〜2004年2月1日〜
昨日もそうだったが、今朝も大層良いお天気である。二日間のうどん屋巡り、外に並んだりするのにあんまり寒いとツライだろうなあと思っていたが、日頃の行いが良いのか(誰の?)、暖かい晴天続きでありがたい。8時にホテルをチェックアウトし、最初のうどん屋さんにカーナビをセットすると10時開店なのに9時過ぎには着いちゃうよと教えてくれる。それなら少しお散歩していくかと、高松港へ行ってみた。フェリーや自衛隊の船(横須賀から来たらしい)が停泊している。本当に清々しい朝で、深呼吸すると身体の中が綺麗になるような気がする。適度に時間を潰して、いざ出発。
〜(通算6軒目)三島製麺所: ひや小 100円 〜
さて、今日はとにかく谷川米穀店へ行くのがメインの目的なのだが、谷川という店はずいぶん遠く辺鄙な場所にある上に、開店は11時からと中途半端なのである。なのでその近くにあり、かつ10時開店という三島製麺所というお店へ向かうことにする。しかしこのお店もかなり山の中にあり、紹介記事によれば「このお店が無ければ絶対に行くことがないだろう場所」にあるそうだ。カーナビ(今回のレンタカーには割と新しいカーナビが付いていて、ほとんどの場所について番地まで指定できた)に従って行くと、本当にこんな山の中にお店があるのだろうかという感じ。結局お店は山を越えて、集落に出たところにあったのだけれど、それでも何の看板も出ていないし、いわゆる普通の家っぽいので知らなければ行けないところだ。こうやって、うどん屋巡りをしていて、つくづく思うのだが、このさぬきうどんブームはインターネットとカーナビの発達に支えられている部分が多大にあるような気がする。インターネットによってこんな静かな山間の村にあるお店の存在が明らかになり、カーナビによって地元の人以外もそこへ到達出来るようになったわけだ(少なくとも、この三島製麺所は普通の道路地図を頼りに辿り着くのはかなり大変だと思う)。10年前じゃこうはいかなかっただろう。
さて、ワタシ達は9時50分くらいに着いたのだが、そこまで有名店でもないようで、他には誰もいない。そしてお店も見た目は普通の家なので、入っていいものか、そもそもどこが入口なのか判らなくて、何となく10時が近づくのを待つ。しかし9時55分くらいなって、多分地元の人だろう、細い道をすんごい勢いで飛ばす車がやってきて、お店の駐車場らしき場所に入っていった。従業員なんだかお客なんだか判らないが、それに勇気付けられてワタシ達も入ってみることにする。
中は小さな製麺所。端っこの方に小さなテーブルと椅子が置いてあるので、そこへ腰掛け、注文する。ちょっと粉が舞っているような部屋に挿し込む朝の光。なんだか神聖な気配が漂っていて、思わず居住まいを正したくなうような雰囲気である。出て来たうどんもピカピカ白く輝いている。一口すすると目が覚めるような美味しさ。「瑞々しい」とか「清冽な」とかいう喩えが似合ううどんである。昨日あれだけ食べて、果たして今日はうどんを美味しいと思えるのだろうかと不安だったのだが、一晩寝てすっきりしたのか、とても新鮮な印象だった。なんだかすごい。多分お店の雰囲気や打ちたてだとか、そういうことが全てプラスに作用しているのだろうけれど、ちょっと感動してしまった。


本当に普通の家。唯一煙突から煙が出ているのだけが目印/清らかなうどんであった。
〜(通算7軒目)谷川米穀店: ぬくいの小 100円 X 1.5 〜
三島はすぐにお客さんが増えてきたので早々に店を出たら、また10時5分くらいである。このまま谷川米穀店にまっすぐ向かうと10時10分くらいには着いてしまいそうなのだが、とりあえずお店の場所を確認しましょうということで行ってみた。優秀なカーナビ様のおかげでお店はすぐに見つかったのだが、もう既に10人くらい並んでいるではないか。開店までまだ1時間近くあるのに!こりゃいかんということで、ワタシ達も車を停めて並ぶことにした。すぐ脇に川が流れていて気持ちのよい場所ではあるが、さすがにちょっと寒いなあ。30分以上待つんだよね…。でも続々と人はやってきて、30人近く並んでいるだろうか。本当に物好きが一杯いるのねえと、自分のことは棚に上げて感心する。判らない人には不明な情熱だろうなあ。
10時45分過ぎくらいだったか、お店を早めに開けてくれたので、みんなぞろぞろ入っていく。すっかり身体が冷えてしまったので温かいうどんを頼み、生醤油をちょろっとかける。机の上に置いてある青唐辛子の佃煮もちょこっと乗せて、いただきます。うわー、これはまた…!先ほどの三島も良かったが、このうどんもまた新たな感動を覚える美味しさだ。なんだか白いご飯を食べているような。卵をかけている人も多かったが、ワタシは生醤油だけで食べるのが好きだわ。まだお腹が一杯じゃないせいもあってか、どうしてもお代わりしたくなり、もう一玉頼んで同行者と半分こすることにした。谷川のうどんは普通の人でも4〜5玉食べるし、最大では14玉も食べた人がいたというが、判る気がする。塩味もそんなにキツクないし、つるつると入ってしまうのだ。ワタシもこの先のお店が無ければもうちょっと食べたかったし。ああ、美味しかったー。


左手は川、坂道にずらっとお客さんが並ぶ/生醤油ぶっかけ。
〜(通算8軒目)山内: ひやひや小 200円 〜
最初の2軒を予想外にスムーズに済ませることが出来、まだ11時ちょい過ぎである。次に向かう山内は「うどんの腰とかいう次元を超えたもの」という説明がされていた。どんなのだ。しかしどこへ行っても、うどんの味が違うというのが面白いよね。東京でうどんの「味」を意識することって余りないと思うのだけれど、お店ごとに味の違いが明確に判る。こちらにいるとうどんへの感覚に繊細になるというわけではなく、多分本当に1店1店違うのであろう。逆に同行者の友人で高松出身の人は、高松にいる間はそんなにうどんが美味しいと思わなかったそうであるが、東京に来てうどんの不味さに愕然とし、地元のうどんの美味しさを初めて判ったのだという。一体何が違うのかなあ。
さて山内である。腰のあるうどんの他に、天麩羅も美味しいそうなので、蓮根・たこ・ちくわの天麩羅も取って、3人でシェアする。早速うどんを噛んでみると、おおお。確かにこれは「腰」とかいう次元を超えた歯応えだ。でもただ硬いというわけでもなく、やっぱり弾力もある。今まで食べたのとは大分違うけれど、これもまた美味しい。なんなのかしらねー、これは。本当に色々なうどんがあって面白いなあ。


〜(通算9軒目)源内: かけ 400円 すじ肉 200円 〜
さーて、だいぶ満腹になってきた。そして、車中で暖かい日差しを浴びていると、やってくるのは…睡魔である。なんかもう本能の赴くままに行動しているようであるが抗えず、気付いたら寝ていた。知らないうちに高速に乗り、連れて行かれたのは東讃岐方面。このエリアには有名なお店はさほど無いようだが、相方さんの気になるお店が幾つかあるようで、そのうちもっともアクセスの良い一店である。
さぬきうどん屋には、製麺所系(麺を打ち、卸業もしている)、セルフ系(お客さんが自分で温めたり、乗せる具を用意したりする)の他に、一般店というのもあるらしい。いわゆる普通に思い浮かべるうどん屋さんである。こちらにいると自分でうどんを温めたり、汁をかけたりするのが当然のような気がしてしまうのだが、よく考えたら普通うどん屋さんは、お客さんは席に座って注文して、お店の人が運んできてくれるのを待つんだわね。今回の旅行は製麺所&セルフ中心にまわっていたわけだが、一店くらいは一般店にも行ってみようということになった。
お店もいかにも「お店」という感じ←そんなことに驚くなんてちょっと変。でもお店に入ると、カウンターの中で店員さん達がうどん伸ばしたり切ったり茹でたりしていて、やっぱり讃岐な感じではある。ちょっと待ってから席に案内される。メニューを開くと、「天ざる1000円」「カレー700円」などの数字が並んでいる。今まで100円200円の価格帯に慣れてしまっていた為に、「うわっ、高い!」と思わず言ってしまったが、相方さんに「これが普通なの」とたしなめられる。そういやそうだわね。今まではあまりに単価が安かった為に、どのお店も一人が3人分まとめ払いするというのを順番にやっていったのだが(一番安いところでは3人で300円!)、ここだけは価格が違うので、別々に払うことにした。
このお店の売りは、注文してから揚げる天麩羅。他のお店では揚げたのがラックにどさっと置いてあるので、みんな冷えてしまっているのだが、ここは違うらしい。しかし、ワタシは食べ切れそうにないので、かけうどんを注文し、相方さんや同行者の天麩羅をちょっとずつ味見させてもらう。揚げたてのサクサクした天麩羅美味しいぞ〜。ちなみにうどんの前に頼んだ、すじ肉のおでんと稲荷寿司も美味しかったわん。うどんは今までのお店に比べると感動はないが、普通のお店でこのうどんが食べられるというのは贅沢だなあという感じ。ただ、このお店、今までのうどん屋さんより量が多い。麺通団によると、大体普通のお店は200gちょいといったところなのだが、ここは300gもあるそうである。そりゃ多いわ。また相方さんに手伝ってもらってしまった。



今までと比べるとすごくお店な感じ/かけうどん/相方さんの頼んだ天ざる。これで1000円はお得。
〜(通算10軒目)谷川製麺所: 小150円 〜
さあ、泣いても笑ってもここが今回のうどん紀行の最後のお店となる。相当に苦しいがやはり食べねばなるまい。と決意を新たにしつつも、移動中はまた寝てしまったのであった。空港にもだいぶ近づいたこのお店、今までのお店とは全く違うのだそうである。何が違うかというと、うどんの汁が全然違うらしい。普通はいりこ(+かつお)と醤油で味付けしたシンプルなお出汁であるが、ここのは野菜やら猪肉をたっぷり煮込んだスープいたいなものらしい。「しっぽくうどん」に近いとか。
ここもまた普通のお家である。中へ入ると広い土間のような所に机が並んでおり、何人かがうどんを啜っている。その奥にうどん打ち場がある。ここでも選択肢は大か小のみ。テボでちょっとぬくめて、噂の汁をかける。お天気も良くて気持ちがいいので、外まで持っていって食べる。一口お汁を啜り込むと、おー、これはまた幸せな味。野菜の出汁がたーっぷり染み込んでいて優しい味である。いわゆる「さぬきうどん」のイメージとはだいぶ離れているが美味しい。完全に味変わりだったので、お腹一杯でもすんなり食べれてしまった。


青い屋根が目印。あとは何も印はない/味が染みまくった大根がまたいい。
〜(お土産)〜
友人達にお土産を買おうということで生麺を買おうと思ったのであるが、日曜日というのはあまり生麺の販売はしていないようである。あれこれ探してみたのだが、見つからない。パックのは一ヶ月とか二ヶ月とかもつのだが、本当に生のは一日か二日のうちに食べなければいけないというもので、いいかなあと思ったんだけど。
で、相方さんが山越へ電話してみようと言う。確かにあそこはお土産販売もしているわね。ただ営業時間の13時半を過ぎているからどうかしらと言いながら、同行者が電話をかけてくれた。「今日東京へ帰るんですけど、昨日食べてとっても美味しかったんで、是非お土産に買いたくて…」と情に訴える説明である。そのあとかなり色々喋り込んでいたが、漏れ聞こえる感じでは大丈夫そうな雰囲気である。わーい。しかし、電話が終ったところで聞いてみたら、なんと今日はお休みの日だそうである。あ、そういやそうだ!日曜日定休だから昨日行ったんじゃないの。すっかり忘れてたよ。でもお店に出しているのとはちょっと違うけれど、出せるのあるから来てもいいわよと言ってくれたそうである。なんて、いいお店なんでしょう。感動。しかしワタシ達の飛行機の時間がギリギリなので、ワタシ達は空港で下ろしてもらい、相方さんだけがお店に向かうことになった。よろしくねー。帰りの飛行機も乗り遅れたりしないでねえ。
〜(その後)〜
これにて全行程終了!!二日間で訪問したお店10軒、食べたうどん数約10玉!源内を除いては1玉200gくらいなので、なんとうどんだけで2kg強食べたことになる。わー、おそろしい…。
しかし今回もどのお店もはずれなく美味しい所ばかりだった。うどんの味も色々、出汁も色々、食べ方も色々で飽きることがない。同行者が「うどんばっかり食べつづけてたら飽きるはずなのに、全然飽きないんだよねえ」と言っていたが、本当にそうなのだ。朝から昼から夜からうどんばかり食べているのにね。不思議だ。
どこが一番だったかなという話にもなったのだが、これを決めるのはかなり難しい。でも、うどんそのものの美味しさでいったら谷川米穀店なのかなあ。三島製麺所もかなり捨てがたいが。あ、だけど、お店の雰囲気+うどんの美味しさだと瑠美子バアちゃんの池上が一番。あと一番ではないんだけれど不動の二番は山越。とかとか。
ああ、それにしても楽しかったなあ。同行者も楽しんでくれたみたいだし(←もし楽しんでもらえなかったら誘った手前申し訳ないなあと心配していたのだ)、良かった良かった。先日、どこかで見た青春18切符のポスターに「I=t人2」(2は2乗のこと)というのが書かれていた。「旅の印象(I)は時間(t)と出会った人々に比例する」のだそうだ。時間はそんなに長くなかったけれど、高知のうどん屋さんは皆いい人ばかりで、強く印象に残っている。また行きたいな。
同行者さま有難うございました。相方さんもずっと運転ありがとね。お疲れ様でした。