月姫 Short Story

  料理の鉄人!?


  第7話(暫定版)


 注:これは、基本的には「シエルグッドED」後として考えはいますが、
   あまり厳密ではなかったりします。(おい
   「月姫PLUSDISC」をプレイされた方は判ると思いますが、
   アレ(閑話2話)と同じようなことと思ってください。


 「さいごは・・・アルクェイドか」

 「へへ〜。真打登場、ってトコロかしら?」

 何がそんなに嬉しいのかは判らないが、やたらとうれしそうにしながらこちらへと来る。

 「そういえば、アルクエィドは確か料理が上手かったと思ったんだけど?

  ネロ編では、ちゃんと朝食とかも作ってたしな」

 「まぁね〜。知識としてはかなり有るほうだとは思うんだけど・・・?

  ただ、実践回数からするとまだちょっと少ないかな」

 あぁ、そういえばアルクェイド自身は眠りについている時間が長くって、活動時間から考えると

それほど長くは無いんだったっけ。
 
 アルクェイドの場合、知識から考えるとおよそ大昔(失礼ね:アルクェイド)の異国のメニューでさえ、

材料さえあれば作ってしまうことができるんだよな。

 「でもまぁ、今回は禁じ手が多くって困っちゃったのは確かね」

 ただ、意外なことに彼女の口からはそんな台詞が出てきた。

 「「・・・禁じ手?」」

 琥珀さんと見事にハモってしまった。

 「あれ? 今回はそんなにきびしくした覚えはなんですけど〜」

 「いやいや、もっとこう、大きな見えない世界からの圧力が・・・」

 そう言いながら、上のほうを指差すアルクェイド。

 「?」

 「ん、ホントはね、妹がやったのと似たような事をするつもりだったんだけどね」

 そこで、アルクェイドは秋葉のほうに視線を向けた。

 「私と・・・ですか?」

 少し離れたところにいた秋葉が、不思議そうに問い掛ける。

 「うん。3つ位は考えたんだけどねぇ・・・

 ひとつは、エプロンだけつけて登場でしょ、ふたつめは、自分のからだにおかず乗っけて登場でしょ、

 そして最後は、お酒を・・・」

 「わ〜っ、もういけません!!」

 まだ何か続きを言おうとしたアルクェイドを、珍しく慌てた様子の琥珀さんが大声で遮った。

 「コレ以上続けると、このコンテスト自体が無くなってしまいます〜」

 琥珀さんはちょっと良くわからないことをいって慌てているが、それ以上にこちらはアルクェイドの

計画していたいことに驚いていたりする。
 
 「なっ!! な、な、何を」

 「何を考えてるんですかこのばか女は〜!」

 真っ赤になって言葉に詰まる秋葉と、やはり顔を赤くしながらもアルクェイドを怒鳴りつけるシエル先輩。

 僕が何か言おうとするより早く、この2人に先を越されてしまった。

 琥珀さんの制止はともかく、目の前でそんな事をやられたりしたら、アルクェイドよりもこちらが先に

この2人に殺されかねない。あ、その後ろで同じように顔を赤くしているあきらちゃんや翡翠もどうも怒っている

ように見える。

 「そんなに怒らなくたっていいじゃない。ま、そんな事しなくても、普通に腕比べしたって勝負にならないとは

 思うんだけど?」

 自身ありげに頭の後ろで手を組みながら周りを見まわすと、誰一人言い返さなかった。

 ただ、あちこちから「う〜」といった唸り声みたいなものはあちこちから聞こえてはいるが。

 周囲を沈黙させてから、アルクェイドは他の参加者達よりも大きなサイズのトレイを台車で持ってきた。

 「ま、とりあえず見てよ」

 そういってぱかっと開けた中には・・・見事なまでのメニューが並べられていたりする。

 「あらら・・・これはお見事ですねぇ・・・」

 琥珀さんでさえ、口元に両手をあてて眼を丸くして驚いていたりする。

 ビーフシチュー、ロールキャベツ、コーンスープ、ポテトサラダ・・・

 さっきまでの唸り声から変わり、「うわ・・・」「負けた」だのといった言葉が今度は聞こえてくる。

 「志貴、食べてみてよ。味も悪くないと思うけれど?」

 そういって小皿にひょいひょいと馴れた手つきで掬い取り、アルクェイドはさっとその皿を持ってきた。

 そのアルクェイドの笑顔を目の前にしながら、それぞれを食べて見る。

 「確かに美味しいな」

 この味なら琥珀さんとも互角のレベルで、まったく問題が無かったりする。

 まぁ、今回はそれ以前に勝負の相手側に問題がありすぎる気もするが・・・

 素直に感想を述べると、えへへ〜、とものすごく嬉しそうに笑った。

 「どう、これなら文句無いでしょ?」

 こちらと琥珀を交互に見ながら自信ありげにアルクェイド。

 すでに終わったとばかりに、コーヒーを入れ始めたりなんかする。

 「う〜ん、確かに・・・そうかな」

 とりあえずその通りだったので肯定した。

 すでに、採点表には最高得点が記入されていたりするし、まわりの参加したシエル先輩を始め、秋葉や

それ意外の女の子達も、悔しそうではあったがだれも反論しなかった。
 
 その雰囲気に気を良くして、鼻歌なんぞを歌いながら、こっちまで既に良い香りを漂わせているコーヒーを

カップに注いでいたりなんかする。

 「・・・・・ちょっと待ってください」

 そのとき、それまでじっとアルクェイドのほうを見ていた琥珀さんが、カップを受け取ろうとした動きを制した。

 「え? どうしたの琥珀さん?」

 「アルクェイドさん、今使ったコーヒーの豆を見せてもらえませんか?」

 「・・・・・あ」

 琥珀さんが、アルクェイドに向かって手のひらを出すと、それまで笑顔だったアルクェイドの顔がひきつった。
 
 「もしかして・・・ばれた?」

 「ええ。最後の詰めは甘かったですね」

 「ちぇっ。うまく行くかな〜って思ってたんだけどな」

 さりげなくやったつもりだったのに、とぶつぶつと何やら呟いている。

 琥珀さんとアルクェイドで交わされる会話に、それ以外の全員が置いて行かれている。

 「ちょっと琥珀、どういうことなの?」

 秋葉がすこし苛立った調子で詰問すると、アルクェイドは悔しそうに視線をそらし、琥珀さんはにこりと微笑んだ。

 「えっとですね、アルクェイドさんがコーヒーの中にちょっとお薬を仕込ませてあったんですよ」

 「薬?」

 「ええ。夜中に、とても元気になっちゃうような類のものなんですけどね」

 そういって、アルクェイドから受け取った小さな袋をみんなに見せた。

 このお薬、というかある種の植物なんですけどね。これは、味はまったくしないんでなかなかバレないんですよ。

 ただその代わりに、ほんの少しだけ特徴の有る匂いがするんですけどね。

 「う〜ん、そう言われても匂いなんて全然わからなかったけど?」

 琥珀さんの制止が無ければ、間違い無くそのまま飲んでいたと思う。

 「コーヒーとか香りの有るものでしたら、かなり判らなくなってしまいますよ。

  それを計算して、アルクェイドさんは準備したんだと思いますが・・・?」

 「あたり。まさかばれるとは思わなかったんだけどねぇ」

 ちょっとだけ「私も使ったことがありますから」と琥珀さんの声が小さく聞こえた気がする。

 「ん? 琥珀さんいま何か言いませんでした?」

 「いえいえ、何も言ってませんよ。志貴さん」

 いつものスマイルのまま、両手をひらひらと振って琥珀さんは否定する。

 そして、次にアルクェイドのほうへと顔を向ける。

 「料理で良い印象を付けておいて、遅効性の怪しい薬で夜に忍び込んで・・・といった作戦でしたか?」

 「ま、そのとおり」

 琥珀さんの質問にあっさりと肯定するアルクェイド。

 「「なっ!」」

 あ、シエル先輩と秋葉がものすごい形相になっている。 

 なんかシエル先輩は服の中から金属音がしているし、秋葉にいたっては髪が真っ赤に変化している。

 「これで上手く行けばポイントがかなり稼げると思ったんだけど。

  料理も美味しく作れるし、そしてその後もすごい・・・って事で」

 そのとき、ぶちっ、と何処からか音が聞こえたと思った瞬間、猛然とアルクェイドに2人が襲いかかった。

 もちろんアルクェイドもそのときにはもう迎え撃つ準備はできていたわけで・・・

 あっという間に戦場と化す室内。

 まぁ他のメンバーもなれたもので、すぐさま別室に避難を開始していた。




 結局、戦闘(?)は30分続き、部屋の惨状に気付いた秋葉によって中断された。

 ・・・・・激しく崩壊した居間と、台所の修理には2週間以上かかるとの事だった。

 「痴話ゲンカにしてもこりゃまた派手にやりましたねぇ・・・」

 修理の為に呼んだ業者の、居並ぶ面々を眺めた後での第一声に秋葉は顔を真っ赤にしてひたすら頭を下げていた。



 <お知らせ>

 本当はすでにこの後も完成しているんですが、以降は事情により5月中旬以降にUPする予定です。

 一応、たてまえとしてTYPE−MOONさんのイベント終了後にUP予定です。

 宝くじに当たる確率以上に低い可能性に対しての保険では有りますが(汗)



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