ONE 〜輝く季節へ〜

  みさき先輩SS 「輝いていた季節」


 第3話 みつけたもの

 「ねえ浩平くん、何して遊ぼうか?」

 とりあえず、みんなが写生大会している所から池を挟んで一番離れていて、しかも

見つかりそうにない木の陰に並んで座った。

 たぶん、雪ちゃんもにもなかなか見つからない場所だと思う。

 浩平君は、なにか考えているような難しい顔をしてる。

 「どうしたの、浩平君?」

 「・・・僕、ずっとみさおとしか遊んでなかったから、なにをしてていいか良く

判らない」

 「みさおちゃんとは何をして遊んでたの?」

 「入院する前は、プロレスごっことか、近所の空き地で野球とかもしてた。

 みさおは女の子なのに、男っぽい遊びがすごく好きだったんだ」

 (う〜ん、それは浩平君につきあってるだけじゃないかな・・・)

 一人っ子のみさきとしては、兄想いの妹の気持ちが逆に判るような気がする。

 プロレスごっこが好きな女の子なんて、みさきのまわりには一人もいないし、

聞いたことも無かった。

 うらやましいな、と思っていると浩平君はすごく沈み込んだ表情になった。

 「・・・けど、入院してからは、何にもできないんだ。

 みさおはずっとベットから動けないし。

 だから、“退院できたら”何して遊ぼうかって、いつも話してる」

 「そうなんだ・・・」

 (浩平君は、私より年下なのに、ずっと多くの辛いことを経験しているんだ)

 返事をしながら、私はそう思った。

 呟きながら、何か無いかと考えるみさき。

 両手で膝を抱え、膝に顔を載せるようにして俯くその横顔は、何かすごく大人びた

暗さを感じさせた。

 まるで、いつも見ているドラマで、大好きな役者さんが演じているような暗い過去を

背負った主役みたいな表情のそれとよく似ているような気がした。

 「そうだ、これからちょっと散歩してみない?」

 とりあえず、浩平君の気分転換をした方がいいんじゃないかと思って、とっさに

そんな事を提案した。

 その提案に、不思議そうにみさきを見つめる浩平。

 「え? でもみさきさんは逃げ回ってるんじゃ・・・」

 「だいじょうぶ。

 ここは離れてるし、まさか雪ちゃんも来ないと思う」

 「でも・・・」

 カツンッ!

 不安そうにする彼の手を取って立ち上がろうとしたみさきは、その拍子に

何かを足で蹴飛ばしてしまった。

 「あれ?」

 何だろうと蹴った物をみると、それはプラスチックでできた何かだった。

 「なんだろう、これ・・・」

 浩平君が不思議そうに呟きながら、それを拾い上げた。

 ちょっと漫画っぽくなっているけど、形はトカゲとかの爬虫類をかたどっていて、

所々塗装されていたのが剥がれてはいるけど、緑色に塗られたその外見は、図鑑とかで見た

事のある動物によく似ている。

 「・・・・カメレオン?」

 浩平君はじっと観察した後で呟いた。

 私もその物体はカメレオンにしか見えなかった。

 「・・・・だよね?」

 浩平君の手にあるのは、カメレオンの形をしたプラスチックのおもちゃだった。

 目玉とかは黒くくっきりと残っていたけど、胴体は緑色の塗料がぼろぼろと剥がれてきていて、

むき出しになっているプラスチックの白さが、何か骨が出ているみたいで可哀想だった。

 〜〜第3話 終わり〜〜


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