之 三村美衣 坂口哲也* 笹本祐一
不明柳下毅一郎 森山和道
不明大原まり子* 高野史緒
不明みなとみらい子 風野春樹 清松みゆき
不明菊池誠 岸場清悟 福井健太 塩澤快浩
不明u-ki
不明溝口哲郎* 平野まどか
不明谷田貝和男 代島正樹 鈴木力 田中聡
27森太郎 岡田英之 野田令子
不明林哲矢 ジョニイたかはし
不明かつきよしひろ
不明田中香織

*を付記した人物については、元リストがやや不鮮明なため、1段階程度の誤差を含む可能性がある。

●鑑賞のポイント●

この被験者の世界は、残念ながら、京大SF研在籍者であるという事実が禍して、強く現実に根差したものになってしまっている。しかし、そのような条件下でもいくつか興味深い歪みは見受けられる。

特に注目したいのは福井健太の年齢だ。この世界では年齢が不明だが、年齢区分の数から少なくとも30歳以上であることが推測できる。そして、それはサンプルとしてあげたすべての世界に共通する点なのだ。氏は当日DASACONに参加しており、またWeb上での露出も充分であるから、風貌・行動・作風・業績などすべての情報を知った上で、皆に30歳以上と判断されたことになる。やはり、オーラの質が並の同世代の者とは違っているのだろう。

他では、高年齢層の正確さに比した、若年層(20代後半)の歪みが目立つ点ではある。しかし、この年齢帯の配置はほぼ不可抗力と言えるものなので、幻想を生み出しているとまでは言い難い。恐らく10人中9人まではこのように配置してしまうだろう。できればもう少し劇的な歪みを持ちたかったところだ。(文中・敬称略)

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平野まどかの世界

主質問者:野田令子
年齢人名
不明森下一仁
40代阿部敏子
不明志村弘之
不明山岸真
不明大森望 小浜徹也 堺三保 柳下毅一郎
不明三村美衣 さいとうよしこ 水玉螢之丞 安田ママ
不明野尻抱介 日下三蔵
不明冬樹蛉
30塩澤快浩 タニグチリウイチ 喜多哲士 風野春樹 森山和道 福井健太
不明みなとみらい子 鈴木力
26野田令子
●鑑賞のポイント●

過去3例の被験者は、すべて大学SF研在籍者であるが、この被験者のみSF研在籍歴が無い。いわゆるファンダムの外部に存在する被験者と言ってもあながち間違いではあるまい。その点を念頭に見て行くと色々興味深い事実が浮かび上がる。

なにより目を惹くのが、ここでも志村弘之が大森・小浜の年長として位置づけられているという事実である。年齢が多数決で決まるものなら3対1で志村>大森・小浜の関係は確定となるところだ。折り紙の師匠という肩書きが、氏に大森・小浜両氏を上回る貫禄を与えているのであろう。

他では、タニグチ、風野、森山、福井とWeb上での露出が多く、比較的近年商業誌原稿を書き始めた人物がすべて30歳で並んでいるのも興味深い。なんとなくプロは30歳以上という意志を感じるのは邪推が過ぎるだろうか。

また、この若手プロ年齢に、喜多哲士の名があるのも注目すべき点だろう。風貌と、作風と、行動と、どこにもっとも若さを感じたのかは気になるところである。

全体に情報量が足りず、幻想を発生させるまでにはいたっていない。やはり無理を承知で予想年齢を書き込む程度のことはしないと、世界の面白さは浮かび上がってこないようだ。キツイ言い方になるが、より一層の精進を望みたい。精進したからと言ってどうなるというものではないが。(文中・敬称略)

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