平成23年5月22日
これも今回一般にもよく知られるようになったが、十両の約100万円の給料に対し幕下以下は給料がない。給料はないが場所手当てが出る。幕下15万円、三段目10万円、序二段8万円、序ノ口7万円という額である。ここから番付代、油銭(びんつけ油代)、若者会、源泉所得税など引かれるが、残った金はすべてお小遣として使える。また勝越したら勝越し金も入ってくる。同年代の学生やサラリーマン(妻帯者)の小遣に比べれば、そんなに低い額ではない。千秋楽。三段目で優勝決定戦が行なわれ、裁く行司は木村悟志、その模様を場内にアナウンスするのは木村朝之助、土俵下には呼出し健人と顔をそろえた。

平成23年5月21日
横綱大関になった力士でさえ十両に上がったときが一番嬉しかったと語ることが多い。横綱大関にあがることは確かにすごいことだが責任も大きくなってくるから、純粋に昇進の喜びに浸れるのは新十両のときだということかもしれない。何せ番付発表のその日から生活がガラリと変わる。個室が与えられ、付人がつき、ちゃんこも真っ先になり、お膳と座布団が用意され(幕下以下は座布団は顔じゃない)、おまけに100万近い給料がもらえるようになる。その差があるからこそ人生をかけた大一番になる。大子錦土俵際まで攻められるも必殺「腹乗せクルリどっこいしょ」で逆転の勝越し。序二段31枚目と普通なら上がらない番付だが、大量昇進余波でひょっとしたら5年ぶりの三段目復帰があるかもしれない。

平成23年5月20日
引退して3年半になるが、勝ったときの嬉しさ高揚感、負けたときの悔しさ喪失感は、いまだに心身にムズムズと浮かんでくる。昇進をかけるとか優勝をかけるとかいう一番になると、その想いは尚更である。景色や他人の視線までが違ってくる。以前から有望力士といわれて久しい伊勢ノ海部屋勢(いきおい)、仕切りから緊張感が伝わってきたが力を出し切れずに3勝3敗で迎えた最期の一番を落とし負越し。幕下8枚目と勝ち越せばという地位だっただけに無念の一番。幕下20枚目の島人(シマンチュ)尾上部屋里山、こちらも今日の一番に勝てば6勝1敗となり、久しぶりの復帰へひょっとしたらの希望も出てきたが残念な黒星。負けた力士にもドラマがある。中日まで1勝3敗だった朝乃丈3連勝で勝越し。来場所の三段目復帰が確定。

平成23年5月19日
幕下上位の取組が連日熱い。いつもの場所ならひとつや二つ生まれるドラマが毎日のように何番もつづく。何度か紹介した学生相撲出身としては異例の入門10年の東関部屋華王錦。チェコ出身の鳴戸部屋隆の山、こちらも苦節10年での栄誉で入門後初の凱旋帰国が叶いそう。また追手風部屋濱錦、出羽ノ海部屋鳥羽の山の元幕内のベテラン勢の久しぶりの復活。ブルガリア出身で部屋創設10年にして初の関取誕生となる田子ノ浦部屋碧山 ・・・ 本人にとってはもちろん家族や故郷、母国、部屋にとっても大きな出来事である。場所前腰を痛めて出場も危ぶまれた笹川、ベテランの味での見事な勝越し。

平成23年5月18日
ワイドショーなどでも何度も取り上げられたように幕下と十両には大きな差がある。給料のある無しはもちろん待遇や服装など生活全般で大きく違う。その差が激しいから、一般的には幕下の力士はすごく低い身分で最低の生活のような印象を持たれているかたもいるかもしれない。しかし相撲界の中にいる人間からすると、幕下は明日を担う期待に膨らむ存在で一目おかれる立場である。ほとんどの部屋では幕下に上がるとちゃんこ番をしなくてもよくなり日々の雑用からもかなり解放され稽古に専念できるようになる。東関部屋華王錦勝越し。10年近い幕下生活から関取昇進がほぼ確定。

平成23年5月17日
朝天舞3年半ぶりの幕下で初めての勝越し。宮城県石巻出身の朝天舞、入門12年目となる。本名花田晴多(せいた)で「花ちゃん」と呼ばれ個性的な性格である。個性的なゆえ、子供の頃はいじめられることもあったらしい。入門してからも、いじられキャラで、ときにはじけ、ときに辛酸をなめ、数々の修羅場も乗り越えてきた。いろんなことに振り回されながらも愚直に稽古を重ね、他人に笑われながらもあらゆるトレーニング不器用に取り組み、貪欲にちゃんこやプロテインを腹に詰め込み、ときに胃を壊してしまうほどであった。今場所後には30歳となるがいまだに新弟子っぽさも残している。体格や素質を考えれば幕下に上がるのも大変なことだが、あと2番を残しての勝越しはある意味偉業ともいえる。被災地石巻への何よりの支援であろう。

平成23年5月16日
今回の騒動の報道で話題になったように幕下と十両には大きな格差がある。その格差が八百長を生み出す原因だという意見も多いが、その差があるからこそ幕下上位の取組は人生をかけた大きな一番になり、数々のドラマを生み出す。とくに今場所は、いつもの数倍も昇進のチャンスがあるから多くの力士の目の色が違い、よりスリリングな取組も多い。ぜひ幕下上位の熱い取組をライブでご覧いただきたい。男女ノ里今場所第1号の勝越し。勝ち越せば三段目昇進の位置まで上がってきた朝興貴だが、家賃が高く負越し。東関部屋華王錦、給金相撲(勝越しをかけた一番)に臨むも大願ならず。残り2番。

平成23年5月15日
中日8日目の技量審査場所。一日1000枚の当日券は日に日に配布完了時間が早くなっているようで、ありがたい限りである。相撲協会のネット配信の他にニコニコ動画でも序ノ口からの取組が見られる。画面には「すげえええええ・・・」とか「ほそっ」とか、さまざまなコメントも出て面白い。まったくの素人的なコメント、笑える言葉、ちょっと危ないもの、冷やかし、通な意見、・・・画面上を走る文字は邪魔くさいがついつい目で追ってしまう。いろんな人に興味をもってもらうキッカケになることであろう。3連敗だった朝興貴、ようやく得意の左を差して前に出ての初白星。

平成23年5月14日
5月技量審査場所も中盤戦。NHKの中継がないのは寂しいが、相撲協会が序ノ口からの全取組をインターネット配信しているから普段見られない幕下以下の相撲も生映像で見られてありがたい。3連敗と後がなくなった朝奄美、今日は手も足もよく出て会心の相撲での初白星。朝天舞男女ノ里3勝目で勝越しまであと一番。東関部屋華王錦も3勝目。

平成23年5月13日
勝ち越せばいよいよ十両に上がれるという番付になると、本人も周りも一番気を揉む。まったく稽古せずに幕下上位まで上がれるわけもないが、それまでマイペースの稽古で番付を上げてきた力士が、十両目前になって周囲の期待も膨らみ本人にも欲が出て人が変わったように稽古熱心になることがある。そういう場合はほとんどが失敗に終わる。過去2度の昇進のチャンスでは周囲の期待に応えようと欲を出してしまって失敗した華王錦、今場所前はずっと高砂部屋への出稽古でマイペースを守り(?)3度目の正直に挑んでいる。

平成23年5月12日
何事においてもリズムは大切である。幕下から十両へ、今回の騒動でもその格差が問題視されたように幕下と十両では、給与、待遇、生活、名実ともに大きな差があるから、誰もが十両に上がったときが一番嬉しいと言うし、目前までいきながら涙をのむ例も数多い。とくに今場所は幕下から十両へと昇進する力士の数も多くなるから、それぞれの力士に多くのドラマが生まれるだろうが、目の前にきたチャンスにも自分のリズムを守れるかどうかが大きなカギになる。場所前マイペースのリズムを保った幕下3枚目東関部屋華王錦、2勝1敗と入門11年目の悲願へ向け歩みつつある。全勝だった朝赤龍、朝天舞、男女ノ里に土。

平成23年5月11日
朝興貴朝奄美、共に今場所自己最高位。朝興貴は押しと差して腕(かいな)を返して寄る相撲を、朝奄美は突き押しとおっつけを場所前から稽古してきて多少形にもなってきた。ただ二人共、出足が伴わず自分の形になりかけても攻めきれなく、白星にはつながっていない。稽古場で覚えた形を本場所で発揮できてこそ自信にもなり力になる。家賃が高かったで終わるか、力をつけたと胸を張れるか、次の一番が大切になってくる。朝赤龍4連勝。

平成23年5月10日
3年ぶりの幕下復帰となった朝天舞2連勝。東日本大震災で石巻の実家も被災。母親が津波で流されたものの一命をとりとめ、宮城県警に勤める兄と家族の安否状況の連絡がついたのが震災から2週間後。心休まらない日々を過ごしたが、その間も朝夕のトレーニングを欠かさず、友綱、東関、九重と出稽古に通い、体重を増やすため胃潰瘍になるほど食べ、ようやくこの場所を迎えた。未だ故郷へ足を運ぶことはできずにいるが、白星を重ねることが、幕下で初の勝越しを決めることが、一番の支援となる。茨城県つくばの実家家屋が被災した男女ノ里も2連勝。朝赤龍3連勝。

平成23年5月9日
技量審査場所2日目。場所前から人気の無料入場券、当日券も1000枚用意しているが本日もすべて配布完了。節電でいつもより暗い館内だが熱気はもどりつつある。朝赤龍好調に2連勝の滑り出し。幕下復帰の朝弁慶、数日前に腰を痛め治療にあたっていたが回復が芳しくなく出場を断念して不戦敗。回復次第の出場目指して治療に専念していく。朝ノ土佐も体調を崩して休場。こちらも途中出場目指して調整中。

平成23年5月8日
五月晴れの技量審査場所初日。昨日理事長が「土俵で失った信頼は土俵で取り戻すしかない」と話していたように、土俵に取り組む姿勢が審査される場所でもある。ベースボール・マガジン社『相撲』5月号に共同通信・田井記者が八百長騒動の顛末として4ページに亘る文を寄せているが次の言葉で締めている。尊敬する故・谷口正美記者の言葉「何か疑問に感じることがあれば土俵に来なさい。土俵こそが人生の縮図なんだよ」また貴乃花親方の言葉として「どんなことがあろうとも、我々は土俵に還らねばならないのです。土俵こそがすべての基本なんです」ようやく還ることのできた土俵に感謝し心技体を尽くさなければならない。

平成23年5月7日
明日からの初日を前に国技館土俵にて土俵祭り。今回は特別に協会員全員約1000人が参加。午前9時半本土俵に集合して、東日本大震災による犠牲者に黙祷を捧げ、15日間の無事を祈願する土俵祭りを行う。土俵祭り終了後、十両以上の関取衆を集めて放駒理事長から訓示。関取衆に限らず全協会員が襟を正し褌を締め直して15日間を務めなければならない。あす明後日の高砂部屋力士の取組です。

平成23年5月6日
自分の得意の四つになるよう、または両腕を差して双差し(もろざし)になるよう、お互いに争うことを「差し手争い」という。差して争いは、うまさ、早さ、柔らかさ、力強さ、あらゆることが同時に高度に要求される。高岡英夫氏は『鍛錬の理論』のなかで、「相撲の差し手争いは、重いバーベルを肩にくくりつけてスクワットをやりながら、両手でワープロを敏速に打ちまくるようなものである」とたとえている(1989年の文章だからワープロだが)。取組編成会議。初日、前頭9枚目朝赤龍は若荒雄との対戦。横綱白鵬には小結豊ノ島。

平成235月5日
差し身がいいのと反対に、すぐに差されてしまうことを脇が甘いという。どちらかというと、柔軟性のある器用な力士のほうが差し身がいいし、固い力に頼るタイプの力士は脇が甘くなる傾向にある。 右腕を差した方(相手の腕の下に入れる)が力が出るタイプの力士を「右四つ」、左腕を差した方が力が出るタイプを「左四つ」という。同じ右四つ同士ならお互いすぐに右四つになるから「相四つ」という。右四つと左四つの対戦だと、どちらが得意なほうを差すかによって有利さが大きく変わってくるから右腕と左腕で差し手争いが行なわれ、お互い「ケンカ四つ」だという。

平成23年5月4日
差すのがうまいことを差し身がいいという。差したほうが相手の中に入れるわけで、差し身のよさは有利な体勢をつくるために大きな武器となる。脇を締めるというよりも、肩や肘を柔らかく使えるかどうかが条件になってくる。横綱白鵬はもちろんだが、豊ノ島の差し身のよさは抜群であろう。朝青龍もスピードやパワーが目立ったが差し身のよさにはかなりなものがあった。高見盛も右を差すのを得意としているが、高見盛の場合は差し身がいいというよりも右が固いと表現するほうが的確であろう。

平成23年5月3日
朝奄美朝龍峰は残って部屋での稽古。同じ相手と繰り返し何番も稽古するのを三番稽古という。押す力に大差はない二人だが、10番中9番は朝奄美が前にもっていって寄り切る。どちらかというと脇の甘い朝奄美だが、朝龍峰はそれ以上に甘く朝奄美が差し勝ち前に出れる。脇の甘い力士は、四股やスリ足のときに必ず肩が上がってしまう。肘が体の横にきて胸を開いてしまう。

平成23年5月2日
3年ぶりに幕下復帰となった朝天舞、連日九重部屋への出稽古。九重親方の厳しい指導のもと九重部屋の若手幕下連中としのぎを削っている。被災した故郷石巻の家族のためにも今場所は結果を出したいところである。朝乃丈、朝興貴もいっしょに九重部屋で汗を流しているが、一昨日いいい稽古をした朝弁慶は、またまた膝の痛みが再発して部屋で調整。5月技量審査場所初日まであと6日。

平成23年4月30日
朝弁慶、今日は出稽古に来た東関部屋幕下華王錦(かおうにしき)と部屋で三番稽古。幕下上位が長い華王錦、今場所は幕下3枚目と関取り目前だが、何番か出足で圧倒して寄りきる相撲も見られた。ある程度胸を出してくれているとはいえ、大いに自信になったことであろう。稽古後華王錦も、「まだまだ粗さはあるものの、いい馬力をしている」と肌で感じた圧力に満足げであった。東洋大学相撲部出身のベテラン華王錦にとっても今場所は大きな勝負の場所である。

平成23年4月29日
国技館土俵にての横綱審議委員会総見稽古に幕下復帰となる朝弁慶朝天舞の二人も朝赤龍とともに参加。幕下申し合いで汗を流す。朝天舞は15番ほど土俵に上がり五分五分の成績だったとのこと。総見稽古初参加の朝弁慶、ちょっと気後れして6番しか取れなったそうだが、幕下の兄弟子相手に4勝2敗とめを出せた。幕内申し合いでは稀勢ノ里が元気な稽古を見せたが、観客も例年よりかなり少なめで全般的に寂しい雰囲気の総見稽古となった。

平成23年4月28日
あす4月29日(金)国技館本土俵にて横綱審議委員会による稽古総見の一般公開が行なわれます。開場は午前7時。7時半頃から幕下、8時半頃から十両、9時半頃から幕内の稽古の予定で、11時頃まで行ないます。入場無料です。お知り合い、ご近所お誘い合わせの上お越しください。

平成23年4月27日
「腰割り」の構えは、イラストのように股関節を開き腰を下ろしていく。腰を深く下ろせば下ろすほど太ももやお尻の筋肉に力が入ってしまう。最終的には腰が膝と同じ高さになるよう、太ももが水平になるところまで下ろす。腰を深く下ろしても、太ももにもお尻にもまったく力を入れないで構えをとることが、深層筋を使った腰割りになる。そんなことができるのか?双葉山の腰割りがそうである。腰を深く下ろしても、太ももにもお尻にもふくらはぎにも、まったく力みがない。拙著 『お相撲さんの腰割りトレーニングに隠されたすごい秘密』P94の写真がその究極の腰割りである。

平成23年4月26日
四股は単に脚の筋肉を鍛えるために踏むのではなく、深層筋いわゆるインナーマッスルを使えるようになるための稽古であるのは間違いない。腰割り、スリ足、テッポウも然りである。どうすれば深層筋を使えるようになるのか。前にも書いたように表層筋をゆるめることである。と書くのは簡単だが実際行なうのは至難の業である。まず基本の構えとなる「腰割り」が難しい。肩や腕はもちろん、太ももにもお尻にもまったく力を入れずに腰割りの構えを取ることが、深層筋を使って腰割りを行なうことになる。

平成23年4月25日
そうすると、四股でのクセも表層筋の余計な緊張だといえる。肩の力みや太ももの筋肉の緊張、足首のこわばり、腕での反動、腰を浮かすこと、カカトを浮かせる、足を動かす、バランスを取ろうと足の親指に力を入れる、逆に指を浮かす、手で膝の後ろを持って脚を持ち上げる ・・・ これらはすべて表層筋に余計な力を入れてクセをつくっていることになる。深層筋をはたらかせることができなくなる。
本来なら番付発表の日だが、審査場所ということで番付発表はなし。あす朝土俵祭りを行ない、審査場所へ向け稽古再開。


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