Piaキャロットへようこそ!2  

   Short Story#2  嵐の下見旅行っ!?

 注: これは、葵さんとのEDから1年後の夏休みという設定です。
    現在別に創作している「GoGoウェイトレス!」とは全く
   別のお話です。
    ちなみに、主人公の耕治は大学へと進学し、葵さんは引き続き
   Piaキャロット2号店に勤めています。


 第2話 「旅館にて」

 
 「う〜ん、空気がおいしいわねぇ〜」

 葵さんが思いっきりのびをして深呼吸している。

 素朴な作りの、年期が入った木造の駅の改札口を出て、駅前のロータリー、

というか、広場といった形容の方が正しいかもしれない様な、ラインもなく

舗装された道路に立って最初の言葉がそれだった。 

 よく晴れ渡った青空からじりじりと照りつける日差しは、まだ夏のはじまりと

いうこともあってそれほどきつくは感じなかった。

 むしろ、顔を吹き抜けていく風と相まって、非常に清々しい。

 朝早くアパートを出発したので、お昼少し過ぎに目的の駅まで到着できた。

 しかし、時間帯の割には人気はほとんど見られなかった。

 わずかに、買い物袋をもった地元の人らしいおばあちゃんが2,3人

歩いているくらいで、それ以外に観光客とかは全く見かけなかった。

 “去年がリゾートホテルだったから、今年は静かで素朴な民宿を選んだの”

 という涼子さんの言葉通り、駅前に目立つ建物は何もなかった。

 ・・・というか、建物自体が余りなかったのだが・・・

 駅前には、楕円形に広がっている舗装路面と、そこから県道へと続く道路沿いに

渋い色をした木造の商店が何件か立っているだけだった。

 それ以外は、草の生い茂った空き地で、その空き地越しに、後ろに広がる山々の

木々が遠くに見える。

 本当は海にも近いのだが、ここからはちょっと見えないみたいだ。

 ただ、さっきから流れてくる風は海風のようで、すこし潮の香りが漂っている。

 「・・・なんだか凄いところに来たような気がする」

 思わず口にそのまま出してしまった。

 「何言ってるの。

 こんな空気も、景色もいいところでゆっくりできるなんて幸せじゃないの」

 「そうだね。

 でも、葵さんと一緒なら、どこでも幸せだけど」

 「ばぁ〜か。

 何言ってるの」

 ばしん、と横に立っている葵さんの手が伸びてきて、背中をひっぱたかれた。

 言ってる自分自身、ちょっと(かなり)恥ずかしかったのだが、葵さんも


こちらを見ようとしていない。

 ふと、彼女の耳の所を見るとうっすらと赤くなっている。

 比較的肌の白い葵さんだから、うっすらと赤みが差しただけでもすぐ判ってしまう。

 酔っぱらったときとか、えっと、それ以外で・・・・・の時とか。

 ミーン・ミンミン・・・....

 遠くからは蝉の声が聞こえる。

 「さぁて、とりあえず宿にいくわよ。

 挨拶して、荷物をおいたらちょっと泳ぎましょ」

 そう言って、僕の腕に自分の腕を絡ませた葵さんが歩き出した。

 

 「う〜ん・・・遅い・・・」
 
 予想していた通り、木造2階建ての民宿にたどり着いた僕達は、2階のもっとも

見晴らしの良い部屋に案内された。

 宿屋の主人の奥さんから、今日は宿泊客が僕たち以外にいないから、急遽いちばん


良い部屋を特別に用意してくれた事を教えられた。

 実際、夏休みに入ったばかりの平日なのでまだ観光客は少ないらしい。

 階段を上り、部屋の襖が広がった瞬間、目に見えたのは青い海だった。

 部屋の窓が開けられており、そこからは太陽の光に反射して輝く海と、その近くにある

崖と、その近くに茂っている松林の緑が目に飛び込んできた。

 「うわ〜、いい眺めねぇ〜」

 「ほんとだ・・・」

 この場所を探した涼子さんに本当に感謝した。

 しばらく窓際でその光景に見とれていたが、ちょっと泳ぎに行こうということになり、

ここで着替えることにした。しかし、さすがに同じ部屋で着替えるのも・・・、という事で

僕は隣の部屋で着替えて待っていた。

 さすがに(などというと叩かれるが)女性と言うこともあって、すぐ着替え終わって

しまった僕は、待たされる羽目になった。

 去年、葵さんは日野森やつかさちゃんと一緒に行った海旅行ではきわどいビキニ姿だった。

 (予想としては、今年もビキニではないかと予想しているのだけど・・・)

 などと頭の中では真紅や黒といった色のデザインを想像というか、妄想をしていた。

 「おまたせ〜」

 妄想をしていると、ガラリと目の前の襖が開いた。

 「あれ?

 葵さん、ワンピースなんですか?」

 何と、目の前に現れた葵さんは、意表をついてワンピースの水着姿だった。

 しかも、さっき想像してたデザインとも全く違う淡いピンク系の模様入り。
 
 「そうよ〜。

 どんな水着だと思ってたのかしらぁ?」

 そう言う葵さんは、どこか悪戯っ子ぽい表情をしていた。

 「い、いえ。

 てっきり去年と同じだと思ったんです」


 思わず変なことを口走ってしまった。

 「や〜ね。

 まさか同じ水着を2年続けて着るわけ無いじゃないの」

 そういって右手を頭の後ろにあててポーズを取る葵さん。

 相変わらずプロポーションは凄く綺麗だ。

 (いったい、あのビールとかはどこにいっちゃうんだろう?)

 これで何回浮かんだか判らない疑問がまたしても頭をよぎる。

 「どう、似合うでしょう?」

 「さぁ、早く泳ぎに行きましょう」

 あんまり見てると変な気分になりそうなので、上着を着て先に歩き出す。

 「あ、ちょっと待ちなさいよ」

 葵さんがあわてて後を追ってくる。

 今年初めての海。

 僕も葵さんも凄く楽しみだった。

 〜〜第2話 終わり〜〜

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